新たな記憶
「エリーナ、僕は君を信じるよ。ガルシア嬢が君を貶めるような噂を流して、教科書や筆記用具を隠したりと陰湿な虐めをしていたんだよね?」
「…はい、ケイン様。私、どうしてこんなことされるのでしょうか?私はケイン様と話してるだけなのに…」
あれだけベタベタとイチャイチャしてるのに話してるだけってどういう神経してるんでしょうね
ガルシア様が虐めたなんて狂言じゃないのか?
誰かそんなことしてる場面見たことあるか?
イースター様はオルガン様にとてもご執心みたいね
なんて声が周りで繰り返されている
ここはイベントホールだ
前世で言う体育館のようなもの
卒業パーティーというイベントを行われてる今
今、まさに、断裁されているのだろうか…
第一王子殿下ケイン・イースターの横に
エリーナ・オルガンがピタッと寄り添っている。
殿下の左手はオルガンの腰に添えている
何だよ、あれは。
まるで自分が婚約者のように当たり前に存在する
勝ち誇った表情
あの場所は本来姉上の場所だというのに
肝心の姉上は問題の二人と一定の距離を保ちながら
無表情で仲睦まじい二人を見ている
何も発することせず立ち姿は崩すことなく困ったような酷く傷ついている様な顔付きになっていく
僕が側に駆け寄ろうとすると姉上に睨まれて近づくなと言わんばかりに止められた
「イースター殿下、わたくしは、オルガン様にその様な事をした覚えはありません。彼女と話したこともありませんのでどのような人柄なのかも知り得ません。そんな方の噂を流したり陰湿な虐めをするなんて時間の無駄です。私がガルシア家の名を落とす様な事をするとお考えなのですね」
「な、この期に及んで認めないとは忌々しい奴だ。
否定すればする程、怪しさが増すというのに馬鹿な女だ。ガルシア嬢は聡明な令嬢だと父上が言っていたが思い違いだったらしいな」
な、何だと!!!
自慢の姉上をそんな風に言うなんて王子殿下だとしても
許せない
あんなのが将来国王になるなんて
この国は近い将来終わってしまうだろう
周りの生徒も顔が真っ青になりこの国の将来に
絶望しているようだ
それはそうだろう、あんな奴に国の指揮を持たせると
他国に国を乗っ取られても可笑しくない
又は重鎮貴族達が悪知恵を吹込み思いのままに殿下を
操る可能性もある
どちらにしてもこの国の未来は真っ暗でどん底に
落としかねない
姉上はもう呆れ返って返す言葉も無いらしい
「イースター・ケインの名のもとにルファティナ・ガルシアとの婚約破棄を表明する。そして新たな婚約者にエリーナ・オルガンと婚約する事を誓う。
よって、ルファティナ・ガルシアは国外追放と爵位脱退の命を下す。」
は、はぁぁぁ!???
この王子殿下は正真正銘の馬鹿だ…
陛下の許可なくこんな事を言うなんて
王子殿下にそんな権限はないはずだ…多分…
それより、勝手に婚約破棄を表明し新たに婚約を宣言するとは…
そして、、姉上が国外追放と爵位脱退って…
突如、後ろ楯のない平民になるってことだ
今まで公爵令嬢として由緒正しい貴族として生きてきた
お嬢様を突然、猛獣の檻の中に入れられる様に怖い思いをさせるのか…
それは苦しんで死ねと言ってるのと同じじゃないのか
どうして…どうしてこんなことを平然と言えるのだろうか
あの、涼しげで何の感情もこもってない表情と冷たい声が姉上を傷つけている
姉上はポタポタと涙を流しながらイベントホールから出ていく
その様子を王子殿下は目を見開いて呆然としオルガン嬢は勝ち誇った表情と口角が上向きになって笑っていた
僕は何も出来ないのか?
こんな場面を見せられて助けることが出来ずに立ち尽くしてるなんて耐えられない
絶対にこんなイベントぶっ壊してやる