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ぼっち魂  作者: 綾瀬徹
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第5話

「橋川さん、よろしく。それより学校から家近いんだね」


 「そう、徒歩で学校に通えるなんて本当に楽。起きる時間遅くてもいいしね」


  彼女はしみじみとした思いを語る。


「たしかに、交通の便は大事だよね。羨ましいよ」


「で、何にする?」


「あ、ラーメン。何にしようかな」


「豚骨ラーメンおすすめだよ」


「じゃあ、それにしようかな」


「了解。パパ、豚骨ラーメン1つ!」


彼女は厨房の奥にいる父親に伝える。


 恰幅のよい白髭の髭を生やした仙人みたいなおじさんが煮込んでいるスープを確認している。


 この店の常連の客がちらほら来る。みんな打ち合わせしたかのようにそろって豚骨ラーメンを注文する。


 ここの一押しの商品なんだな。


 待つこと10分、おじさんがカウンターテーブル越しに豚骨ラーメンの入ったどんぶりを俺に手渡す。


 「うちの娘と同じ高校で同級生なんだって」


「はい」


「娘とは同じクラスじゃないんだろ」


「はい」


「そうか。娘に彼氏がいるんだけどどんな奴か知らないよな?」


橋川さんのお父さんは首を俺の方に伸ばし耳元で声のトーンを下げて囁く。


「そうですね、今日娘さんのこと初めて知ったので……」

 

 「そうか、最近娘が元気ない時があったりするから何かあるのかなぁと……」


おじさんは神妙な顔つきで言う。橋川さんは会計のお客さんの対応している。

 

 「……」


俺は特に気の利いた返事を返すことができなく下を俯く。

 

 「ごめんね、こんな私情を話して反応に困るよなぁ。さぁ、食べて食べて!」


「あ、はい」


 そう言って俺は豚骨ラーメンの汁をレンゲで掬い飲み、麺をすすって食べる。


「父さん達、何喋ってるの?」


橋川さんは会計を終えて店を出て行ったお客のテーブールの皿を両手に持って厨房に入りシンクに置く。


 「いや、世間話だよ」


おじさんは眼が泳いでいる。嘘をつくのが下手にもほどがある。


 「あ、そう。東くん、豚骨ラーメン美味しい?」


「美味いよ、おじさん腕ありますね」


「だろ〜」


 おじさんはニタニタしながら言う。


「あまり褒めないでね。すぐ調子のるんだから」


「ほら、東くんたまごサービス」


「ありがとうございます!」


「すぐその気になっちゃって」


橋川さんは呆れた表情に優しさがある眼差しでおじさんを見る。


 俺は2人の親子の関係性を見て和む。


       * * *


 ラーメンを食った翌日、俺は登校時間より早く学校に着いてしまった。自分の教室に入り席の上にスクールバックを置き、貴重品を取り出して校舎の隣の記念館に向かった。記念館の外観は赤い煉瓦の外壁で彩られたレトロな建物。1階は食堂、2階は図書館、3階はPC室、4階は屋上。3階に置いてある商品が豊富な自動販売機に向かうために階段を使う。


 3階階に行く途中で体育座りで蹲ってる橋川さんがいた。涙ぐんだ顔で俺を見た。それより、驚いたことは彼女の頭上に黄色の"ぼっち魂"が浮いていたからだ。


 「ねぇ、飲み物買ってきて」


眩しいほど明るい橋川さんの覇気は消えていた。


「橋川さん、どうしたの?」


「私、現在付き合ってる彼氏が屋上で知り合いとキスしてるのを見たの。だから、飲み物が欲しいけど買いに行く気力がないからお願い。お金は後で払うから」


 何という修羅場。彼氏が誰かぐらい訊いてもいいよな。


「……そっか、わかった買ってくるよ」


俺は橋川さんの顔を見たら彼氏が誰かを訊ける雰囲気ではなかった。


「ありがとう、ブラックコーヒー2つ買ってきて」


「ブラック?」


「うん。いつも、買ってるの」


「分かった」


何故、ブラックなのかそれに何故2つなのか知りたかったけどそれ以上詮索するのをやめた。


読了ありがとうございます!


"活動報告 10月2日(日)"で報告した通り、次話は再来週の10月17日(月)に投稿します。


これからもよろしくお願いします!

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