第6話
俺は4階に上がり、三台ある自販機から温かいミルクティーとブラックコーヒー2つを買って3階に下る途中にいる橋川さんにブラックコーヒー2つを渡した。
「ありがとう……東くん」
橋川さんはブラックコーヒーをちびちび飲み落ち着きを取り戻した。
「橋川さん、気分どう?」
「落ち着きは戻ったけど憤りは消えない」
橋川さんは下唇をしっかり噛み、語尾を強めて言った。
「どうする気?」
「屋上に行く」
5階にある屋上に行くと急に言い始めた橋川さんを引き止めようとしたが階段を駆け上がって屋上に向かった。
「ちょっと待って橋川さん」
「……」
橋川さんの返答なくスタスタと階段を上がって5階の屋上の入り口のドア前で葛藤した顔をして突っ立ている。
「行かないの?」
「いざとなると体が竦むんだね」
「そりゃあ、そうだろう。もし、自分だったら行けないな」
そう、俺はが喋っている途端に橋川さんは飲みかけのブラックコーヒーを俺に渡し、もう一つのブラックコーヒーを制服のポケットに入れてドアを開ける。
「え、開けるんかい」
俺は焦り声で言った。
ドアを開けた先に屋上のベンチに橋川さんの彼氏、俺と同じ中学の白谷昴とあんまり良いイメージのないB組の安藤凛安藤凛と仲睦まじくお互いの手を握って安藤は白谷の肩に顔を傾ける。
「しらたにー!」
橋川さんは全速力で2人に向かって駆け走り彼氏・白谷の綺麗な顔面に飛び蹴りが決まりベンチから吹っ飛ぶ。
「……あ、あんた何してんの!?」
ベンチから倒れた安藤は尻餅をつき、困惑した表情で上を見上げて橋川さんに震えながら大声で訊く。
「泥棒猫、こいつが私の彼氏だってことぐらい知ってるでしょ」
激昂した橋川さんは自分が想像した橋川とはかけ離れファ○クサインを安藤に向けて言った。
「……」
「沈黙を貫けば首を落とす」
首を落とすって橋川さんあんたは武士かよ。
「私がそれを認めれば周りの人に言いふらすでしょ」
「大概にしな、あんたみたいな奴は晒す価値もない」
橋川さんは低いドスの利いた声で言った。
「認めるから許して」
あっさりと安藤は許しを乞う。
「やだね、あんたらに今回された行為は一生許しはしない。おい、白谷何気絶したフリしてんだよ」
白谷は横たわりながら目をちょっぴり開けてこの場が丸く収まらないかを伺っている様子だった。
「……ごめん」
白谷は起き上がり深々と頭を下げた。
「分かった。許しはしないけど土下座して"申し訳ございませんでした"って言ったら許しはしないけどこの事はさっき言った通り誰にも言わない。その代わり、2人とも私に2度と関わらないで!」
橋川さんは淡々と2人を交互に見ながら喋った。
「分かった」
「分かりました」
白谷と安藤は沈んだ表情で返答した。
白谷と安藤は2人で目を見合って橋川さんの前で正座をして手のひらを地面につけて頭を下げた。
「「申し訳ございませんでした」」
2人は同時に声を合わせて言った。
「昴、さようなら」
橋川さんは制服のポケットからブラックコーヒーの缶を取り出して悲しい笑みを浮かべ、白谷に渡して言った。
俺は橋川さんが何故ブラックコーヒーを買ったのかが府に落ちた。
白谷はきっとブラックコーヒーが好きで橋川さんはいつも買ってあげていたのだろう。
「楓……」
白谷は橋川さんの行為に逃げた魚は大きいと痛感した様な顔をして言った。
「行こう、東くん」
「あぁ……」
読了ありがとうございます!
次話は2週間後の10月27日(木)に更新します。