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気分転換


邸に帰ってからリリアを誘い、快諾というか半泣きと呼べる状態で了承してくれた。



基本的にメイドなのでどこに行くにも一緒なのだが、やはり付き人としてくるよりも一友人として来てくれる方が断然良い。




今日の支度を終え、下町用の簡素なドレスに身を包んだクローディアは窓の外に広がる景色を眺めた。



爽やかな風がそよそよと頬を撫でる。今日はとても天気がいい。素晴らしい買い物日和だ。



クローディアの長いシルバーの髪は街では目立つため、サイドを編んだあと後ろを上品なレース地のリボンでまとめた。



リリアも普段のメイド服とは違い、同じく下町用のドレスを纏い髪はおろしている。淡い色あいの髪はアクアマリンのような瞳によく合っていて、いつもと違う雰囲気だ。



「お嬢様!そろそろ時間ですよ!早く行きましょう!」



外出が嬉しいのか明るい声でわたくしを呼んだ。アヤリナ様もそろそろいらっしゃる頃だ。




「そうね、行きましょうか」



普段1歩下がった位置にいるリリアと肩を並べて門に向かう。新鮮な気分だ。今日はいい一日になりそうだ。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「クローディア様!」



待ち合わせの場所に向かうと、アヤリナ様は既にそこにいた。



「お待たせしてしまい申し訳ありません」



「いえ、私も今着いたところです。そちらの方が…」



アヤリナ様がリリアの方に目を向けた。



「はい。先日お話したわたくしの大切なメイドのリリアです」



「初めまして、アヤリナ様。私はパール辺境伯爵家の三女、リリア・パールです」



リリアは綺麗な礼をして見せた。整った所作が貴族であることを物語っている。



「初めましてリリア様。私はアヤリナ・スピネルと言います。そんなに固くならないでください。リリア様のことはクローディア様から聞きました」



「えっ?」



「素晴らしいセンスをお持ちになっていて、姉のように大切なメイドだと。クローディアはリリア様のお話をされる時、お優しいお顔をなさるんですよ」



「ア、アヤリナ様!わたくしそのような顔はしていません!」



「自覚がお有りでないかもしれませんが、クローディア様はお優しい方だと思うんです。クローディア様はリリア様のこと大切に思っておられるのですよ」



アヤリナ様はすごい方なのかもしれない。無表情のわたくしから変化を見つけ出すなんて、長年一緒にいるリリアくらいにしか出来ないのに。



「と、とにかく街に行きましょう!」



なんだかいたたまれなくなって、早口でそういい、馬車に乗り込んだ。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「すごい活気ですね!」



街に着くと、朝市が行われていて呼び込みの賑やかな声が聞こえてくる。



「この街には海と山の両方があってたくさんの名産品があるんですよ」



アヤリナ様が解説をしてくださった。



「私はたまに遊びに来るんです。普段見られない食べ物やものを食べたり、街の人に話を聞いたりするととても楽しいですよ!」



「わたくしははじめて来ました」



この街に、というかクローディアは屋敷と王宮以外ほとんど外に出たことがなかった。そんなクローディアにとっては見るもの聞くもの全てが初めてでとても新鮮な気持ちになる。



「アヤリナ様、あれはなんですか?」



横を見ると、片手で持てるほどのカップに何らかの液体が入っていて、凍った果物が浮いている。



「クローディア様、いいものに目をつけられましたね!あれは下町ではオーソドックスな飲み物で、色々な種類のドリンクに街の名産のいちごやブルーベリー、ラズベリーやさくらんぼなどが凍った状態で入っているんです。今日のように少し暑い日には冷えていてとても美味しいですよ!」




ゴクリ、となった喉は誰のものだろうか。

なんともそそる説明だ。



その様子のリリアとクローディアをみてアヤリナはクスッと笑った。



「おふたりとも、飲んでみたいですか?」



「「…はい!」」



返事を聞いたアヤリナは二人を連れて屋台へと向かう。



と、そこで問題が一つ。



「…リリア、どの硬貨を使えばいいのかしら」



自分で買い物なんてしたことが無いクローディアは、自らの手に握られた金、銀、銅の色をした硬貨のどれを使えばいいのか分からないのだ。



「お嬢様、この飲み物の値段は…」



リリアが丁寧に説明する。



「ですので、銀色の硬貨を一枚と銅貨を四枚で買えます」



なるほど。買い物のシステムとは難しいのね。



言われた通りに硬貨を渡すと、優しい笑みを浮かべた初老の店主が飲み物を渡してくれた。















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