第62話 再会は右ストレートから
本日2つめの投稿になります!61.5話をお読みでない方はよろしければそちらもお読みください。
「ちゃんと生きてるから安心しろ」
そんな声とともに秀馬の前に出現したワープから1人の男性が現れる。その男性は両手で柚乃を抱き抱えており...
「大事な仲間なんだろう?ほら、」
「ど、どうも」
男性はそう言うとニコリと笑い秀馬に柚乃を託す。
「随分と大事にされてるようだな」
「え...」
男性はそう言いながら秀馬の後ろの方へと視線を向けていることに気づき、秀馬がそちらに顔を向けると...クラスメイトの面々がやって来ていた。
「竜藤さんが魔王と戦闘を始めたって聞いたから...」
「心配で...」
「来ちゃった♪」
(最後だけ軽いなっ!?)
秀馬は内心そんなツッコミを入れる。
他の面々は緊張などを滲ませているのに対し夏菜はいつもと変わらない雰囲気を漂わせている。
(それにしても...ほとんど来ちゃったなぁ…)
秀馬はこれからどうするか?ということについて考えながら、男性の方へと振り返る。
「あー...委員長、じゃなくてこの娘を生かしてくれたことには礼を言います、ありがとうございます」
そして秀馬は男性に対してそう述べると頭を下げた。男性は目を見開き2回ほどパチパチと瞬きをするが、それも一瞬のことですぐに不敵な笑みを浮かべる。
「それで...魔王様が、しかも2人もこの学園に一体何しに来たんですか?」
更に秀馬は顔を上げると続けるようにそう言った。
「ほぅ、貴様は中々興味深いな.....ふむ、では質問に答えよう。ディアブロのヤツが学園に用があったらしく、俺も気になることがあってな、顔を出してみることにしたわけだ」
男性の正体は夢幻の魔王 ベルゼビュート。【異次元穴】という固有スキルを持つ秀馬の言ったようにディアブロと同じ魔王である。
「...それで俺達は未だに生きているってことか…」
「あぁそうだ、コッチは危害を加えるつもりはねぇのにそのバカ攻撃しやがって」
(な...いつの間に!?)
いつの間にか近く...ベルゼビュートの隣に来ていたディアブロが苛立ちを隠すことなくそう言う。秀馬は内心驚いていたが、相手が魔王であることからそれも有り得るだろうと瞬時に自分を納得させ、表に出す前に驚きを留めた。
「みんな...離れて...ソイツは危険...」
そう口にしながら現れたのはフェリス・ノクトーバー...このジョーダー学園の現生徒会長で学園の生徒の中でも最強と言われる人物だ。
ただ一点、気になることがあるとすれば…その体が満身創痍だということだろう。フラつきながら、足を引きずりも少しずつ歩みを進めている。
「てめぇ...殺さないどころかわざわざ送り届けてやったのに…どうやら本当に死にてぇらしぃな…」
ディアブロは舌打ちするとその姿を一瞬で変貌させる。その姿は先ほどよりもおぞましく、不気味な雰囲気を漂わせている。
その姿を見た周りの者達は悲鳴を上げ、更に距離を取った。特に女性陣達にとっては相当恐ろしいらしく、離れていても体を震わせている者達がいる。
そしてそれよりも...
「フェリス会長...?」
「あ...あ、あぁ.....」
フェリスはその姿を見て明らかに恐怖を感じていた。体の震えは大きく、ディアブロを見るその瞳もおかしいものになっており、そのままストンと地面に座り込んでしまう。秀馬の声にも聞こえていないかのように反応を示さない。
「...フェリス会長に何をしたんだ...?」
絶対に見ることのないであろうフェリスの姿に疑問を隠せず、秀馬はそう尋ねた。
「あぁ?いつまでも抵抗してウゼェから壊しただけだろうが」
(な、壊した!?っ、だからフェリス会長はこんな...)
「ちっ、気に食わねぇって顔してんなぁ、なんだ?殺されてぇのか?」
秀馬の瞳と雰囲気に舌打ちをしながらディアブロはそう言う。
「殺したいならさっさとやってるだろ、殺せないから会長も俺も生きてる。違うか?」
「あぁ...コイツやっぱウゼェ...ああそうだ。けどよ、テメェにも俺を殺せる力もねぇんだろ?あったらさっさとやってるもんなぁ...?」
ディアブロの指摘はその通りで、現在の秀馬には勇者であってもやはり魔王という存在を殺すまでの力はなかった。2人は互いに睨み合い、感情だけをぶつけ合う。
いくら互いが互いを殺したいと思ってもディアブロは秀馬を殺すことができず、秀馬にもディアブロを殺す術がない。
そう...秀馬には...だ.....
突如、ディアブロの目の前にベルゼビュートの【異次元穴】が出現する。
「げ...マジかよ...」
何かを感じ取ったのかディアブロはそう言うと急にげんなりとした表情になる。
(ディアブロが嫌がっている?一体誰が来ると......なっ!?)
そしてそのディアブロの態度を見て身構えた秀馬だったが…姿を現した人物に驚きを隠せないでいた。
「お仕置きだ」
ドゴォォォン!!
そんな言葉とともに穴から現れた存在が自身の何倍もあるディアブロの体を一瞬で吹っ飛ばす。
「てぇ...何しやがるセンヤァ!!」
吹っ飛ばされたディアブロは怒りの形相でその存在を睨みながらそう叫んだ。そしてその言葉は秀馬に言葉を紡ぐ後押しとなる。
「そ、そんな...セ、センヤなのか...?」
センヤと呼ばれた男性の後ろ姿を見ながら秀馬はそう言葉を投げかけると...その男性は秀馬の方に振り向きニッと笑いながら口にする。
「そうだ、久しぶりだなシュウマ」
髪の色や瞳が違ったり、身長が伸びだり、纏っている雰囲気は違ったが…それは紛れもなく加藤 千弥という存在だった。
というわけで無事に出会いました。この後どうなっていくかは…ちょっとまだ考え中な部分もあります。
毎週水曜日に投稿できるように書いてきましたが、ちょっと重要なシーンということもあり来週投稿出来ずに再来週の投稿になってしまうかもしれません...その場合は申し訳ございません。




