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わたくしは何者?

体が重い。頭が痛い。わたくしは…そうだ、アイシャ様に嵌められて…



重い瞼をゆっくりと開ける。霞んだ視界の先にふわりと金色の髪が見える。



…似ている。殿下の髪色に…



段々と視界が鮮明になってゆくにつれ、朦朧としていた意識が一瞬にして覚醒した。




「クローディア…?」





────…殿下!





ガバッと起き上がり、辺りを見渡す。見覚えのある部屋。見覚えがあると言うより見間違いようのない場所。





…わたくしの、部屋?





わたくしは、生きているの?いや、でも先程確かに…




そこまで考えたところで身の毛がよだつような感覚が襲う。





殺された。わたくしは…殺されたのだ。重い刃が首をつぶすかのように、適度に苦しみながら死ぬように作られた斬首台で。




はっと首に手をやる。






傷が…ない?




そんなはずは無い。確かに首は…いや、落とされた時点で助かりようもなかったはず…






なら、この状況は?





混乱と首を落とされた生々しく残っている感覚に体が震える。




さっと殿下の方をに目を移す。





他人に全く興味がないクローディアだが、目の前にいるのは間違いなくジルベルト殿下だ。細く柔らかな金糸のような髪に透き通る海に穏やかな森をたしたような柔らかなエメラルドブルーの瞳。髪の一部が薄く空色味を帯びた白色に変色しているのは王族のみに受け継がれるという象徴。




「クローディア、よかった。目を覚ましたんだね」




ここでもうひとつの疑問にぶつかる。




―――なぜ殿下が私の部屋に?




「あの…殿下、どうして私の部屋に…?」




こてっと首を軽く傾げながら殿下に問う。瞬間、はっと息を飲むような音が聞こえたような気がしなくもないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。




「クローディア、覚えていないのか?」




―――なにがですか?




「君は倒れたんだ」




―――倒れたも何も…首をチョンパされました。そもそも生きているはずないですわ…




「学園の始業式の後にね」





頭が真っ白になる。―――始業式?学園?そんなものとっくに…




「殿下…失礼ですが…わたくしは…」




「何者ですか?」




「君は、自分が何者か分からないのか?」





殿下はエメラルドブルーのの瞳を揺らしながら問いかける。





────わたくしは…




「…クローディア・フィオレローズです。王国筆頭公爵家のフィオレローズ家の娘で…ジルベルト殿下の…」




────殿下の、「婚約者」



わたくしはそう名乗って良い立場ではない。わたくしは婚約破棄され、殿下の今の婚約者はアイシャ様のはずだ。



「…元婚約者です」





元。そうなのっていいのかすら分からないが、それでも何者か、と聞かれればこう答えるしかない。殿下は怒るだろうか。不敬だと、無礼だと罵るだろうか。





わたくしはきっとろくな婚約者ではなかっただろう。約10年共に居ながらこんな時彼がどんな反応をするか、想像もつかないのだから。所詮形式だけの婚約者。全てを完璧にこなしながら「人」に何ひとつ興味を持たない、中身のない人形。





「君は…」





あぁ…やはり。何があったのかは知らないが殿下の愛しのアイシャ様を殺害しようとしたものに「元」だとしても婚約者と言われるのは気に触ったのでしょう。




「…申し訳ありません、殿下」





「君は何を言っている?」




―――??




殿下がわたくしのベットに腰掛ける。そしてどういうことか髪を撫で始めた。





「…熱で魘されて混乱している…?」




殿下が呟く。




「クローディア、君は熱で混乱しているようだから一つ伝えておく。私と君は『元』などではなく現在進行形で婚約者だ」




―――????





「殿下こそ何を…?貴方はわたくしに婚約破棄を言い渡して、その後…その…あと…」




そう言いかけてまたあの感覚が蘇り首元に手を当て反射的に自分の体をギュッと抱く。




ふと視線を部屋の隅に移す。






―――うそ…




そこには確かにいた。薄い水色の髪にアクアマリンのような瞳をした、見間違えるはずもないリリアが。



「リリ…ア?あなた生きていたの!?」




わたくしがそう言うとリリアはアクアマリンの瞳に困惑の色を濃く浮かべる。





「お嬢様、どうなさったのですか?」




―――何かが…おかしい。言葉にできない、「何か」が。




そんな混乱に混乱を繰り返す様子のわたくしに対して殿下は安心させるように、小さな子供をあやす様にヨシヨシと言いながら微笑んだ。




「クローディア、大丈夫だ。君は頑張りすぎなんだ。無理が祟ったのだろう。長居して悪かったね。今日はここでお暇するとするよ」




「…はい」





「お嬢様、まだ熱があるようです。ここ一週間の予定は全てキャンセルしました。今は、ご自身のお体の心配をなさって下さい」





一人で考えたいこともあり、リリアにはありがとうと言ったあと下がるように言った。






とにかくこの状況の把握が最優先ね。



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