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流血のシーンがあります。

苦手な方は、ご注意ください。

「うわぁ…凄い! これ、剣、抜いてもらってもいいですか!?」

「え、あの…」

「だめ、ですか…?」


騎士の格好をした2人の男の(けん)が、あまりにもクオリティが高い鞘に収まっていて、かつ柄の細工が綺麗だったので、鞘の中身もみてみたくなった。しかし、2人の反応が、あまり肯定的ではなかったのであからさまにしょげてしまった。


いかんいかん! もしかしたら作り物だから抜けないのかな? 見た目だけなのか! どうしよう。撮影的にかなり触れてほしくなかったとこに触れてしまったにちがいない。さぁ! どう(かわ)す!? 役者魂をみせたまえ! 騎士2人!


「あ、あの。ご覧になりますか?」


「!?」


私があまりにもしゅんってしたからか、騎士その1がそう言ってくれた。


大丈夫なのか!? …ああ、鞘から抜かずにみせればいいのか。


そう思った私の考えに反して、騎士その1は鞘から剣を抜いた。



カチャ、シュイン――



「…」


今、金属が擦れるような音がしたよね!? 一体、何をつかって造ったんだそれ…。


「どうぞ、きをつけて下さいね」

「あ、はい。どうもありがっうわ、重っ!!」


重い! 確かに本物の剣って重いらしいけど、ここまで再現する!? すごい金かけてるね、この番組。


「うわぁ…すごっ。よく磨かれてる」


近くでみると、なお柄の細工は細かく、刃の部分は鏡のように光沢があった。すげーな。磨かれすぎ。鏡っていってもいいんじゃない?(笑) そして重いな!


…。


リアルすぎん?


「…これ、本物だったりします?」


あまりにも本物感あふれるのでついきいてしまった。


「はい? いや、本物でないと駄目でしょう? いつ、何時(なんどき)、何があるかわかりませんから」

「本物の刃物ぉ!?」

「? はい」

「!?」


本物って…刃渡り15センチ以上、どころじゃないじゃんコレ!! 銃刀法ぉぉお! てか確か、剣なら5.5センチ以上じゃなかった!? 余裕でこえまくりだよっ! そんなん、いくら番組のためとはいえ、日本(ここ)じゃダメでしょう!?


当然でしょう? と言わんばかりにサラっと爆弾発言をした騎士その1。衝撃的すぎて驚きを隠せない私に、騎士2人はますます困惑の表情をする。後ろから、かすかに「本物…?」と彼女が息をのむのがわかった。


ねぇ、さっきから何なのかなその反応。騎士さん2人といい魔術師?さんたちといい…。本当にここがナントカ王国だって錯覚しちゃうじゃないか! 演技上手すぎるよみんな。もうあの彼女だって仕掛人だったりするのかな。そろそろ信じちゃうよ。…わかってるよ? 信じた瞬間、「はい、ドッキリでしたー!」なんてなるんでしょ? この剣だってすごく手が込んでるけど、技術駆使してつくった模造品(レプリカ)なんでしょ? どうせ切れないのにその1さん「きをつけて」、だなんて…(笑)


…。

どうしよ、へんな汗がとまらない。


「ねぇ、本当にここ王国なの?」

「突然の事で困惑なさるのもわかりますが、正真正銘、ここはアムネスト王国ですよ」


騎士その2の男が気遣わしげに私に言ってくる。くっそぉ。イケメンだな! 惚れるわ! …そんな真面目に言われたら信じてしまいそうになる。


「…これは夢か」


ちらっと彼女の方をみると、もう座り込んではいなかったが、相変わらず不安そうだった。そんな彼女に私は、おもーい剣を持ったまま近づく。


「ぶって!」

「はい!?」

「いや、夢かなと思ったからちょっと私に何かしてくれません?」


突然話しかけられた彼女は驚いた顔をしたものの、私の意図がわかったのか恐る恐るといったふうに私の頬をつねってきた。


むにっ


気をつかってかあまり強くはなかったが、彼女の手の感触は、確かに私の頬にあった。


「…ねぇ、あなたも実は仕掛人だったりします?」

「いえ、私も何がなんだか…」


彼女が本当の事を言っているのかはおいといて、とりあえず夢では無いことはわかった。問題は、いい加減ドッキリを打ち明けてほしいということだ。帰ってさっさと課題と予習復習やって、みたいアニメがあるというのに、全く打ち明ける気配がない。


