エリーナ嬢の素性とは
司祭様から司教様に変更しました。
ホォルティオが帰宅した同時刻
トニー、ノア、リンネ、エリーナの4人は貴族間で人気のカフェテリアに来た。全席半個室、完全個室となっており貴族間で渦巻く人間関係がこの店で動いていると言っても過言じゃない。そんな中4人は入り口から一番奥にある完全個室に入った。防音性は完璧なので部屋内の声が漏れることはない。この場所なら何でも話せ合えるであろうと思いこの店を選んだ。
呼び鈴を鳴らしメイドにアフタヌーンティーのセットを頼むと各々席に着く。丸形のテーブルに椅子が囲うように置かれており左からトニー、ノア、リンネ、エリーナとなっている。エリーナはシャトゼフ公爵子息令嬢からお茶に誘われた事に驚きながら内心ビクビクしながら着いてきた。今現在も心臓が止まるんじゃないかと思う程緊張している。
「エリーナさんとは一度お話ししたいと思ってましたのよ。今回急な誘いに乗って下さって感謝するわ」
リンネは完璧な令嬢の装い顔をしてエリーナに感謝を述べた
「いえ、シャトゼフ公爵令嬢様からお誘い頂けて大変光栄なことで御座います」
「今はリンネで良いわ。ここにはシャトゼフが3人もいるから呼び難いわよね。トニーとノアも異議無いわね?」
「ああ、問題ない」「僕も大丈夫だよ」
トニーは無愛想な態度と声で返事をし、ノアは何時ものように面白そうな事になりそうだと言いたげな笑みを見せながら返事をした。
「お気遣いありがとうございます。」
エリーナはうつ向く顔を上げて作り笑顔で三つ子に答える。
「それで単刀直入に聞くわ。貴女、本当にホォルティオの事好きなの?」
リンネの問いにエリーナは何を聞かれたのか理解できないと言いたげに目を開いて白黒になっている。日常茶飯事にホォルティオにくっついて離れずにいる私の行動を疑う人が現れるなんて信じられないと思っていた。見破る人が現れるなんて想像もしなかった。詰めが甘かったかしら…。
「…どうしてそう思われるのでしょう?毎日の私の行動が演技と疑われているということですか?」
「…質問してるのは私の方よ。質問を質問で返すのはマナー違反だわ」
「…申し訳ありません…私がホォルティオ様の事が好きなのは本当です。でも、アイドルを追っかけるオタクみたいな立場で憧れであって恋人になりたいとか、王女様と間に入り込んでまで婚約者になって結婚したいと思っておりません。」
「…アイドル…?」
「オタク…?」
この令嬢は何を言っているんだろうと言いたげな顔でトニーとノアは眉間に皺を寄せて疑いの目で見ている。
「…じゃあ、貴女が今している行動はどういう目的でしているの?アイドル?を追う立場でホォルティオを怒らせるような行動して貴女に何か得する事があるかしら?」
「…得はしていませんわ…。私はホォルティオ様にアプローチしているという事実をオルガン公爵…お父様に見せつけないと私はお父様から怒られてしまいます」
「う~ん、先ずは貴女が何故オルガン公爵の養女になったかを知らないと謎が紐解けそうもないわね…話せる所だけで構わないわ、話して貰えるかしら?」
「……私が話したということは内緒にしてくださいますか?約束してくださるならお話しします」
「……ええ、勿論よ。貴女の立場が危なくなるような事は絶対に無いわ」
リンネの表情、目付きは嘘をついていないと思いエリーナは正直に話すことを決意した。
