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ガチャで俺は最強になる  作者: 青藤清也
第3章 ガチャで俺は最強になれるかも?
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第67話 幸せのあり方

覚悟を決めたつもりだった。でも決めたつもりだけで結局は...

 

 籠城作戦を決行して3日ほどが過ぎた。そして結果は...俺が望んでいたものになっていた。


「モグモグ...センヤ!このプリンとやらは大変美味だなっ!!」


 アビスは見事、餌付けにより予想以上に味方につけることができたのである。ちなみにアビスは僅か1日で陥落し、その想像以上の呆気なさに驚いたというより呆れてしまったほどである。

 まぁ、何はともあれアビスから手に入れた情報を元に色々なことが知ることができたのは事実であり、大きな前進と言えるだろう...


 このダンジョンはアビスの【対価の法則】という力によりくだされた結果でその名からも分かるように『対象の得たものに対する対価を何らかの形で支払う』というものだ。

 俺の恵まれた幸運によって得られすぎた対価の代償としてこのダンジョンに連れてこられることとなったわけだ。

 アビスは俺の想像していたとおりこの世の者ではなく、本来は女神という存在だった。想像していたことではあったが、いざその瞬間を目の前にすると何とも言えない気持ちになった。だってこの女神チョロすぎるんだもん…ま、まぁ、その話は置いといて...だ。

 次にこのダンジョンについてなんだが…どうにも大変ヤバイものらしい。というのも俺が短期間で得られた恩恵がすごすぎる為、それを代償としてしまったので仕方ないと言えば仕方ないものらしい。それだけ俺が【不明不定箱】等で手に入れできたものがどれだけすごいのか...という証明になるわけだ。

 そしてこのダンジョンの厄介なところは能力に制限がかかることでもある。【会話通信】で近くにいる者とは連絡が取れるのだが、この場にいないルシフェル達とは連絡が取れなかったりする。

 そしてその影響を1番受けているのがアビスらしく、俺達は互いに協力し合い、このダンジョンを突破することになった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アビスとともに協力し合いながらダンジョン攻略を進めて1ヶ月ほどだろうか...ついにその日がやってきてしまったのは...


 ピュリウムスコーピオン、グロウリザード、ガリムスム、アンモナイト等など...開けた空間には沢山の魔物達がいたのだ。

 誰の不注意でもない...いや、もしかしたら気付いていなかっただけかもしれない。誰も死なせたくなくて、初めてのダンジョンで、慎重に少しずつ事を進めていたはずなのに...やっぱり疲れやストレス等があったのだろうか...?


 だとしたら…どうすれば良かったのだろう?


 どうすることが...正解だったのだろう?


 俺の運が悪ければここに来ることはなかった。でも、それではルア達と出会うことはなかっただろう...


 いや...それで良かったのか...


 確かに運が悪ければルア達と出会うことはなかった...


 でも...



「死ぬことなんてっ、なかっただろうがぁ!!!」



 俺は地面を殴りつけるとその感情を吐き捨てた。


 溢れ出てくる涙が止まらかった。


 ウニやレオナの涙や表情が俺の心臓を締め付けた。


 頭がグチャグチャになり何も考えられなかった。


 胃の中のものを吐きそうなほど気持ち悪かった。


 折れてもおかしくない拳は痛みを感じなかった。


 自分の幸運を初めて呪った。


 今まで与えてくれたその力に唾を吐いた。


 だってそうだろ...


 この運の良さがあったから...俺はルア達と出会い、そしてこのダンジョンに...いや、違う...っ!!


 俺はそう思いつくと自分でも考えられないほどのスピードでアビスを地面に叩きつける。アビスもそのスピードに驚いたのか大きく目を見開いている。


「どうしてお前の気まぐれに俺達が巻き込まれなくちゃいけねぇんだぁ!!!」


 アビスが【対価の法則】を使わなければここには来なかった。


 あの日々を失うことはなかった。



 ルアが...死ぬことはなかった。



「...笑ってたんだよ」


 俺はルアの最後の瞬間を思い出す。


「...アイツは...ルアは...笑ってたんだ」


 ルアは動けない体で、それでも俺の方を見て最後に笑顔を見せた。


「お前に…その笑顔の意味がわかるか…?」


 俺が話しだすと驚いていた表情をやめ、ただ黙って話を聞いていたアビスだったが...その時初めてその表情が揺らいだ。


「死ぬ前に悲鳴をあげないのはなんでだ?声が出せないほどボロボロだったからか?だったら悔しさや苦しさを表情に表すはずだろ?だったらどうしてそうせずに笑顔を見せることができたと思う?」


 俺はアビスに何度も問いかけるように言葉を紡ぐ。返答を聞くわけでもない一方的な言葉をぶつけ、アビスの困惑は深まるばかりだ。


「それは...それはな...悔いがなかったからなんだよ...。いや、本当は悔いがあった、まだ生きてたいって悔しさがあっただろう…でもな?それでもアイツが笑ってれたのは…それでも笑えるほどに...良かったと思えたからなんだよ…」


 先ほどまでの気迫はない。変わらないのは涙が出続けることくらいだし、アビスも困惑しているままだ。


「アイツは笑えたのかもしれない...後悔はあったが、それでも満足したのかもしれない...でも...俺は違うんだ...俺はまだ...満足なんてできちゃいないんだ...子供だから?理想が高いから?そうだとしても...俺は満足できちゃいないんだよ…」



 最初の街に来ただけだ。次にどこに行くかも話していない...


 冒険者になったばかりだ。ろくに冒険なんてしていない...


 好きと言われたばかりだ。それに応える態度も表していない...


 俺の物語は始まったばかりで、俺達の物語も始まったばかりだ。きっとこの先まだまだ楽しいことが沢山あるだろう。時には笑って大騒ぎして、時には共に苦難を乗り越え、でも乗り越えた後はまた笑ってる。

 色んなものを見て、色んなことを体験する。そして旅の途中で振り返る。あそこの料理は美味かったとか、あそこの景色は絶景だったとか、あそこの魔物は強かったとか...でもそれは...共有できるものがいて初めて成り立つもののんだぜ?


 だから...だからさ.....


「お前が死んだら...この先ずっと俺は満足できないんだよ…」


 新古参の仲間がいて、それでも満足のいくもの目指す。それなのに...それを目指す上での大前提である仲間が欠けて...俺が満足できるわけないだろうが...


「...?」


 心に大きな穴が空いたような感覚、頭の中はグチャグチャで、タラレバの未来が次々と浮かび後悔という感情が胸を締め付ける。ただそんな中でも...目の前に起きた変化に気付くことができた...


「お前...泣いてるのか…?」


「えっ.....っ!?」


 気付けばアビスは瞳から涙を流している。変わらぬ表情のまま、その瞳からは涙が流れていたのだ。

 なのでそのことを俺が尋ねると、アビスは自分でも涙を流していたことに気がついていなかったらしく、困惑するように右手を顔へと持っていき涙に触れると、驚いたような表情を見せた。


「...っ!!」


 そして一瞬、嬉しいような笑ったようなよく分からない表情を見せると...俺とアビスは光に包まれた。


センヤがアビスに対して取った行動に違和感を覚える方もいるかもしれませんが...これがセンヤという男です。

彼はまだ高校生で精神的にも未熟な存在です。感情的になることもあります。何が言いたいかというと、たまにいる完璧型の主人公ではないということです。

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