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ぼっち魂  作者: 綾瀬徹
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第9話

 次の日、俺は自分の教室に荷物を置いて橋川さんの教室に向かおうと後方のドアを開けようした途端、ドアの内側が開いて目の前に橋川さんがいた。


  「あ、東くん、こないだはごめんね」


橋川さんは吹っ切れた様子だった。それに、頭上にぼっち魂はなかった。ぼっち魂にふと関心を抱いてしまった。橋川さんは白谷の浮気発覚でぼっち魂が出現した。しかし、浮気現場に乗り込んで言いたいことを全てぶち撒けて心の老廃物が浄化されたからぼっち魂は消えたのだろう。一方、白谷は橋川さんに浮気現場を見られ振られて次の日に白谷と会ったらぼっち魂が出現した。


 「いや、全然。橋川さん、良かったらまたラーメン屋行っていい?」


「もちろん、ぜひ」


「次は友達も連れて行くから」


「うん、楽しみしてるよ」


 「じゃあ、また」


「うん、じゃあね」


お互い少しぎこちなさがありながら笑顔で手を振って自分たちの教室に戻る。


      * * *


 教室に入ると石根が俺をジッと見てる。


「京太、お前橋川さんといい感じなの?」


「何だよ急に?」


「さっき、廊下で仲良さそうに話してたから」


 「友達だよ」


「友達ね。そうだよな、橋川さんには彼氏がいるからな」


「あの2人別れたよ」


「え!?嘘だろ」


 石根は驚きの声を上げて言った。


 周囲の生徒達がこちらに目を向ける。


 「声大きい。他の奴らに言うなよ」


一応、俺は石根に口止めをした。


 「言ったら首を落とす」


 橋川さんの台詞をパクらせてもらった。


「武士かよ」


石根はあの時の俺と同じ反応をした。


       * * *


  放課後、俺の足は自然と4階の準備室前に来ていた。


 足が竦み突っ立ていると背後から手を伸び、ドアをとんとんと叩く朝倉がいた。


 「何、入部するの?」


「……ちょっと、ぼっち魂に興味が湧いて。だけど、入るかは分からない」


「ふーん、煮え切らない男ね。入部するなら覚悟を決めて入りなよ」


 朝倉はため息をついてガラッとドアを開ける。


 「おい」


「東くん、来てくれたんだね。来なくても既に入部してるから引きずりながら連れてくるつもりだったんだけどね」


涼しい顔をしてゾッとするような発言を吐く九条先輩と朝倉は少し似てる。


 「九条先輩、"ぼっち魂"が現れるのは個人差がありますか?」


「面白い質問だね」


九条先輩の隣にいる屋敷先輩が眼鏡の鼻当ての部分を人差し指で押し上げる。


 「HPS(エイチエスピー)の気質を持った人はぼっち魂が頻繁に現れやすいというデータがあるんだ」


「HPSって何ですか?」


屋敷先輩は黒板にチョークでHPSについて詳しく書き始める。


 「"HPSはハイリー・センシティブ・パーソンの略で生まれつき非常に感受性が強く敏感な気質をもったひと"のことを指す」


 屋敷先輩はわかり易くHPSについて要約する。


 「HPS研究の第一人者で心理学者のエレイン・アーロン博士が人の気質の名称としてHPSと付けられた名前なんだ」


「HPSの割合はどのぐらいいるんですか?」


「統計的には15%ー20%。5人に1人が当てはまる。裏を返せば、8割の人間はこのHPSには当てはまらないということになる」


「少数派なんですね」


「そういうことになるね」


「HPSの気質を持った人にぼっち魂が現れた場合はその人の問題とHPSの特性を和らげる必要性があるの」


九条先輩は腕を組んで教師っぽく説明する。


 「なるほど。でも、その人がHPSの気質を持っているのを見分けるのは難しいですよね?」


 「そうね、難しい。だから、この部は生徒達の悩みを"調査"するのも部活の一環に含まれているの」


「調査ってのは?」


「ぼっち魂が出現した人の友人や周囲の生徒、先生達に聞き込み調査を行うことで現在置かれている状況や性格などを収集し、ぼっち魂を静観または除去するか判断するわけ」


俺はぼっち魂が赤色に変色する場面を見て、九条先輩にこの部に勧誘されたが興味が何一つ湧かなかった。けど、橋川さんと白谷の出来事を経てぼっち魂という仕組みに関心を抱き、部室に来てまた九条先輩と屋敷先輩のぼっち魂についての詳しい説明を聞いて関心が増幅した。確固たる動機はないけどとりあえず入部してそれから目標みたいなのが生まれるなら入ってもいいと思った。


読了ありがとうございます。


次話は再来週の1月2日(月)に投稿します。

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