マークの道標
マークとルファティナは窓拭きから始める事にした
最初は刺々しいマークだったがルファティナに気を許してくれたのか、表情が柔らかくなり声は掠れたままだが一緒に居るのが楽しいと雰囲気で分かるようになった
「マークは将来なりたいものある?」
「…なりたいもの…。まず、ここを巣立ってからなんでも良いから仕事を見つけないと生きていけない。夢なんて大それたものは考えたこと無いよ。ここにいる奴らはここに住まわせて貰ってるだけで恩恵を十分受けている。出ていく年齢になったらその恩を忘れずに全うな人生を送るだけだ」
「貴方の人生よ。きっと私が想像出来ないような色んな事があって此処にいるんだと思うわよ。でもね、それは過去の事であってこの先同じ様に、同じ価値観で生きなくても良いの。こういう人になりたいっていう憧れがあるなら最初から諦めずに踠きなさい。そしてどうすれば近づくことが出来るのかを考えるの。貴方の人生、これからものすごーく長いのよ。無理矢理夢を憧れる人を見つけなさいとは言わない。でもね、最初から人生を諦めるような考え方は止めた方が身の為よ。私はね、マークだから言ってるの。貴方は面倒見が良いわよね、あの3人は本当に貴方の事が好きで好きで堪らないって思うっている様に感じるわ。あの子達の為にもいつまでも憧れのお兄さんで居てあげて欲しいのよ。」
夢なんてどうでも良いと投げ槍に言い放ってたマークがルファティナの言葉が刺さったのか灰色の淀んだ瞳が透き通るようなキラキラと綺麗な灰色に変わっていく
「…良いのかな…俺、幸せに、なっても良いのかな…」
「もちろんよ。この世に生まれて来たからには幸せになる為の資格を持っているの。ただ、生まれた時の環境や出会う人々によって人生を左右されるんだと思うわ。貴方は自分を信じて胸を張って生きていける。道を外すようなことに遇うなら誰か信用できる人に助けを求めなさい。そして助けを求められたら助けなさい。そうすれば、気付いたら貴方の事を好きな人達が沢山出来るわ。」
「ルファも俺のこと好き?」
真剣な顔して聞いていた表情が不安そうにすがり付く様に聞いてくる
「うん、私はマークのこと好きよ」
ルファティナが答えた途端後ろの方から気配を感じた
物凄く黒いオーラが見えるような
「ルファティナ、それは弟のような好きってことだろ?」
いつも側にいる人物の声が直ぐ後ろから聞こえてきた
声色から機嫌が悪そうでルファティナは振り向きたくないと思った
「えー、ルファは俺のこと好きよとしか言ってないけど?」
「ほら、勘違いしてるぞ?…ルファティナ」
「え、え~と、マーク勘違いしたならごめんね。私が言った好きは恋愛感情ではないの。友人のような家族のような無条件でフラットな愛情と言ったら良いかしら…」
「…良く分かんないけど、ルファは俺を無条件で好きだってこと?それって恋愛感情の好きよりも凄いってことだよね!」
あ、あれ?そうなるの?確かにホォルに対する気持ちも無条件の愛情よね…うーん…
「そ、そうなるのかしら…?」
「…だってルイス。今の聞いただろ?」
「調子に乗るのもいい加減にしろよ!ルファティナは俺の婚約者だ。将来の嫁だ。どんなに無条件の愛情だとしてもそれは、マーク以外にも向けられているんだ。その事は覚えとけよ」
「うっ、うわ~ん、ルイスが怖い…俺はただ、ルファに好きよって言われて嬉しかっただけなのに…」
ルイスにきつく良い放たれ、グズグズと嘘泣きをしてルファティナの腕にすがり付く
「…ルイス……、貴方ね…何小さな子を虐めているのよ。それでも私の婚約者なの?…マークが嘘泣きしてるのは気付いているけどそれにしても今の言い方は無いと思うわよ」
「あ、あれ?俺の嘘泣き…バレてたの?」
「もちろんよ。私にも弟が居るの。同じ様に嘘泣きされて私を困らせていたもの。構って欲しさだってこともお見通しよ。でもね、それが嬉しいから気付いてない振りしたわ」
「最初から、見破られてた。なんかショック…」
「ふーん、なる程な。僕を挑発してルファティナに構って欲しかったのか。それにまんまと騙されてたとはな。僕もルファティナのことになると余裕が無さすぎて嫌になる」
マークとルイスがルファティナの側で踞る
「…なんか…兄弟みたいね…貴方達よく似ているわね」
2人の頭をくしゃくしゃと撫でながらふふっと声が零れる
「「全然、似てない」」 見事に声が被った
「ふふふっ、そうかしらね。私は2人が仲良くしてくれると嬉しいわ。私の好きな人同士、これから何かあれば助け合えるんじゃないかしら?」
「ルファティナが言うなら…仕方ない…。おい、マーク。お前がこの施設を去る時、もし何処にも行き場が無いなら俺のもとへ来い。助けになってやる。でも、もし、期待に添えないようならどっか遠くに紹介状書いて2度とルファティナに会えなくさせてやる。」
「え……?良いの?俺、ただの平民だし…王子の側に行くなんて無理なんじゃ…」
「僕が良いと言っているんだ。もちろん、どっか貴族の養子に成ることにはなるがそれなりに教育受けたら大丈夫だろ。逃げ出さなければの話だがな」
「……嬉しい……物凄く嬉しいよ……俺、ルイスの下で働きたい。…………そしたら、ルファにも会えるんでしょ?」
「…おい、結局ルファティナかよ。純粋に俺と働きたいと思ってるんだと思ったら…あー取り消そうかな……」
「ああ………、ルイスの下で働きたいってのは本当に、本当に思ってるから取り消さないでよ、頼む、お願いします!」
「ふん!一度発言したことを取り消すほど簡単に言わねーんだよ。取り消すわけ無いだろ」
「…本当に分かりやすいのか、分かりにくいのか、分からない人ね。マーク、良く聞いて、これで貴方も此処を出ても1人じゃない。ルイスの下へ来たとしても来ないとしても何かしら私たちが力になると約束するわ。貴方が大きくなって元気で私たちに会いに来てくれるのを楽しみにしてるわ」
「ああ、必ず来るんだぞ。来なかったら王族の権力振るって探し突き詰めるからな!」
「こら、もう!そんな言い方しなくても良いじゃない。」
「ふふふっ、2人ともありがと。俺、2人のこと大好きになったよ」
呆気ない笑顔に灰色の目にはキラキラと潤んでいたマークをルイスとルファティナはぎゅうぎゅうと抱き止めた




