第5話 バレなきゃ犯罪じゃないんですよ…
前回のお話でレオナをカード化できたのでは??と思った方がいると思いますが…確かにあの状況でカード化させることはできました。でも、センヤは考えるよりも体が動いてしまったのです。
私もアッサリ助けるか悩みましたが…強制的にカード化させるのは危険なやつ…という認識であったため、この時のセンヤの頭の中にはその選択肢はない。と判断しました。
「いやー、助かった!ありがとなハチコウ!ユーガ!」
「マスターを助けるなんて当然ですよ!」
「アルジ、タスケルノアタリマエ。」
「そう言ってくれて何よりだよ。それより…あれが、ボーシュリクスか?」
俺は崖上の先にある国を指差しながら尋ねる。
「はい、ボーシュリクスです!」
「へぇー、結構デカイんだなぁ…。」
俺は崖沿いへと視線をずらす。どうやら緩やかに傾斜になってるみたいだな。でも…
「平坦な道まで出たとしても…あの森を通らなきゃいけないんだなぁ。」
「あれはアロンジアの大森林ですね…。とても大きな森で、生息している魔物も多数います。あっ、でも安心してください!整備された公道は強力な魔物は来ませんから!」
「?なぜ、安全なんだ?」
「その公道には加護があり、強力な魔物を寄せ付けないようになっています。」
「へぇー、加護なんてあるんだな。じゃあ、目的地も見えたことだし…その公道まで移動しよう。」
「あっ、そうだ!言い忘れてたけど…助けてくれてありがとね、センヤ。」
「ん?あぁ、気にすんな…とは言わんけど、これからは魔法を使うときは気をつけてくれよ?」
「うん!気をつけるよー!」
レオナが元気一杯に答える。
あれ?なんか素直になった気が…やっぱ死にかけたのが効いたかな?
「レオナだけじゃなく、お前らも強い魔法や技を使うときは気をつけるように。」
俺は他の者達を見回すように言う。
「わかりました。」
「わかったわ。」
「了解しました!」
「ワカッタ。」
みんなの了解した言葉を聞き…
「じゃあ行くか!」
俺はハチコウの背中に乗る。レオナも俺の後ろに乗る。
ん?なんでレオナも乗るんだ?
「あれ?レオナはユーガの方に乗らなくていいのか?」
「私はこっちがいいなー。」
「?まぁいいか…。」
俺は特に気にも留めないでいたが…
ムギュっと背中に柔らかいものが当たる。
あれ?この感触って…
「おい、レオナ…何してる?」
「え?…何って?抱きつこうとしただけだけど?」
「なぜ、抱きつく必要がある?」
「え?だって…好きだからだけど?」
「誰が?」
「私が。」
「誰を?」
「センヤを。」
………は?
「何でまた…。」
「センヤが命を救ってくれたからかな?…気づいたら好きになっちゃった…。」
レオナはテヘヘと後ろ髪を掻きながら笑顔で答える。
えええええ!!!マジかよ!どーしよ…やべぇー!どうしたらいいかわかんねぇ!!
「だから私は抱きつくよー。」
俺の脳内がパニックを起こしているのもお構いなしに…レオナは腰上辺りに手を回して抱きついてくる。
俺は振り返ってレオナの方を見るが…エヘヘーと満面の笑みで笑う可愛いらしい美少女がいて、俺は脳内はさらにパニックに陥る。
俺は深呼吸を繰り返して何度か心と脳を落ち着かせる。よし、大丈夫だ。
「落ちついたー?」
「まだ、少し混乱してるけどな…」
俺は再び振り返りレオナに答える。
え?抱きついてるままだけどいいのかって?俺にとってプラスしかないからこのままだけど?
「よし!今度こそ行くかーって…またか…」
ユーガの腕の上で固まっているウニ…となぜかルアも固まっていた。
「ユーガ。腕を少し揺らして、そいつらを正気に戻してくれ…」
「「ハッ!」」
ユーガは腕を振動させ2人を気づかせる。
何で2人共固まってるんだよ…そんなにレオナが俺のことを好きになったのが衝撃的だったのか?