「リンネ様ありがとうございます。私の本当の出生からお話しします。長くなりますがお付き合い下さいませ。私の父は王都市内にある正教会の現司教様です。母は隣国の先代皇帝の妾の子で先代王妃に命を狙われて逃げるようにこの国に逃げてきました。帝国には王族のみ宿ると言われる力が存在します。生まれた子によって持つ力は異なり母が持つ力は治癒力または癒しの力と呼ばれていました。怪我は勿論の事、死にかけの病人もを治す力があると言われています。その力を求めて紛争が起こる事を恐れて母は此方の国に移り住んだ時から力を隠すように生活して来ました。が、正教会に日々のお祈りを捧げに訪れた際1人の初老がお倒れになったんです。立派な服装でどう見ても貴族の男性だと分かりました。人の気配がしないその場所で母は力を使ってしまいました。そんな場面を現司教様に見つかります。見られたので全てお話しして口止めしましたがその後も誰も頼らず生活して来た母を親身に接してくれて流れで付き合うようになり私を身籠りました。ですが、先代司教様は父と母の結婚に反対したのです。誰も知られていない隣国の王族の妾の子と結婚させるなど危ない橋を渡ることは出来ないと…。その一言で結婚は出来ず、でも私を認知して先代司教様に内緒で生活費など渡してくれていました。ですが、未だに関係を持ち生活費を渡していることに腹を立てた先代司教は父に私達との縁を切れと言い渡し母と私は見放されました。憶測ですが父も断腸の思いだったと思います。未だに独身を貫いているのは母を思っての事だと私は信じています。母はオルガン男爵に出会って使用人として雇われ始めました。その後、嫌がる母を無理矢理妾にし遊ばれて精神的に肉体的に壊れて行きました。そんな母を看取った後、オルガン男爵から養女の申し出があり断れる立場でもないので承諾しましたが、私はオルガン男爵の人形にいつまでもなるつもりは更々御座いません。あの男がしてきた罪を全て明かし牢にいれて欲しいと願っています。そしてその後は本当の父と暮らせると嬉しいのです。父とは架空の名前を使い手紙のやり取りをしています。父はいつでも迎える準備は出来ていると言ってくれています。この手紙を支えに今生きて行けてるのです。」
長い長い話を頷きながら三つ子は聞いていてくれた。ホォルティオ様が嫌がる令嬢の話しなんて信じて貰えないと思っていたのにトニー、ノア、リンネの真剣な表情を見て安心した。
「これが私の素性の真実です。一切嘘偽り無くお話致しました。」
「…伝えづらいお話をしてくれてありがとう。今まで1人で辛かったわね。」
「まさか、帝国王族の血をひく令嬢だったとは驚きだ」
「帝国王族の力って本当の話だったんだねぇ、この国ではお伽噺のように言い伝えられてるから吃驚だなぁ…」
「もー、二人して呑気なこと言わないの!エリーナさん、この話ケイン殿下とルイス殿下、ルファティナ様の前でも話して貰えないかしら?オルガン男爵の罪を全て明かし牢に入れ、貴女の正式な素性を発表し司教様と堂々と過ごせるようにするわ。昨日の敵は今日の友って言うじゃない?貴女の友人として力になりたいのよ」
「………私なんかと友人になって良いのでしょうか?リンネ様の評判を落とすような真似はしたくありません」
「そんなことで私の評判は落ちたりしないわ!王族の次に偉い公爵令嬢よ。誰かに笑われたりするなんてあったら只じゃ置かないわよ」
「……ふふふっ、それもそうですわね。私で良ければよろしくお願いいたします。リンネ様とお友達なれるなんて夢のようです」
「ふふふっ、今の自然体なエリーナさんの方が素敵だと思うわ。あんな嘘っぽい姿なんて止めてしまいなさい」
「……ええ、私もそろそろ疲れて来ましたの。でも、ホォルティオ様の前ではまだ演技をしないとオルガン男爵から怪しまれますのでリンネ様の前だけ私の素性を見せる事にしますね」
そうエリーナが返すとリンネは嬉しそうに微笑み返した。
4人は赤く灯る空を日が暮れたのを見てシャトゼフ公爵家の馬車で帰路に着いた。




