第7話
俺は後ろの2人をチラッと見てから橋川さんと屋上を出て階段を下り4階に着いた。
俺の前にいる橋川さんの顔を覗き込んだ。
「……なに」
橋川さんは泣き出しくて堪らないのをどうにか我慢してるようだった。
「ちょっとここで待ってて」
「……気を遣わないで大丈夫」
俺は自動販売機へスタスタと歩いてブラックコーヒーの隣にあるホット・ミルクティーを押す。
俺はホット・ミルクティーの空き缶を橋川さんの前に差し出した。
「何で私がホット・ミルクティーが好きだって分かったの?」
「ブラックコーヒーを飲んでる橋川さんは無理してたから。本当は隣にあるミルクティーが好きなんじゃないかなって……勘だね、缶だけに」
「……スベってるよ、東くん」
沈んだ顔つきから柔和な顔つきに戻った。
「でも、ありがとうね、東くん」
橋川さんは無理して口角をキュッと上げて微笑んで言った。
俺は急ぐ理由もないのに気恥ずかしさを隠すためにこの場を離れたかった。彼女は微笑んだけど頭上のぼっち魂は消えない。
* * *
昼休み、同じクラスの朝倉に呼ばれ教室から廊下に出た。
「なんだよ」
「あんたの判断は正しいよ」
「何が?」
「うちの部に入ろうとしなかったこと」
「あぁ、その件か」
「あんた、あれからぼっち魂見た?」
「……いや」
「ふーん、あんた昔から嘘つくの下手だよね」
朝倉はムスッとした顔つきで俺に背を向けてポケットに両手を入れて去っていく。
「あいつは何でいつも喧嘩腰なんだよ」
昔は割と仲良かったのに。いつからか俺を嫌うようになったんだ。それより、今は橋川さんが心配だ。俺はD組に行こうとしたが今日の今日だしまた明日会えばいいと思い自分の教室に戻った。
「東、朝倉さんと何話していたんだよ?」
窓際の後ろ一列目の一番隅が俺の席。その前の席に座っている唯一の友達・ウェーブのかかった長髪の石根浩介が俺に声を掛けた。
「特に何も」
「何もないのに呼ばねぇだろ」
「嫌味言われただけだよ」
「そうか、何で朝倉さんはお前に強く当たるんだ?」
「知らねぇよ、俺が聞きたいよ」
「何か昔恨まれるようなことしたんじゃないか?」
「うーん、思い当たる節がない。小学生のころまでは仲良かったんだけどな」
「お前が気付かないうちにきっと傷つけたんだな。直接訊いてみればいいじゃん」
「嫌に決まってるだろ」
「じゃあ、俺が訊いてやろうか」
「やめろ、それなら俺が訊く」
まるで俺があいつに怯えてみるみたいじゃないか。
「冗談だよ。お前に構ってほしいのかもよ」
「変な妄想はやめろよ」
* * *
次の日、昼休みにDクラスをちらっと覗くと橋川さんはいなかった。
「橋川さん、何処にいるか知ってる?」
俺はDクラスの手前にいた生徒に訊いた。
「今日は休みだよ」
「あ、本当、ありがとう」
「君は橋川さんの友達?」
「うん」
「じゃあ、これを橋川さんに渡してくれる?」
「ん、手紙?」
俺は彼女から手紙を受け取って訊いた。
「それ、さっき白谷くんが橋川さんに渡してくれって言われて」
「君は橋川さんの友達?」
「いや……友達って程じゃないかな」
彼女は気まづい顔をして歯切れ悪く喋った。
「もしかして、橋川さんは友達少ないのか?」
「ちょっと、今外で話せる?」
「うん」
読了ありがとうございます!
"活動報告 12月5日(月)"でお知らせした通り、次話は12月12日(月)になります。