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ガチャで俺は最強になる  作者: 青藤清也
第2章 ガチャで俺は最強になれる?
51/85

第46話 私は彼女の友達です。

お陰様でブックマーク500件と総合評価1000point達成しました!

...いや、実際マジで驚いてます。

 

 私の名前はウェルナ・ボーシュリクス。本来なら今ごろジョーダー学園というこの世界最高峰の学舎で授業を受けているはずなのですけれど...お父様がお爺様から国王の座を引き継ぎ、新国王となる式典に参加するために久しぶりに帰省する筈でしたの...


 それが...


「ウェルナ姫...アンタも王族に生まれて災難だったな...悪いがお国帰ることはできねぇ...まぁ自分の運が悪かったと諦めてくれ」


 私の向かいに座る男が私に向かってそう言う。口では悪いと言ってはいるがその表情は笑っており、それが表面上のことだと分かるのが腹立たしい。


「アニキ、まだダメなのかよ…俺もう我慢の限界が...」

「慌てるな...ここはもう海上なんだ。ただまぁ...確かにそろそろ良いかもしれねぇな…」


 そのアニキの言葉に周りにいる複数の男達が私のことを見る。正確には私の体を値踏みするかのように見てくるのです。

 この、ねっとりとしたような視線...正直気持ち悪いです。


 それに...怖い。


 これから自分がされること...それを想像すると体の奥から震えてしまう。それを悟られないようにプライドを全力で保とうとするけれど...もうそろそろ限界みたいです…


 諦めてしまったのか、どうやって逃げ出そうか考えていた思考はいつの間にか事後の後のことを考えてしまっていた。

 しかも...無意識に私は帰ることが出来たらと想像していたのは...祖国ボーシュリクスではなくジョーダー学園だったのだ。


 もし...私がもう一度...あの学園に戻ったら...皆様はどんな反応をするのでしょうか...?


 きっと口では私を励ましてくれたりするのでしょうけど...きっと裏では憐れむ話のネタで持ちきりになり、私に何かある度に変な空気になるのでしょうね…もしかしたら気味悪がられるかも知れませんし...


 そこまで私は考えるが、後ろ向きな考えは良くないと頭の中で首を降る。だがそれでも1度想像してしまったマイナスのイメージは消えてはくれなかった...


 でも...アイス...勇者組の方達は変わらずに接してくれそうなのが救いですわね...


 そんな時にふと頭に浮かぶイトウやアイスといった勇者組の顔ぶれ。その顔を思い出すと彼等だけは変わらずに接してくれるイメージしかわいてこなかったのだ。


 そういえば…イトウやユノも小さい頃、命の危機に瀕したことがあると仰っていましたわね…確か...その時に救ってくれた英雄みたいな存在が...イトウ達が探していた友人...カトウ・センヤさんだと...


 窮地を救ってくれるなんて英雄そのものだ。ユノやイトウが左右も分からないようなこの世界でそれでも探していたのはそういう訳があったのだ。


 それは...ユノがあんなになってしまうのも仕方ないかもしれませんね…...


 英雄さん...私の前には現れてくださらないないのですか...?


 少しの時間が過ぎるが何も起きない。心の中で祈ってみても結界は何も変わらなかった。


 わかってます…わかってますわ…


 涙が流れるのを必死に堪える。どうしてこんなことになったのかと後悔する。


 身につけていた衣服を脱ぎだした男達を見て私が...


 運命を呪いかけたとその時...


「キャッ!」


 バキバキバキッ!!


 と私の背後の壁が壊れたかと思うと...そこから手が伸びてきて私のことを捕まえる。


「悪いがこの人を返してもらうぞ?」


 そしてそう言うとグッと私のことを引っ張ってくれて...私はいとも簡単にあのオリから抜け出すことができたのですわ…



 とても若い方でした…それこそ私と同い年くらいにしか見えない男性。髪は青みがかった黒色で風に揺られてなびいている。

 だが同い年くらいにしか見えないその男性は、まるでいくつもの歴戦をくぐり抜けたような雰囲気を放っていて、男性に抱えられている私に安心感を与えてくれます。

 その雰囲気と私の窮地を簡単に救ってくれた行いに真っ先に頭を過ぎったのが...


 英雄


 先ほど考えていたこともあってか、真っ先にその言葉が頭に浮かんだ。そしてトクン...と静かに私の心の奥で音がした気がした。


 まっすぐ帰路を見つめる男性...その横顔を見ているだけで…その表情を見ているだけで…私の胸が熱くなっていくのが分かった。


 わ、私...今...彼の腕に抱かれていますのよね…?


 チラッと視線を下に下げると私のことを落ちないようにしっかりと抱えてくれている彼の手があった...

 そしてその現実を理解するとカァーッと急速に顔が赤くなってしまう。


 ど、どうしましょう…ドキドキが止まりませんわ…


 バクバクと鳴り止まない心臓に私が頭を悩ませていると...


