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vsヤンデレ……?③


 「疲れた……。」



 22時。俺は今、ベッドの上で横たわっている。



 あれから色んな事があった。風呂に入ってたら楓が乱入しようとしてきたり、夕食中に父さんに結婚の許可を貰おうとしたり……。

 なんだよ"息子さんを私にください!"って。普通は逆だ逆。


 そんなこんなで、俺はもうヘトヘトだった。こんなに疲れったっていうのに楓はケロッとしているのが滅茶苦茶腹立たしい。

 脳内で延々と愚痴をこぼしていると、


 「みーくん!」


 大した気力も残っていないというのに、追い打ちを掛けてくる様な元凶の声が聞こえてくる。幻聴だったらどれだけ良いことか。



 「みーくん!お部屋入るよー」



 勿論声の主は楓だ。言いながら、彼女は無遠慮に部屋のドアを開ける。何か一言文句でも言っといてやろうと思ったが。

 悲しいかな、彼女の美貌に目を奪われてしまった。



 可愛らしい、けれど何処か色気を感じる寝間着に身を包み、そんな彼女の美しい髪はまだ湿っていて艶やかな印象を受ける。

 何かこう、風呂上がりの女の子っていうのは非常に魅力的に感じるなぁ。それが楓みたいな美少女なら尚更だ。


 ……だけれど、綺麗な薔薇には棘があるとは良く言われているもので。はい、俺の貞操が非常に心配です。特にこいつは油断したら襲ってきそうで怖い。



 「あー、楓。他の部屋で寝たりする選択肢は……」


 夜ぐらいリラックスして眠りたいんだ。これじゃドキドキして眠れない。そう思って一応聞いてみたが……、



 「は?何言ってんの?みーくんの部屋で寝るに決まってんじゃん」


 「……左様ですか」


 すっごい真顔で返されてしまった。何とも言えない迫力があって怖い。もう、俺は大人しく従うしかなくなった。






それから十数分。特に会話をするわけでもなく、俺と楓はベッドに腰掛けていた。

しかし、この静寂を破る者が一人。


 「みーくん、しないの?」


 楓が不思議そうに聞いてきたのだ。……"しない"って何の話だ?ゲームだろうか、それとも普通に雑談の事だろうか。言葉足らずの彼女に補足を促す。



 「何を?」


 「エッチだけど」


 「はぁ!?」


 聞くんじゃなかった……!楓は、また訳の分からない事をほざいた。

いや確かに、据え膳食わぬは男の恥とか言ったりするけどね?一階には親もいるんだし、流石にこれはダメだろ。



 「あのな、楓。するわけないだろ?大体一階には親だって居るのに……」


 「えー、私はヴァージンを捧げる覚悟、出来てるよ?」


 「お前、ホントに何言ってんだ!?」


 どんどんエスカレートしていく彼女の発言にどう反応すれば良いのか分からなくなってしまう。

 冷静に考えて、"ヴァージンを捧げる覚悟、出来てるよ?"とか言われて何返せば良いんだよ!?"俺も童貞を捨てる覚悟は出来てるぜ?"ってか?頭おかしいんじゃねぇの。



 「もう!良いじゃんカレカノなんだし」


 俺が固辞し続ければ楓は頬を膨らませて駄々をこねる。そういう所、ホントにガキっぽいな。その姿を見て改めて決意した。

どれだけ誘惑されようが、絶対に拒否し続けてやると。


 ……拒否し続けるのは当然として、ここで一つ気になった事がある。楓のやつ、覚悟しているとか言っといて。もしかしたら用意していなかったりして。



 「高校生は節度を持った恋愛をだな……。あー、楓。一応聞いときますが、避妊具は?」


 「ないよ☆そんな事したら赤ちゃんが」


 「言わせねぇから!頭カチ割るぞ馬鹿かお前!?」


 途中で楓の言葉を遮った。

こいつ、何というか期待を裏切らないな。……それにしても危なかった。


 ここで押し負けていれば、俺達は避妊具なしで行為に及び……その先には責任を取れと脅される毎日。最後には、なし崩し的に結婚でもさせられて人生の終焉までヤンデレ攻撃を味わう羽目になっていただろう。



 「はぁ……とにかく、もう眠いから寝るぞ」


 「はーい!」


 呆れた俺が言うと、楓は何の躊躇もなく布団に潜り込んできた。瞬間、彼女の甘い香りと温かな体温が伝わってくる。


 「……電気消すぞ」


 ……凄く心地良い。そればかりか、俺の顔は朱に染まっていて。

けれど、それを素直に伝える勇気なんてなかった。ただの一言ですべて誤魔化そうとする。



 「ねぇ、みーくん」


 「……何だよ」


 すると、楓が天使の様な微笑みで話しかけてきた。俺は羞恥心を悟られない為にも、ぶっきらぼうに言ったが。

 


 「だ い す き」


 「っ!」


 突然の告白に、心臓が止まるかと思った。胸がキュッと締め付けられる。

彼女が浮かべた妖艶な笑みは、俺の心を虜にするくらいの威力は充分にあって。


 「じゃあ、みーくん。おやすみ!」


 「おやすみ楓……」


 結局俺は、楓の事を好いているのか。彼女の行き過ぎた行動にも非はあるだろうが、いつも素っ気なく冷たく接しておきながらこれだ。


 もし、楓を。ヤンデレの狂気すら包み込める愛を、彼女に対して持っているのなら。俺は……。



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