本当の気持ち①
遅れました!すみません!今回は前半湊君、後半楓さん視点です。
「春樹、相談がある」
翌日の放課後。楓がお花を摘みに行った隙を突き、俺は春樹に相談を持ち掛けた。
「おう、良いけど……。お前から相談ってのも珍しいな?」
よっぽど意外だったのか、春樹は少し目を見開く。俺を何だと思っているんだこいつは。
ちなみに、これから話す相談内容はかなり恥ずかしく感じるものだ。俺は、意を決して口を開く。
「俺だって悩み事の一つや二つあるっての……。単刀直入に言うぞ。俺、楓の事が好きかもしれない」
言い切った。俺としては結構勇気を振り絞った発言だったのだが、
「はぁ……」
それを聞いた春樹は、呆れたように溜め息を吐いた。……こっちが頑張って話したってのに、何かムカつくなぁ。
「おい、何だよその溜め息は」
「お前、気付いてなかったのかよ!」
すると、春樹は怒鳴り付けるように喋った。心底呆れた、まともに相手をした自分が馬鹿だった、とでも言いたげな顔だ。
「気付いてない?どういうことだ?」
「いや、確かにお前から聞いた西園寺さんはヤバいぞ?けどな、表では冷たく接しながら!お前の西園寺さんが好きって気持ちが見え隠れしてんだよ……!照れ隠しであんな風にあしらってるだけかと思ってたぞ!」
「えっと……」
春樹に捲し立てられ、何て答えれば良いのか分からない。
……俺って、周りからそう見られていたのだろうか。わけも分からず固まっていると、
「みーくん、何してるの?」
「ひゃっ!?」
いつの間にか楓が帰ってきた。ちょっと!?今の会話、聞かれてないよな!?
「どうしたの?女の子みたいな声出して」
しかし彼女はそんなことは知らぬといった風に、不思議そうにこちらを除いてくる。
でも、狡猾なこいつの事だ。裏で盗み聞きしている可能性だってある。そう思った俺が必死の形相で問い詰めると、
「お、お前!?いつからそこに!?」
「え……、今来たばっかりだけど……。」
楓は本当に何も聞いていなかったのか、俺の剣幕に困惑していた。……その様子を見る限り、ひとまず聞かれてなかったようなのでひと安心だ。
俺が安堵していると……、
「よし、西園寺さんも戻ってきたことだし。じゃあな、お幸せに二人とも」
春樹が微笑ましい者を見るように言ってきた。ありがたい助け船だ。けれど……、
「揶揄うなっての……。じゃあな、春樹」
「佐々波さん、さようなら。」
彼に相談して、何かが変わったとは全然思えなかった。
「ねぇ、みーくん」
「何だ?」
校外に出た直後、琴葉が真剣な面持ちで話し掛けてきた。いつもとは全く異なる姿に、少し困惑する。
「昨日から、みーくん様子が変だよ?」
「……さぁ、誰のせいだろうな?」
彼女は疑うように言った。流石は楓、勘づかれてたのか。別に楓に非があるわけでもないし、ましてや直接"楓の事が好きかもしれない"なんて言えるわけないので、はぐらかしておく。
すると……、
「はぁ……、みーくん。私達付き合ってるんだよ?今更"私が好きかもしれない"って。そんなことで悩んでるわけ?」
「っておい!何で人の考えてることが分かるんだよ?」
ナチュラルにこちらの思考を読んできた。エスパーだ。此処にエスパーがいるぞ。
「当たり前じゃん!私が何年間、みーくんだけを見つめ続けてきたと思ってんの?」
「……っ!そ、そうですか。」
真正面からそう言われると、どうしても意識してしまう。
まあ、楓はヤンデレを除けば超絶ハイスペック美少女。嫉妬深さを除けば、彼女は尽くしてくれるし可愛いし。何より……俺の一番側にいる、大切な人?だと思う。
俺が、そんな事を恥ずかし気もなく考えていると、
「~~~~~!!」
今度は楓が顔を真っ赤にして俯いていた。……これも読み取られてたのか。そう思うと、俺は恥ずかしくて仕方がなかった。
「みーくんが私の事大切な人って……!言ってくれた!嬉しい!」
私、西園寺楓は、帰宅してからずっと自分の部屋でジタバタ悶えている。いや、別に直接言ってくれた訳じゃないけど、それを自覚してくれただけでも十分な進歩だった。これなら、"私とみーくんが本当に結ばれる日"も近いかもしれない。
そんな事を考え、上機嫌に過ごしている中……、
「失礼します楓お嬢様、手紙が届いております」
鬱陶しい召し使いが入ってきた。……そう、私の家は世間一般で言うお金持ち。
無駄に金なんてあるから、パパは見合い話を沢山持ってくるし……。みーくん以外の男なんて心底どうでもいいのに。
それに、パパはみーくんのことを認めてくれないから最悪だ。
そんなことを考えている内に、気分はどんどん沈んでいく。ていうか……、
「はぁ?何で手紙?今の時代スマホがあるっていうのに……」
何で手紙なんだろう。大人しくメールなりで送ってくればこっちも楽なのに……。苛立った私は少々乱雑に、召し使いからその手紙を奪い取る。そして、その内容を見た途端……、
「私に許嫁……!?ちょっと初耳なんだけど!みーくんと私の恋路を邪魔してくるなんて許せない!」
手紙を破り捨てる勢いで、私は激昂した。
が、それと同時に。 どこか冷静な頭で密かに考える。
これは"あの作戦"に使えるかもしれないと。
楓さんの作戦は続く……。