「おー...綺麗だなぁ…」


 そんな彼の言葉が耳に入り、くるりと180度回転する。そして先ほどとは違い瞳をキラキラさせる彼に思わずまたドキッとしつつ...彼が何を見ているのだろうと私の捕らえられていたオリの方角に顔を向けると...


「綺麗...」


 そこには丸い夕日があり海がキラキラと煌びやかに光っていた…


 静寂な時の中...その夕日を見ていると先ほどまであった心臓の高鳴りが小さなものになっている事に気づく。


 そして...


「貴方様のお名前は...何と言うんですの...?」


 私は噛んだりしないように気をつけながら意を決してそう言う。

 彼の顔が夕日からコチラに...私の顔を見る。あの綺麗な夕日よりも私のことを見てくれた、選んでくれたという事実につい嬉しくなってしまうのだが...それも束の間の感情で彼が私のことを見ていると認識し彼の顔がそこにあるという現実はまた私の胸の高鳴りを大きくさせてしまう要因となってしまう。


「俺の名前はオーシャン・セ...」


 彼は名前を言う途中で黙ってしまい、なにか迷っているような表情を見せる。それに気になった私は【鑑定】のスキルで名前を確認してしまう。


 オーシャン・センヤルド


 そこには今まさに名乗ろうとした名前があった。


 フルネームで言うことに問題が...それとも仮名を名乗らないといけない...?もしかして...私のことを救ったのも何かの使命を受けていた...?


 そんなことを頭で考えながらも彼の何ともいえない表情にドキドキしていると…彼は、ふぅ...と小さく息を吐いた。


 その仕草と覚悟を決めたような表情から...彼が言葉を言うのだろうということが予測でき、ドキドキしつつも彼の言葉を逃さぬよう全神経を集中させ彼の言葉を待っていた...のですけれど…



 `俺の名前は【加藤(カトウ) 千弥(センヤ)】です...´



「えっ...」


 予想もしていなかった彼の言葉についそんなことを言ってしまう。

 言葉を聞き間違えた...?いやそんな訳ない、名前を聞き間違えないように全神経を集中させ彼の言葉に備えたのだから...聞き間違えるはずがないのだ。


 ということは.......


 私の頭の中に幾つもの記憶が蘇る。その記憶はどれも誰かと話している記憶...勇者組の面々達と対話している記憶だった。


 なぜなら...


『この飲み物美味しいですわね…』

『そうか?センヤがすげー好きな飲み物なんだよこれ』

『これも良く飲んでた...ほら?QRコードでランダムにアイテムが貰えたじゃない?』

『そうだそうだ!キャンペーンでやってた!』


 イトウ達の世界の飲み物をイトウとアイスと飲んでいたとき...


『ナツナ、リナ、バスケットって面白いですわね!』

『でしょー!ウチの学校って、(じょ)バスが強かったんだー』

『ナツ...それじゃあわからないって...ウェルナ、女バスってのは女子バスケットボール部の略称でね。女子バスケットボール部を女バス、男子バスケットボール部のことを(だん)バスって言ってたのよ』

『へぇー...男バスの方は誰かいませんの?』

『ウチのクラスだと...伊藤とガチャね』

『カトウ・センヤさんですか…?』

『そうそう...去年はナツの兄貴達と2つ上の先輩もいて男バスも強かったんだけど…』

『うん、今年は強くても来年はお兄ちゃん達いなくなるから...ちーくんとシュウちゃんだけじゃ厳しいかもね...』


 一緒にバスケットという運動になる遊びをしていたときのナツナとリナとの会話...


 そしてなにより...


『ユノ!そんなんじゃいつか体を壊しますわよっ!』

『止めないでよウェルナ。私は誰よりも強くならないといけないの…』

『すでにアナタはこの学年じゃトップ!上学年の方々にも遅れを取らないような存在ではないですか!なのにどうして!?』

『まだ1番じゃないからだよ…こんなところで1番になれないようじゃ...魔王なんて殺せない...』

『確かに勇者組であるアナタ達に国の上に立つ者達は魔王達を倒すことを望んでいます!でもそれは長い期間を見据えてのこと!でもそんな早急にアナタ1人だけが強くなることを望んでいませんわっ!』

『強くなることに早すぎること...それ自体に何の問題があるの』

『アナタのその後に問題がありますわっ!強くなったらアナタ...他の勇者組の方々が強くなるのを待たずして魔王に挑むつもりなのでしょう!?』

『そうだよ…皆に私みたいに努力することを...早く強くなることを強要するつもりはない...そんな権利、私にはないんだから...だから私は皆の分まで強くならないといけないの…だからウェルナ...そこをどいて』

