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テスト


あぁ、忘れていた。というか思い出したくなかったことだ。




―――テスト。




あの学園には年に3回、学期末にテストがある。このテストは進級や将来の進路だけでなく、嫁ぎ先や将来に着く職業にも深く関わる。学園内でのテストではなく、貴族としての評価となるのだ。身分など関係ない、純粋な実力として。



クローディアは前世では毎回全教科満点で1位だった。完全実力主義の学園で、学園外でも身分があり、王太子の婚約者であり、成績優秀だなんて、妬みの種になることは火を見るよりも明らかだった。



前世では気にしなかったかもしれないが、今世は違う。現在も陰湿な嫌がらせを受けつづけている中、クローディアの第1目標である婚約破棄からの自由な人生がまともに歩めるとは思えない。



―――でもどうすればいいの。



好成績を残せば妬まれ、それなりに手加減すれば馬鹿にされ蔑まれる。



打つ手がないでは無いか。何も出来ない。最善の策なんてないわ。どれをとってもいい未来はないじゃない!





「テスト」という単語聞いてから、クローディアの頭の中は思考で溢れてアヤリナとリリアとの買い物にほとんど集中出来ずにいた。




そのまま夕刻になり、アヤリナと別れ邸に帰った。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「♪」



リリアは随分とご機嫌なようだ。



「ご機嫌ね、リリア。楽しかったのなら良かったわ」




「えぇ!そりゃもう!初めてのものだらけで、ワクワクして楽しくて楽しくて…!アヤリナ様も丁寧に教えてくださって。今度また一緒にお茶会しませんかって!」



「行ってきてもいいわよ?」



「お嬢様?お嬢様もお誘いされましたでしょう?」



そう…なのかしら。考えすぎて周りが見えなくなる悪い癖が出てしまったようだ。あの後のことなんてほとんど覚えていない。でもわたくしも楽しかったし、リリアもアヤリナ様も楽しんでいただけたのならそれはいい結果なのだと思う。



「え、ええ。そうだったわ」



お茶会は楽しそうだ。わたくしが見る限り、アヤリナ様はそれほど社交的では無い。公のお茶会で多数の令嬢を集めて…、と言うよりかは少数の友人だけを集めての女子会なのだろう。



お茶会をする頃までにはテストも終了している頃だろう。アヤリナ様とリリアは随分仲良くなったようだし、また3人でお話したい。



「お嬢様も楽しかったようで良かったです」



「えっ?」



珍しくお顔が和らいでいらっしゃいますよ、という言葉を聞き、ぱっと顔に手をやると、少し口角が上がっているのを感じた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


テスト1週間前


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



嫌がらせもわたくしの対応も平行線のままテストの1週間前まできた。まだ悩んでいる。クローディアにとって満点を取ることは苦ではないし、何も考えずに問題と向き合えばテストはまず満点だ。



でも。それではいけない。



「クローディア」



声をかけられて振り向く。



「…殿下」



数日ぶりに見る殿下がいた。

学園の廊下なのだから会うことは不思議では無いのだが、何故か会いたくなかった。




「なんの御用ですか」



「用がないと自分の婚約者に話しかけては行けないのかい?」



「いいえ、ただテスト前ですので自分の勉強に集中したいだけです」



「そうか。でも君なら今回も満点が取れるのではないか?」



「念には念を。妥協はしません」



ハッとする。

つい、ついその場の流れで満点を取る宣言をしてしまった。そんなつもりは微塵もなかったのに。



「クローディア、一緒に勉強しないか?」



「する必要がありますか」



「分からないことがあってね、クローディアに教えて欲しいんだ。実力主義とはいえ、王族が悪い成績を取る訳には行かなくてね。こんなことを頼めるのは君しかいないんだ」



「ご心配なさらずとも、殿下は私に継いでいつも2位ではないですか」



殿下の成績なら問題なんてないはず。どうしてわざわざこんなことを頼むのだろうか。


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