Prologue:花の都で眠りましょう
花が咲いて、散るまで。それを見届けるのは、いつだって…
夢を見ていた。優しい姉の、柔らかな笑顔。いい子だね、と頭を撫でてくれた。
美しく、とても、愛しい夢。
今日も花は咲いて散る。空は青く、煌めきと共に花びらについた水滴が落ちゆく。風が吹いては花びらが散り、空高く舞い上がる。目を閉じれば暖かな日差しと共に香る微かに甘い、花の香り。
雲を貫き成長した、世界樹の如き大樹。その頂点に眠る、美しい花。
イチイの木と同化した姿で、静かに佇む愛しい花。
俺はその花にいつものように話しかける。
「ねぇ、今日は虹が出てるよ、ねーさん」
ああ、はっきりと目に浮かぶ。この世の誰よりも美しく、誰よりも優しく、誰よりも尊い。俺の唯一無二。彼女の笑う姿が。
「ねーさん、ねーさんは今日も綺麗だよ」
綺麗なまま、時を止められた姉さんの姿。きっといつまでもこのまま、世界に在り続けるのだろう。ああ、それなら俺の世界は永遠だ。俺の世界の全て、俺の存在する意味。…いっそこのまま、どうか散らず永遠に。
ここは花咲く都。全てが終わって、全てが始まった場所。この世界で一番最初に咲いた、花の都だ。
そして、きっと俺が枯れる場所。
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