そして、馬鹿げた考えかもしれないが、もし…もし、本当にここがアムなんちゃら王国なら、日本じゃないなら……この剣は本物だろう。ほら、やっぱりドッキリじゃないか!と証明させるには剣が偽物だとわかればいい。


それなら―…。


立てた剣を地面と左手で支えるように持ち、右手で制服のシャツを2、3回まくる。


もう、もとから傷ついてるし、ここなら試してもいいだろ。やったことある人でないと、イマイチわからないと思うが、刃物は力を入れて押すだけじゃなかなか切れない。勢いをつけて振ったり、滑らせたりして切れるのだ。


「何を…」


怪訝な顔で私をみる部屋の人たちをにっこりと見渡して一言。


「現実の確認?」


そう言って剣を右手に持ちかえ、固定したまま左腕を刃にあてサっと滑らせる。


サクっ


あ、切れた。

めちゃくちゃ切れ味抜群じゃん。


1拍置いて、じわぁ、と血が傷口からでてくる。

血がでて…。あぁ、この剣、本当に本物だったんだ! そっか! だから切れたんだよね(笑) そっか!そっかー! 本物、ほん…


「ほんものおぉぉォォ!!?」

「何やってんだ!?」


ガシャァアンっ!!と派手な音をたてて剣を手放す私に騎士その1が駆け寄る。


「まって、本物!? これ現実!!? ふぁー!? 番組とはいえ、本物の刃物っていいの!? それともあなた本物の騎士さんなのか!?」


プチパニックだよ!! 本物なんてきいてない! あ、さっきから本物って言ってたね!? え? じゃあ何? 本当にドッキリじゃないわけ!? どっちだ!?


「おい、ちょっとアンタ落ち着け! 傷みせろ!」


オチツケ? オチツケってなんだっけ!? あぁ、てかなんでその1さんそんなに焦ってんのかな。さっきまでとなんか口調違うし。私はそっちが好きだぞー。あはははは。


「おい…。アンタなんか放心してないか? 大丈夫か!?」

「あ、ハイ、ダイジョーブデふぁぁあ!?」


ぜんっぜん大丈夫じゃなかった。剣が本物って事に衝撃受けすぎて、切ったこと忘れてたぁぁあ! しかも、自分が思ってた以上に深く切ってたらしい。結構ドクドク血がでてる。


「い? 痛いいい!?」


切ったということを認識したからか、さっきまで何も感じなかったのにめちゃくちゃ痛い! 痛いよ!


「ちょっと、お嬢さんや、腕をみせなさい」


うぉーって痛みに悶えてたら白いローブの集団から、老夫が声をかけてきた。私に近づき、切った方の腕をとる。


「ヒーリング」


そう老夫が呟くと、ほわぁっと私の腕が淡い光を放ち、徐々に傷口が塞がっていった。そして、数秒後には完全に傷がとじた。


「は…?」


私だけじゃない。彼女もぽかんとしている。


「傷が…ない」


ペタペタと傷があった場所を触るが全く痛くない。しかもさらに驚くことに、消えたのは先程の傷だけではなかった。茶色く色づいてしまっていた、あの爪立てしてできた痕まで全て、きれいさっぱり消えていたのだ。


「あ、ありがとうございます?」


傷がなくなったところで離れていく老夫に戸惑いながら礼を言いつつ、今起きた現実をのみこもうと頑張る。


「…」

「…まだどこか痛むのか?」

「……」


いかん。キャパオーバーだわ。そして騎士さん。どこまでもかっこいいね。

銃刀法22条に模造刀剣類(ほんものそっくりの剣とか)もつくっちゃだめ!ってかかれてるらしい。

…まじかぁ。

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