第50話 これからは少し気楽に生きよう
うーん...2章の終了が国王の即位までと考えていたので一応終わりですかね??
「それではここにセグルス・ボーシュリクスを新たな王として即位することを認めるっ!!」
ウオォォォォォォォォ!!!!!!
魔法道具により前国王であるノルディンのそんな声が拡散されたかと思うと...次の瞬間にはまるで地鳴りのような大喝采が街中を包んだ。
「ふむ...凄まじい歓声だな」
そんな人々の様子を建物の屋上から見下ろしていたノエルが予想以上だったのか少し驚いたような顔でそう言う。
「国民からの人気があるんだろ。俺も実際に会ったことがあるが民のことを考えたカッコいい人だと思ったしな」
「ほう...センヤがそう思うような人物がこの世界に存在していたのか」
ノエルは俺の言葉を聞くとこれまた少し驚いた表情でコチラを向きながらそう言ってくる。
「お前は俺を何だと思ってるんだ...基本的に歳上の人は敬うスタンスだぞ俺は...ってか俺みたいな日本人は皆そういう社会で生きてるんだよ」
「そうか...い、いや、センヤを見てると少しな...」
おい、あからさまに視線を逸らしながら話すのはやめてもらおうか。
普通に考えてそういう社会の中で16年も生きていれば自ずと自分もそうなるというものだろうに...いやまぁ確かにこの世界の来てから常識外れの行動をするような輩を多々目撃して、そういう風に考えようと思うことが少なくなったのは否めないが...それでもあの新旧国王もそうだがクレイドさんやケイトさんなんか頼れると思うような立派な大人達もいるわけで、そういう人達には敬意を持っているのもまた事実である。
事実ではあるが…
「はぁ.....まぁ、ノエルの言いたい事も分かるよ。実際そういう風な態度を取っているのも事実だしな」
屋上にある鉄柵に腕を乗せ俺は苦笑しながらノエルにそう言う。
この世界に来たときは当然この世界の知識がなく、アニメやゲームなんかの知識を頼りに行動してきた。実際ギルドに行った時になめられないように言動を変えたが...今では違和感なくそれで話すことができている。
「.....私がこうしてこの世界を謳歌できるのはセンヤのおかげだ。だからお前に命令されたことなら何だってしよう...ああ、もちろんこれは私の私情も含まれている。私はお前のことを好いているからな...」
ノエルも俺と同じように鉄柵に腕を乗せそう返す。
「ハハ、ストレートに好意を伝えられると何て返したらいいか困るな...とりあえず、ありがとうと言っておくよ」
「...私は今のように仲間内で気兼ねないように話すセンヤの方が好きだ。お前が仲間内以外でどうして言動を変えているかも知っている...だが、私は今のセンヤの方がとてもセンヤらしいと思う。確かに私はウニやルアに比べれば...というより全然新参者ではあるが…今のセンヤの方が良いと私は思う」
大歓声が聞こえる。だが、人々の声ではなく俺の耳にはしっかりとノエルの言葉が届いている。むしろ、次第に歓声が消えていきノエルの言葉だけが溶け込むように俺の耳に響いていた。
今の方が好き...か.....
万事屋を設立した今、俺という存在は確かなものとなった。新旧国王やオルドリックも俺という存在を認識している。つまり確実にこの世界に少なからず影響を与えているということだ...
そこまで考えて俺の脳裏に浮かんだのは半年前のギルドの一件。俺はこういう人間だと周囲に知らしめた結果、男性からは信頼を女性からは軽蔑を得ることとなった。
もう一つ思い出したのは母であるケイトさんが生きていたと知った時のメルトとのやり取り。あれは寝起きのせいもあってか1番というよりも、ありのままの素の俺だった。
確かに気が楽だった.......となれば答えは一つか.....
俺は何かをほぐすように思いっきり伸びをする。
そして...
「わかった。これからは俺らしく生きることにするよ」
とノエルに明言する。ノエルも俺の行動と言葉に満足そうな笑顔を見せてくれた。
「よし、それじゃあちょうど凱旋も始まるみたいだし…俺達も移動するか!」
気づけば即位式が終わりこれから特別な馬車に乗り凱旋を始めるところだったので俺は笑顔でノエルにそう告げる。
「了解した!」
ノエルは元気の良い返事で答えてくれた。
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「結局、平穏に終わったな...」
あの後、新国王達を乗せた馬車は街の中を回ったのだが...何事もなく無事に終わることができたのだ。
「平和なのは良いことです。それに今回何事もなく無事に終えることができたのはセンヤ様がウェルナ様の窮地を救ったことに他ありません!」
「ん...?」
自宅に戻りやるべき事を終え、パーティに向けた服に着替えた俺は食事の際の長テーブルに肘をつき、そんなことを零したのだが...声が聞こえたのでそちらに振り向くと...
