第57話 美少女天下無双?
本日本編の他に.5話も掲載しております。
あと活動報告にて以前とある作品の1巻発売を記念したセンヤ達によるちょっとしたやり取りのお話もあります(笑)
「私にはあまり人が近寄らないから大丈夫」
ピュアは何ともないような顔をしていたが...悲しい思いを抱いているのは分かった。どうして?...という疑問を浮かべるでもなくその理由は簡単に分かってしまうからだ。
【純粋】...ピュアの持つ固有スキルのせいだ。近くにいる人の考えてることがピュアには分かってしまう。考えてることが伝わってしまうから...人々はピュアへと近づきはしないのだ。
「そう。だから...今日は嬉しい」
ピュアはそう言うと改めて俺の方を向く。彼女の瞳が俺を見つめ、また俺の瞳も彼女を見つめる。
「センヤは良い人。とても...素敵な人」
そう口にした彼女の瞳は先ほど会った時と違い何か強いものが感じられた。そしてその頬は赤色を帯びている。
「む...何かマズイ気配を感じる...これはハートに教えられたLOVECOME的な波動を...はっ!」
アビスが何か言っており、何かに気づいた様子でピュアを見る...顔を少し赤くして俺に熱い視線を送るピュアの姿がある。
「...ピュア?もしや貴様...センヤに恋慕の情を抱いたか?」
するとアビスはそんなおかしな質問を言い出し、そのアビスの質問にピュアはまた首をかしげる仕草をする。
当然だ。俺だって若干その可能性を考えたが...さすがに無理がありすぎる...
俺は馬鹿な質問をしたアビスの言動にそんなことを考えて小さな溜息を吐く。そしてピュアに答えに耳を傾けていたのだが…
「...7割ほど」
返ってきた答えは...え?マジ!?マジでそういう感情あるのっ!?
いやいや無理でしょ!俺は無理だと思うよ!だっていくら話せるからってまだ出会って話して2時間弱くらいしか経ってないんだぞ!?
いや待てよ...もしそんな短時間でそういう思いが抱けるというのなら...それはそれで問題がある。それだけ彼女はそういう機会に恵まれずに過ごしてきたということだ...だとしたら...辛いよな...
ピュアと話すのは嫌いじゃない。というか俺的に考えが伝わる分だけ楽で良いじゃん的な考えに収まっている。ルックスだって女神だけあって美少女だし、俺に釣り合うか?と問われればNOと自分から言えるレベルだ。
「...10割になった」
現在進行形で落ちたぁぁぁぁ!!!えっ何で!?さっきよりも熱っぽい瞳になってるし、心なしか空間距離も縮まってるんだけど!?ていうか今まさに1歩歩み出したんだけど!?1歩どころか俺の隣に来たんだけど!?何か嬉しそうな表情してて可愛いんだけど!?
「...って露骨に恥ずかしがってんじゃねぇよ!」
俺の目の前には両頬を両手で押さえてあからさまに恥じらうポーズを取り出すピュアの姿がある。
「さすが...幾多もの美少女を惚れさせた美少女天下無双のセンヤだ」
「なんだよ美少女天下無双って!?」
てかアビスよ...美少女天下無双って俺そんなに.......
確かに否定できないな...
頭の中で該当する人物を挙げていくが...どう考えても多かった。
とまぁ...こんなことがありパーティーで俺はアビスとは別の誠実の女神様からも惚れられることになった。
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「というわけで…色々と経緯があって俺が主人となったわけだけど…」
そう言う俺の周りを見渡すとそこには20人以上の男女がいる。動揺を隠せないもの、新たな希望に目を輝かせるもの、不安に怯えているのを感じさせるもの...男女達は様々なものを物語っていた。
「先に聞いておくけど...今回の件について不満を持っている人っている?いるなら遠慮せずに言って欲しい。もちろん文句を言おうが激怒しようが咎めはしない」
俺の言葉に男女達は少しザワつきだす。俺の言ったことが意外に感じられたのだろうが...中にはすでに覚悟を決めているのか微動だにしない者も何人かいる。
そんなザワついた中、1人の女性が手を挙げる。当然、周囲の視線が注がれ女性はビクッと体を震わせるが...挙げられた手は下がらない。
「確か名前はレインだったな...はいどうぞ」
「はいレインです。その...私には父と母がいるのですが…前に仕えていたところは住み込みが義務づけられており、月に1度家に帰ることが許されたのですが...ここにお仕えしてもそれは可能ですか?」
レインの提案は以前の仕えていたところと変わらず月1で家族に合わせて欲しいとのことだ。うん悩むまでもない。
「別に構わない...というか仕事に支障さえないなら通いたければ家から通ってもいいぞ?」
「え...ええ!?い、良いんですか!?」
「いいよ。詳しい話は後で決めようか」
驚いたレインにそう言うとレインは「...はい」と返事をし引き下がる。というか周りの者達も驚いた顔をしているが…仕事をこなしてくれるならどこに暮らそうが関係ないと思うんだけど?
