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プロローグ ぼくに戻った日

初投稿です。

その日ぼくは、征服地に立っていた。


いつからをそう表現するのが適当か。

少し前まで戦場だったここは、今やただの植民地でしかなく。

少し前まで兵士だった彼らは、今やただの虜囚達でしかなく。


もはや僕は、被征服地に立っていた。



タラップを踏む堅い音が響く。その音で自分がいる場所を思い出す。

目の前一面に広がる焼け野原。

かつて家だったはずのガレキ。

空は妙に晴れ渡って、時刻で言えば12時頃の空模様って設定だろう。


後ろを見れば帝国機がずらり並んで整然と深緑のテントがそれに並列している。どれもこれも帝国旗の印字付き。帝国印はまだ増えるみたいだ。再突入の炎がまた一つみえた。


住人はちゃんとした家を建てやすいから岩石惑星型は被害が大きい。自立型の被害が少ないかと言えば全くそんな事はないのが今回の戦争の恐ろしさだけど。やけに分析的になりたがってるのは現実逃避だと分かっている。すこしづつ受け入れていこう。


やっと自分がドコにいるのかまでやっと理解に至った。分かっちゃいたというか、納得できてなかったというか。


「見ろよ、アレ。企業様だ。あんなのが功労者だって?

愛国心が全くもって足りないね」


「おいおい聞こえるって。やめとけよ。

その身体さっき再結成したばっかだろ。また壊れたらもったいねーよ」


ここからは見えない、が会話から着慣れた服装に違いないと当たりを付ける。

灰色の制服と茶色い帽子、帝国兵の足音が三人分ある。臨時に立ってる治療所から帰ってきたみたいだ。音は前方へ離れていく。



あんな治療所、戦地の規模じゃない。大きさじゃなくて設備が。

四肢欠損が直せるレベルの施設なんて前線にあっていいはずがない。本当に彼らにとってここはもう自陣なんだ。少なくとも上層部はそう思ってる。拠点化して盟主にするんじゃないかな、対抗同盟。また考えが逸れた。


酷い態度だけど彼らは間違いなく前線で敵と戦っていたんだ。怪我だってする。いや欠損までなら何とかなっても、死ぬ事さえある仕事だ。腕に埋め込まれたチップで管理される数字じゃないんだ。


自社の利益が最優先の企業を目の敵にするのは実際当然なのだ。


ぼくは顔を伏して逸らして、動きを息と一緒に止めた。

詰め所らしき所に向かう、でかい図体の二体――が振り向かない事を確認して、頭を預けていた時計塔から身を離す。


「もう、いこうかな」


二人の来た道を歩きだすした。そのテントだけは赤い十字が走っているだけで、帝国旗は見えない。治療所のマークだ。


帝国の前線兵士は最近見てなかったから忘れてた。人型の方が、珍しいんだっけか。


ドスドスとせわしない二本の足と引きずっては打ち付けるような一本の尻尾が聞き違いを生んだらしい。恰幅はよいが重心の低い、よく動けそうな兵士達だ。口は悪いが。


テントの中は薄暗く兵士の横たわるベッドがところ狭しと置かれていた。生きてる人を生かすべく医療ロボットが粉骨砕身してる。ロボット達は合理的だ。

彼らだけは、一途に設定した目的に向かっている。だから向こうの患者の元にいて、こっち患者の近くにはいない。

うん、合理的だ。


「この人にお願いしようかな」


腕のない帝国兵士を見つけた。つまり、この人はチップを持ってない。


「誰だ。あっいや誰でもいい、右腕がかゆいんだ頼む。かいてくれ」


大丈夫! チップを、チップが入った腕をなくすことはよくあることだ。だからみんな所属と名前のタグを持ってるのさ。治療用じゃないロボットがスキャンして処理する。いちいち組成や生体紋の照合なんてやってられないから。サイボーグも楽じゃないね。


薄暗い明かりだけで素手、なかなか難しかったが僕は体内のタグを何とか取り出しおおせた。手がべたべたする。

アナログも捨てたもんじゃない。

外した方は……まあ僕がもっておくことにしよう。




彼の遺体はタグを根拠に僕の死体となるはずだ。

「         」

手を合わせておく。すると丁度低い金属音が聞こえてきた。

ボーン、ボーン、ボーンって。


さっき頭を預けていた塔の方角からだ。

うなだれた頭で考える。


あの時計はたぶん目印のつもりで残したんだ。感慨とか、郷愁とかあるいは歴史を思いやった訳じゃない。だからこんな事を思うのは筋違いだ。


夫の帰宅を待つ妻か、父の遺骨を見る子らか、子の無事を祈る母か。

今この鐘は誰に届くのだろうなんて、


この音を聞く人がいてもいなくても、思うべきじゃない。


広がる低い音と後先を争いつつドームのライトが夕方に向け変わりだした。剣呑な真っ黒い鳴き声も聞ける。別に不思議じゃない。帝国統一時間ではここは6時なのだから。


どこか帝国領の星のティータイムを告げる音が走って、ついぞ反射しては来なかった。


帝国は今日ここ、『商都』を占拠した。



あと、そんな歴史的事実に並べると本当にどうしようもない話だけど言っておくよ。


同日、ぼくが逃げ出した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ワレラガ ソコクニ エイコウアレ        71985/


 ショクンノ ニ……               FROM

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


短いですが初めてみます。

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