「ここは天国だろうか…」
色とりどりの衣装を身に纏い、ところどころに装飾品をつけて見栄えをよくした美少女達がいた。
パーティに出席するのだから少し化粧もしているのだろう...彼女達がいつもよりもとても魅力的に感じ、俺は自然にそう言葉を零していた。
「エヘヘ...どう?似合ってる??」
薄い黄色のドレスに身を包んだレオナが代表するかのようにそう聞いてくる。と同時にそのレオナの言葉で俺が彼女達の姿に見蕩れていたことというを認識する。
「ああ...皆とても可憐で...綺麗だ...」
俺の言葉を聞いた女性陣が仄かに顔を赤らめるのだが...その表情や照れ隠しの仕草がより一層彼女達の魅力を引き上げる。
「ハハ...本当、俺には勿体ないくらいだ...」
そんな彼女達を見て、ついついそんなことまで口にしてしまい…
「「「「「「「センヤ(様・さん)!!」」」」」」」
という言葉を筆頭に女性陣から様々な言葉で怒られるハメとなった...
いやだって...つい半年前までただの高校生ですよ自分?彼女だっていなかったし、そんな自分に自信を持てという方が無理がある..
「ハハッ、センヤが土下座をして怒られてるよ」
「まぁどうせまた何か本音を零して怒られたんだろ?」
「はは...苦労してるんだな…」
「.....」
と俺がDOGEZAをしながら有難いご指導を受けているとそこに俺と同じような軽めのパーティ用の服装のジーク、ネビロス、オロチ、スネークが現れる。
「うるせぇよ!ネビロスの言う通りだよっ!!」
俺はズバリ言い当てられた悔しさもありそう言葉をまき散らし、それを聞いたジークがまた楽しそうに笑う。
くそっ...とりあえずジーク、お前は後でグーチョップな!
俺は女性陣に怒られながらもそう決意した。
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「それで?アレはもう終わったのか??」
パーティ会場へと向かう馬車の中、ネビロスが俺に訪ねてくる。
現在俺達は複数の馬車に別れ、パーティ会場へと向かっている。俺の乗っている馬車には俺、ジーク、ネビロス、オロチ、スネークが乗っている。
「ああ、無事に...っていう言い方もおかしいな?まぁなんせ終わったよ」
俺はネビロスにそう言葉を返す。
「へぇー、でもそう考えると...つくづくセンヤの固有スキルって異常だよね」
「確かに、俺もいまだに信じれない...まぁ俺がここにいる時点で信じれないことは起こってんだけどな...」
「って言ってもこれが俺の能力だしな…」
ジークとオロチがそれぞれそんな言葉を言ってくるが...俺も2人に対しそう答えることしかできない。
というのも俺がやったのはレベル上げ、スキル習得、スキル強化の3つである。
この半年間の間に培ったものを使用したに過ぎないのだ。
「それに俺も含め自軍が強くなることは決して悪いことじゃないだろ?」
「そうだな、それに対しては肯定する...ただ問題は過程の話だ。お前、相当素材使っただろ?それこそあの特殊なダンジョンで集めた素材のほとんどを使ったはずだ」
ネビロスが言う特殊なダンジョンとは半年前に俺達の環境を劇的に変化させることとなったアビスの対価の代償事件のことである。そしてそのダンジョンで入手した素材を使ったのだが...ネビロスはそのことを問題視しているらしい。
「といってもな...あんな得体の知れないもの買取すらしてくれないぞ?まぁ、だから俺は有効活用すべく強化素材として使ったんだけど...」
そのダンジョンで入手できた素材は『よく分からない皮』や『よく分からない牙』など使いみちに困るものしか手に入らなかったのだ。しかもそれが獣型、鳥型、人型関係なく統一されてドロップされて文字通りよく分からないものとして腐っていたのだ。
オルドリックに実際に見せたりもしたのだが見たことも聞いたこともないと言われ扱いに困っており、強化素材としてのポイント量も多かったので素材として使うことにしたわけだ。
「それにほとんど使ったけど全部じゃない。お前に渡した分の他にも少しは残ってるからいいだろ?」
「はぁ...まぁ、過ぎたことは仕方がないか…」
とまぁ、最終的にはネビロスも納得してくれた。
という訳で次回、パーティの話から3章となります。流れ的にはパーティ終了→ウェルナは学園に=センヤはどうするの??って感じです。
あと、それに伴い作中でも書いてる通りセンヤの言動や行動が変化する場面もあると思いますので...ご了承ください。