「すいません…ちょっと驚いてしまって…」
「私もよ…」
「俺も驚いてるよ…とにかく出発するぞ。」
「おー!」
「はい。」
「ええ。」
3人はそれぞれ返事をし、俺達は行動を開始する。
移動中、俺は固有スキルのガチャガチャを確認する。
獅子竜石を消費するマーペントガチャは一回につき獅子竜石を5個消費してガチャを回すことができる。最低でも★4以上が出る。または50個消費して11連回すお得なやつがある。
※スターターの★3以上は例外。
実はこのガチャガチャのガチャは獅子竜石を消費するガチャ以外もあるのだ…。
・デイリーメダルガチャ!
・メダルガチャ!
・10連メダルガチャ!
こちらは獅子竜石ではなくメダルを消費してガチャができる。その代わり★1〜3までしか出ない。
デイリーメダルガチャ!は1日1回無料のメダルガチャ。
普通のメダルガチャは1回につきメダルを200枚消費する。
10連の方は一気に10回分回せるやつだ。
「センヤ?その画面ってなに?」
気づいたレオナが聞いてくる。
「これは、俺の【不明不定箱】っていう固有スキルの機能の1つだよ。」
ちなみに画面の大きさはスマホ画面の拡大縮小のようにつまんで開くような動作で変えることができる。
今の大きさはウニと確認した時よりも小さい。
「へぇー。てことはこのスキルのおかげで私は外に出られたんだねー。」
「そういうことだな。」
「じゃあ、感謝しないとねー。」
レオナは画面に触れようとするが、その手はすり抜けてしまう…。
「あれ?これじゃあ撫でられないよ!」
「俺の固有スキルだしな…まぁ、仕方ないと割り切ってくれ。」
「わかったよ…」
レオナは俺の頭を撫でてくる。
「何で俺の頭なんだよ!?」
「えー、だってこの固有スキルってセンヤのでしょ?ならセンヤしか、撫でれるとこないよ?」
「撫でないという選択肢はないのか?」
「ないねー。私も嬉しいし、一石二鳥ってやつだよ!」
「そうですか…」
まぁ、いいか…俺も嫌じゃないしな。
「それより、スキルで何しようとしてたのー?」
「ああ、ガチャろう…つまりガチャをしようと思ってな…。」
「え?じゃあ私達の仲間が増えるの!?」
「増えるかもしれないし…増えないかもしれない。少なくともレオナやルアやウニクラスの仲間はできないかな?」
「あっ、そーなんだ。」
「まぁ、多少実験も兼ねてるからな。」
俺はレオナの質問に答えながら、デイリーガチャをタッチする。すると…俺の目の前に灰色のマーペント先生が現れる。
ふむ…俺の移動に平行して付いてくるな…
俺が考察していると後ろのウニから声がかかる…
「センヤ様、ガチャをなされるんですか?」
「ああ、ちょっと実験も兼ねてな。これは出現させた状態で俺が移動するとどうなるかの実験。次は…レオナ、触れるか試してみてくれ。」
ウニの問いに答え、レオナに指示を出す。ルアだけは状況を理解できずに「ガチャ?」と首を傾げている。
「うーん、触れないねー。」
レオナの手はマーペントをすり抜けてしまう。
ってことは本当に俺にしか触れられないのだろう…これで安心してスキルを使うことができる。
俺はマーペントのレバーを回す…出てきたカプセルの下の色は無色、つまり道具だ。
俺がカプセルを開けると、カードが出てくる
種類:道具カード★1
名称:薬草
説明:食べることで体力を回復することができる。場合によっては傷口に直接使う方が効果が高いことがある。
おお!初心者テンプレアイテムだ!