『だが断るってやつですわっ!』

『アナタに私を止める権利なんてないでしょ!!』

『ありませんわっ!でもアナタを止めない権利も存在しませんわっ!!』


 そう言った瞬間、私の顔の横を斬撃が通り過ぎた。ユノが剣を抜刀して斬撃を飛ばしたのだ。


『どかないと...次は当てるよ...』

『どきませんわ』

『なんでよっ!!』

『この際だからハッキリ言わせてもらいますけど...私カトウさんのことを知りませんし...正直、イトウの言う通りもう死んでいると思ってますわ』

『...今...なんて...?』


 私の首に刃をたてられる。ユノが一瞬で間合いを詰め剣の刃を私の首にあてたのだ。


『カトウ・センヤさんは恐らく死んでいると言ったのですわ!』

『この世界の人間がセンヤの何を知ってるっていうのよっ!!』


 ユノは私の服の首元部分を掴みあげてくる。


『この世界の人間だから、この世界のことを知っていますのよっ!!』

『!?』


 私がそう言うとユノの力が弱まる。


『この世界に生まれ!この世界で育ったからこそ!私はこの世界の理不尽さを知っていますわっ!そんな中...1人でこの世界にやって来た同い年の男の子が生きているはずがありません!それくらいこの世界のことを...半年もの間探したのでしょう!?』

『そうだよ…だからセンヤはきっと魔王領にいて捕まって...』

『はっきり言って過酷な魔王領の中で生き延びているとは思えませんわ…仮に魔王に捕らえらたのだとしても勇者という危険要素を生かしておくはずがありませんわ...』

『でもそれはあくまでも確率の話!センヤがまだ生きてる確率だってあるじゃないっ!』

『ええそうですわね…確かにその確率もありますわ...』

『だったら...』

『でも私はアナタを止めますわよ』

『だからどうして!?』

『アナタが私の大事な友達だからですわよっ!!アナタが無謀に1人で魔王に挑み、命を散らせて欲しくないからですわっ!!』

『でも...勝つ可能性だって...』

『強くなった勇者組全員で挑んだ方が勝つ確率が高いに決まってますわっ!!』

『.....』


 カラン...ユノは私の襟元と剣の両手を離し片方に持っていた剣は地に落ちる。


『すいませんユノ...私はこれでも王女をやっています。ですから昔から何かを考え予測する時...確率を常に考えながら行動してきました。そして時には無常な判断をするときもあるのです。今のように【生きているか分からない会ったこともない男性】と【生きている私の大事な友達】どちらかの命を取るか確率で判断しています。そして私はアナタのことを選びましたわ...だって確率が高いだけでなく私への影響力もありますもの...』

『ずるいよ...私にはそんな考え方できないよ...』

『褒められる考えではありません…常に何かを切り捨てる考えとは…ただ冷酷なだけですもの...私はユノの考え方を羨ましいと...素晴らしいと思っていますわ...両方選ぶという選択が1番ですもの...』

『大人だなぁウェルナは...私と同い年には見えないよ…』

『ちゃんと17歳ですわよ!』

『ハハッ、わかってるって.....』


 少しの静寂が私達の間に流れ...ユノが落とした剣を拾う。


『それじゃあ...今日は訓練をやめるよ…友達にどうしてもお願いされちゃったからね…』

『その友達としては...明日からの過度な訓練もやらないでほしいのですけれどで...』

『えー...うんじゃあ少し減らしてあげるよ…委員長の立場もあるから他の人よりは頑張らせてもらうけどね』

『そうしてくださいまし...最近のアナタを見ていると心配で夜も眠れませんでしたから...』

『ハハッ、じゃあウェルナも早く寝ないとダメじゃん』

『アナタが部屋へと引き返すのを確認したら私も床につかせてもらいますわ…』

『そう?じゃあ早く部屋に帰らないとね』


 クルッ踵を返しユノは部屋の方へと向かっていく。だが少し歩いたところでユノは一度止まり...


『ありがとねウェルナ...正直ちょっと体が限界だったんだ...』


 そう呟くと部屋の方へ向かうため暗闇の中へ消えていった...



 ジョーダー学園での記憶。そんな出来事が走馬灯ように駆け巡り...やがて1つのものへとまとまっていく。


「あの...ばく飲みクリームソーダは好きですか?」

「好きです」

「男子バスケットボール部に所属してますか...?」

「しています」


 彼の答えに先ほどとはまた違う意味で心臓がドクドクと音をたてているのがわかる。そして私は最後の質問を口にする...


「それでは...アナタのクラスの委員長は...?」

「竜藤 柚乃。俺の小さい頃からの友達です」


 こんな事がありえるだろうか…いや、ありえてしまっていいのだろうか…


「私の名前はウェルナ・ボーシュリクス...リンドウ・ユノの友達です」


 気がつくと私はそんな挨拶をしていた...



本編で(.5話抜き)で丸々センヤ以外の視点で物語を書くのは初めてかもしれない...

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