「センヤ様。この国で貴族に仕える使用人は一部を除き基本的に住み込みとして屋敷で暮らします」
俺の疑問を感じ取ってくれたらしいメルトがそう教えてくれる。
「へぇーそうなんだ...でも俺貴族じゃないしなぁ...」
「「「「「えっ!?」」」」」
「え?」
メルトがそう教えてくれたので素直にそう独り言のように口にしたのだが…俺がそう言うと男女達からそう言われてしまう...
「す、すいません...センヤ様は貴族ではないのですか?」
サニーという女性が手を挙げながらそう聞いてくる。
「え?そうだよ??」
...え?もしかして俺ずっと貴族だと思われていたの!?
「...もしかして俺って貴族だと思われて...た?」
「「「「「(コクリ)」」」」」
「何で!?」
ほぼ全員から頷かれてしまい咄嗟にそう返す。
「何でと申されましてもも...あのパーティーのあの場所に居られましたし…てっきりどこかの貴族様のご子息だと思っておりました...」
「「「「「コクリ」」」」」
サニーの言葉にまた頷かれる。
「確かに貴族じゃなくてこんな家を持ってるとは思わないよねー」
テーブルで紅茶を飲んでいたレオナもそう言う。
確かに普通はおかしな話だ。こんな17歳の若者が自らお金を稼ぎ購入した家と土地だと言われても...信じる方が難しいだろう。
「あぁ...なるほどなぁ。でも実際貴族じゃないから堅苦して苦手な人は敬語じゃなくてもいいぞ?まぁ、これ言ったらまたメルト達に体裁云々言われるから外では使ってもらうけど…」
再びザワつきだす男女達。そしてそれを見たウニが発言の許可を求めてきたので認めてやる。
「センヤ様にはこの世界に身寄りがいません」
特別大きな声で言ったわけでもないのに...その声はよく透き通るように響き、ザワついていた男女を静かにさせる。
「センヤ様は私のような従者やアチラに控えている使用人達のことを『仲間』と言います。アチラのテーブルにいるレオナ様達も立場的に本来なら使用人のような扱いでもおかしくありません...でもセンヤ様は仲間や家族みたいなものだと言ってそれを強要しません」
ウニの話はザワつかれることなく黙って聞かれている。皆、吸い込まれるようにウニの話を聞いているのだ。
「センヤ様は私達との関係を縦の繋がりではなく横の繋がりだと考えておられます。ですから先ほどのレインの発言もセンヤ様にとって大きな問題だと捉えられません」
真面目に話を聞いていたレインがチラッと俺に視線を送ってきたので笑顔で頷く。するとレインは気付かれたことに動揺したのか慌ててウニへと視線を戻す。
「家族と過ごそうと趣味を嗜もうと...与えられた仕事をするならば咎められることはないでしょう。何故ならセンヤ様にとってそれが一番だと考えられているからです。もしそれを...今までと違う待遇を恩と感じるならばその分センヤ様に尽くしなさい。だからこそ、ここにいる者達は信頼を築き、助け合うことを苦としない。その行動がセンヤ様の為になることと知っているから...理解しているからこそその行動を惜しみません」
ウニはそこまで言うと1度言葉を中断させ...そしてニッコリと微笑むとまた言葉を紡ぎだす。
「センヤ様は私達のことを繋ぎ支えてくれます。だからこそ私達も繋ぎ合い、そしてセンヤ様を支えましょう。それがセンヤ様にとっての1番です」
ウニが最後にそう言うと一瞬の静寂が辺りを包み...
「「「「「ウオォォォォ!!!」」」」」
沢山の歓声が辺りを支配した。
新たな従者・使用人のセンヤに対する信頼・好感度がかなり上がった!
新たな従者・使用人のウニ対する信頼・好感度がめっちゃ上がった!一部の者は(信者)となった。
これが完璧秘書の成せる技か...




