豆腐小僧
『豆腐小僧』
豆腐だと気づいたのは
何時だったろう
ただ一つの持ち物が
手の中にある大事なものが
ありふれた
豆腐なのだと
気づいたのは
大きくもならず
美しくもならず
常にふるふると震え
ともすれば
滑り落ちそうになり
崩れかけ
腐りかけ
ふと見れば
ひとり
開かれもせず
その形を現すこともない
灰色の世界に
取り残されている
どう生きていけば
いいのだろう
ここにいる
意味と信じたものが
頼りに歩いてきたものが
変哲のない
豆腐だったと
思い知ってから