本当の気持ち②
大変遅れました。楽しみに待っていてくださった方々、申し訳ございません……。
俺の登場により、会場の雰囲気はお世辞でも穏やかとは言えない程度にはぶち壊されていた。そんな中、
「な!?何を言っておる!」
楓の父は、俺の一方的なまでの発言に怒りを露わにしていて、許嫁もこちらに軽蔑の眼差しを向けてくる。
しかし、
「みーくん、マイク借りるよ!」
楓は俺のマイクを奪い、
「彼の言う通り、これは私が望んだ婚約などではございません。私が生涯を共にすると決めたのは、隣に居る結城湊、彼ただ一人です!」
きっぱりと言い放った。楓本人が発言したことにより、会場の騒めきはさらに大きくなる。加えて、先程まで余裕そうに構えていた許嫁が驚いたように叫んだ。
「そ、そんな……。嘘だろ西園寺さん!」
彼の気持ちは分からんこともない。確定していた美少女との結婚、それを突然登場した謎の男によってぶち壊されたのだ。
そりゃあ、抗議の一つくらいしたくなるだろう。しかし、
「何が嘘?私、貴方のことなんて何とも思ってないんだけど?」
究極のヤンデレである楓に、彼を労わるような良心はない。
もう本性を隠す気もないのか。敬語すら使わず、辛辣な言葉で彼を責め立てていた。
「てか、気付かなかったわけ?私、貴方と指一本触れ合ったことないじゃない。そこで好意がないことくらい察せば?」
勢いにのった楓は、尚も攻撃をかます。間違いなくオーバーキルだ。……許嫁君、もうライフないよ。
しかし、そんなものはお構いなしで彼女は続けるのだ。
「はぁ……、ホント自惚れしすぎじゃない?キモいんだけど」
「か、楓。その辺りにしておいた方が良いと思うぞ……!」
流石に可哀想だし、何より見てるこっちが恐ろしくなってきた。許嫁君は魂が抜けたように呆然と立ち尽くしている。
……まあ一名の尊い犠牲(許嫁君)もあり、これであの父親も認めざるおえなくなるだろう。そう思ったが。
「違う!私の娘は彼に脅されているだけだ!おいお前ら、あの二人を拘束しろ!」
なんて強引な奴だろうか。楓の父親は大きな声でそう叫んだ。その叫び声によって、近くに潜んでいた男達が一斉にこちらへ向けて走ってくる。
間違いない、彼が雇っている人間だろう。
「おい楓、捕まったら何されるか分かんないぞ!」
「分かってる!みーくん、逃げるよ!」
楓に手を引かれて、会場の入り口まで突っ走る。当然、俺達の行く手を阻もうとする男たちが複数したが、
「そこをどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の鬼気迫る表情に驚いたのか、立ち止まってしまっていた。だが、それもいつまで続くか分からないし、チャンスは今しかない。
そのまま勢いを緩めることなく突っ走る。そして、
「行くぞ楓!」
「うん!」
俺達は、体当たりで扉を開けて。
一歩先も見えない暁闇の中へ、勢いよく飛び込んだ。
次回か次々回で完結予定です!(もしかしたら後日談というか、アフターストーリーを作るかもしれません、こういうのを作ってほしい!みたいな希望があれば教えて頂けると嬉しいです!)。あと、新作を投稿したので、良ければそちらも見て頂けると嬉しいです!