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学園に行く準備

数日の間にわたくしの体調はみるみるよくなった。どうやらわたくしが見た夢のような空間と出来事は本当のようだった。神々が言った通りだ。



とりあえずわたくしが今優先すべきなのは、学園でどう過ごすか、だ。



欲を言うならば、友人と呼べる人が欲しい。

前回の人生ではわたくしの地位に群がるだけで誰一人としてわたくしを見てはくれなかった。媚びを売ってあわよくば甘い汁を吸おうとする魂胆が丸見えの人間ばかりだった。



でも。できるのならば対等に本心で語り合えるリリアのような友人が欲しい。



しかしわたくしは「人形令嬢」。誰も好んでは寄ってこない。あくまで地位があったから。そして今わたくしはその地位を捨てようとしている。もし無事に捨てられたら、その時わたくしに友人はできるのだろうか。



「リ、リリア」



「はいお嬢様」



「わたくしに…友人が出来るには…どうすればいいのかしら。お金?宝石が必要?」



リリアは大きくため息をついた。

クローディアは今まで殆ど誰とも接しずに一人で過ごしてきた。そのせいで友人の作り方を何ひとつとして知らない。それどころか人はみな金と地位に釣られるものだと思っている。



「お嬢様、友人とはお互いを心から信頼し合い、気軽に話せる間柄を指します。お金で釣られるような人間が本当の友人になれるとお思いですか?」



「…ならどうすればいいの?」



「お嬢様は少々、近寄り難い雰囲気がしております」



「と言うと?」



「お嬢様は完璧でいらっしゃいます。貴族の義務で行かなければいけないですが正直学園に行っても学ぶことなどないほど。ですが完璧すぎるが故に近寄り難くてしまっているのです」



「…なるほど」



「これを変えるためには、所謂イメチェンが必要です」



「イメチェン?」



「イメージチェンジのことです。お嬢様は既に1年間学園で過ごされ、皆様が抱くお嬢様のイメージは固定されてしまっています。ですのでそのイメージを塗り替えることが必要です」



「どうすればいいのかしら!?そのイメチェンをするには」



クローディアは食い気味で尋ねる。



「例えばですが…髪型を変えたり」



「髪型?」



「はい。人に話しかけるには話題が必要です。会話をしたことが無い中で簡単に話せる話題、『髪型変えました?』です。これは髪型を変えていなくても、いつもより素敵ですね、など話が発展しやすいです」



「髪型…」



「お嬢様の場合、髪を下ろしてみたり、逆に纏めてみたり変化をつければ注目されます」



リリアの話に納得する。これはいいことを聞いたわ。学園に通い始めたら実践しましょう。



「他に何があるかしら」



リリアの目がキラッと光る。



「香水などいかがでしょう」



「香水?」



クローディアは普段薔薇の香水を使っている。誰が嗅いでも華やかな香りで、ジルベルト殿下の婚約者として相応しい香りだ、と皆に言われてきたからである。



「たとえば…ラベンダーなどいかがでしょう」



「ラベンダー…」



「ラベンダーの香りはとても上品な香りです」



クローディアは知らないが、ラベンダーの香水はジルベルトが愛用している。

ラベンダーの香りをクローディアが纏うことは、ジルベルトの香りを纏うこと、つまり二人はお互いの香りを纏うほどラブラブであると周りに言っているようなものだ。



リリアに下心などないが、主人に幸せになって欲しいと思うがゆえの行動だ。



「ラベンダーの香水、いいわね。香りを変えると髪型と同じで話す話題ができるのね」



「そうです」



クローディアが乗り気であることにリリアは嬉しくなる。



これがまた新たな波乱を呼ぶことはまだ誰も知らない。



「そうと決まれば教科書を整理するわよ。もうそろそろ学園に行けるようになるわ。ちゃんと準備しないといけないわね」



正直クローディアは何も準備をする必要などないのだが、主人の表情がいつもの無表情と違い少しだが明るくなっている様子にリリアは嬉しくなった。

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