俺はカードをタッチして、薬草を物体化させる。
ウンウン、思ってた通りの薬草だね。
カード状態では色や形状は確認できるが、重さや匂いなどはわからないため物体化する必要があったのだ。
「!!!???」
「すごーい!薬草が出たー!」
レオナは素直に驚き感想を述べ、何も知らないルアはすごく驚いている。ユーガに「ちょっとユーガ!センヤのとなりに行って頂戴!」と指示を出す。
「ちょっとセンヤ!今のどういうこと!?急に石像が出てきたと思ったら口から変な玉を出すし!変な玉を出したと思ったらセンヤが割って中からカードが出てくるし!そのカードをセンヤが触れたかと思うと薬草が出てきたのよ!?」
ユーガに移動してもらい俺の横にきたルアが質問攻めをしてくる。
「あれは俺の【不明不定箱】っていうスキルだよ。何が出るかはわからないけど、必ず何かは出る…そして今回は薬草が出たってわけ。」
俺は簡単にルアに説明する。それでも、ルアは完全に理解をできていないようだ…
「じゃあ実際にやってるとこを見せてやるよ。」
俺は画面を開く。大きさはルアが見やすいように少し大きくした。
「これがホーム画面で、ここから色々選択できる。例えば、このカード一覧を選択すると…このようにルアのステータスも見ることができる。」
俺はカード一覧のアイコンをタッチしていく…キャラクターカード、ルアのアイコンと進めていき、ステータスを表示させる。
「!?…すごい!これはすごいわ!!」
「こんなこともできるんだねー!!」
2人とも驚く…特にルアは感動している。
俺はホームまで戻り10連メダルガチャまで項目を進める。
「あれはあくまでスキルのサブ機能に過ぎない…メインの機能はこのガチャにある。」
「ガチャ?さっきセンヤ達が言っていたやつね…」
「そうそう。じゃあ今からガチャをやるからな?」
俺は10連メダルガチャをタッチする。目の前に黒色のマーペントが姿を現す。
「これはさっきの…あれ?マーペントねこれ。」
「知ってるのか?」
「基本的に私に知らない海の魔物はいないわ…」
「じゃあ、海の魔物なんだなマーペントって」
「ええ。確か…出会う者がいた時、マーペントの体色によってその者の運勢が変わると言われているわね。」
「なるほどな…」
まさしく、ガチャのモデルにはピッタシってわけだ…
「ねぇーセンヤ?マーペントちゃんの色がさっきは灰色だったのに今度は黒だよー?」
レオナは気づいたようだ…。
「ああ、出てくるレア度によって色が変わるんだ。」
俺はルアとレオナに色の違いについて説明する。ついでに1回ガチャを回す。
出てきたのは…上が白色で下が茶色だった。
「ってことは…上が白色だからレア度は2でー」
「下は茶色だから…装飾カードってことね?」
「2人とも正解だ…」
俺はクスリと笑うとカプセルを開ける。中からカードが出てくる。
種類:装飾カード★2
名称:鉄の腕輪
説明:装備者の防御を+5。装備制限なし。
「これが…さっきのカード状態なのね?」
「そうだよ。そしてこれをタッチすると…」
目の前に物体化した鉄の腕輪が現れる。
「すごいわね…このスキル…」
ルアは鉄の腕輪を手に取る。
「装備してみてもいいかしら?」
「いいぞー。ちょうど他の人が装備できるか確認したかったしな…」
ルアは装備する。
「あっ本当にステータスが上がってるわ!」
「そりゃ良かった。」
これで売ろうと思えば売れるな。とりあえずカードにするか……あれ?
「カードに戻らないな…ルア、装備を外してみてくれないか?」
「わかったわ…」
ルアが装備を外しても戻すことが出来ない…
「うーん…あっ!もしかして…?」
俺はカード一覧からペリュートの指輪を確認する。
「やっぱり、あった…」
おそらく盗難防止のためだろう…保護モードの機能があったのだ。これを選択していたらカード化できるのではないだろうか?
俺の考え通り保護モード状態のペリュートの指輪をルアに装備してもらったが、その状態でカード化することができた。
え?てことはこの機能があれば…
「お店に売って後から回収とかできるんじゃね?」
「…そうね。」
「…そうだね。」
「…そうですね。」
俺達4人に沈黙が訪れる。
「一応、確認するけど…犯罪か?」
「犯罪ね。」
「犯罪だね。」
「犯罪です。」
「あー…じゃあ止めとくか。」
犯罪ダメ!絶対!
犯罪はダメですよー。私はネカフェでバイトをしていたことがあるのですが…飲食物の持ち込みが禁止で、利用規約にも同意した上で会員証を作ってるに飲食物を持ち込むお客様と戦う日々でした…。一番衝撃だったのが、その注意した行為をクレームとしてメールで報告された時は何とも言えない気持ちになりましたね…。