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不器用な暴君様

「クローディア!クローディア!」



リーラ王女殿下が何度もわたくしの名前を呼びながら小走りでわたくしのところに来る。



「…リーラ王女殿下、何かご用ですか。何もないのでしたら失礼しますよ」



「よ、用ならあるわ!これを見なさい!」



リーラの手には大きな宝石がいくつか握られていた。



「素晴らしい宝石ですね」



「そうでしょう!?」



正直リーラが何をしたいのか何も分からないクローディアは一番無難そうな返事を返すが、その返事にリーラはパッと無邪気に笑い、何故か大喜びしている。




はぁ…。




リーラに最初に話しかけられてから今日で何日目だろうか。

なんだかんだあれから毎日こんな風に声をかけられている。用件がないのなら声をかけないで、と言った次の日から、本人曰く「用件」を作り会いに来る。初日に少しきつく言い過ぎたかな、と後悔していた自分が懐かしい。



「引き止めて悪かったわね、用はそれだけよ」



「…はい」



…本当に、何がしたかったのだろうか。

話しかけられること自体は別に嫌ではないのだが、こう何度も用件のない用件で話をするのは疲れる。リーラ王女殿下の後ろにいる護衛騎士に視線を送ってもにっこりと微笑まれて終わる。



満足そうに去って行くリーラの後ろ姿を眺めながら、クローディアは何度目か分からないため息をこぼした。



*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー



「それで、リーラ王女には本当に何もされていないのだな?」



「はい」



もはや定番となった昼休みのジルベルト殿下との食事。

最近のリーラ王女殿下との出来事を話してみると、何度も何もされていないか、と聞かれた。今のところ本当に何もされていないのでそう答えるしかないのだが、どうしてそう何度も聞くのだろうか。



「リーラ王女とは今回の使節団の件で王族として対応しているのだが…」



殿下は急に言葉を濁した。



「噂を聞いて覚悟はしていたのだが、非常にわがままなんだ…。私たち王族ですら対応に困ることも何度かあるし、一応友好関係を保つための使節団として来ているから無碍にもできなくてね」




「わたくしは今のところ大丈夫ですわ。王女殿下が何をしたいのかはよくわかりませんが…」



クローディアは苦笑した。

リーラ王女殿下が話しかけてくる時は何故か必ずクローディアが一人の時で、アヤリナ様と一緒にいる時は遠目でチラッと見るだけで声はかけてこない。



「アヤリナ嬢からクローディアが何度もリーラ王女に話しかけられている、と報告を受けて、どうしても心配だったんだ。…何かあってからは遅いからね。クローディアも小さなことでもいいから、何かあれば相談してくれ」



「ご心配していただきありがとうございます。どんな小さなことでも、と言われると、本当に小さなことなのですがよろしいでしょうか」



「ああ」



「気のせいかもしれないのですが、最近色々な方に見られている様な気がするのです」



「あーーー…」



ジルベルトは困った様にそう言った。



「それは特に気にしなくてもいいと思うよ」



「?わかりました」



クローディアが感じている視線の正体は、皆からの興味の視線だ。

ジュリアの事件が起こり休学したクローディアはその間に記憶を失った。皆からすれば休学から復帰したクローディアが今までと全く違い笑っているのを見れば、興味を持つのも仕方がない。



ーーークローディアは可愛いからな。



ジルベルトは小さく呟いた。



「今何かおっしゃいましたか?」



「ん?何も言ってないよ」



にっこりと誤魔化したジルベルトは、今はまだ伝えるべきではない小さな気持ちにそっと蓋をし、優雅に昼食を摂るクローディアを眺めながら、ふっと頬を緩ませた。




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