第45話 今、会いに行きます
先に謝ります。前回、今回の話で彼女と出会うという話をしていたのですが…話の区切り上の感覚で時間の始めになってしまいました。お待ちになっていた方がいらっしゃいましたら本当にすいません…
「おいおい...大丈夫なんだろうな...」
俺は建物の屋根から屋根へと飛び移りながら大森林ロードの方を目指す。
「転移魔法...俺も習得した方がいいかもな…」
レオナが先ほど家の中で使った転移魔法『テレポート』は自分が視界の範囲ないなら瞬時に転移できる魔法である。高い所から見渡せばそれだけ遠くの場所へと瞬時に移動できる。
まぁ、その分移動しただけ魔力を消費したり壁などの障害物がある場合は移動できなかったりするが…外で使う分にはすごく便利な魔法だと俺は思う。
それでももう大森林ロードの入口にはやってきて、あとはこの大森林ロードの一本道を進むだけだ。
「あ、ちょっと」
背後に衛兵の声が聞こえたが無視して走り出す。今はそんなことに時間を取られてる場合じゃないからな…
かつてサイクロプスやゴブリンを倒した道を俺は駆け抜ける。
「クレーター...ってことは時間稼ぎか...」
道の途中に大きな穴を見つける。
結界が張られているので魔物の仕業でない。ということは人間による策略...おそらく土魔法によるものだろう。
まぁ、今の俺には関係ないことだけどな…
俺は地面を蹴りその大きな穴を飛び越える。ステータスの高さに加え【跳躍】のスキルを習得している俺には障害にならない。
穴を飛び越えた俺はそのまスピードを維持して道を駆けていく。目的地の出口への到着はもう少しだ。
「おい、大丈夫か?」
目的地へと辿り着き、そこで倒れた馬車にもたれかかった1人の男...おそらく馬車の操車であろう男に声をかける。
「これが...大丈夫に見えますか...?」
男は腹部辺りが血にまみれており、そこを抑えている。
大丈夫じゃないだろうが...すぐに死ぬわけでもないだろう。それは鑑定ですでに知り得ていることだ。
「じゃあ、これでも使ってろ」
俺は回復薬をポケットから取り出し男の腹部にぶっかける。すると傷が徐々に塞がっていき出血が止まる。
「これで大丈夫だろ?それでお前は誰に襲われた?名前はわかるか?」
「わからない...奴らは複数で馬車を襲って...それでお客様を連れていったんだ」
「そのお客の名前は?」
男は首を横にふる。
「悪いがそれは分からない...お客様の詮索はしないようにしてるんだ...ただお客様は久しぶりにボーシュリクスへ帰ると...見た目は10代後半くらいの女性だ」
うわ...マジでお嬢様かよ...
「どっちに行ったかわかるか?」
「あっちだ!あっちの方向に行った!!」
なるほど...向こうの方角か...
「お、おい!そっちは真逆の方向だぞ!!」
「お前もアイツらの仲間だろ?でなきゃお前が生きているはずがない」
「な、なにを言って!」
「俺を甘く見るなよ?お前を助けたのも仲間かどうかを判断するためだ、そしてお前の嘘は十分な証明をしてくれた。直にここに尋問のスペシャリストが来るから...まぁ、死なないといいな」
「なにを言って...がぁ!?」
男は体が痺れたかのように痙攣し始める。先ほど使った回復薬のもう一つの効果で速効性があるが一定時間後に体が強く痺れる効果を持っているのだ。
さて行くか...ここならもう...全速力でも大丈夫だろしな...
ドッ!
そんな音とともに俺は大地を蹴る。大地に少しばかりのクレーターができるが気にしない。これは人助けによる仕方のないものだからだ。
深青眼改...
俺は走りながらスキルを発動させ辺りを索敵する。
まずは見つけないとな…といってもあれからそう時間は経過していないし…すぐ見つかるはず.....コッチの方角に逃げたってことは...逃走に使うのは...船のはずだ。
俺はあらかじめ【周辺地図】を使って調べていた地形と【深青眼改】による情報を元に犯人達が逃げる方法について予測する。
そして...
「ビンゴ」
海岸に隣接された船を見つけ、さらにその船に乗り込む複数の人間達の姿を捉えた。
その中には遠すぎるため分からないが【天水眼改】を発動させると女性の人物も含まれていることが分かった。
船はすぐに出発してしまうが、それよりも俺の速度の方が早いため近づくにつれ【天水眼改】による鑑定の収集能力が上昇していき...
ウェルナ・ボーシュリクス
船に乗り込んだ人物達の中に目的の女性がいることがわかったのだ。
ただ問題は...
「こっからどうやって追いついたものか…」
海岸にたどり着いて敵の船が視認できるところまで来たのはいいのだが…移動手段がないということだ。【水歩】は初級なので3歩まで水上を歩くことができるスキルなので追いつくことができないし【水泳】スキルも習得してはいるが、こちらも初級並みの効力しか発揮しないので追いつくことはできないだろう…
うーん…どうしたものか……お!アイツがいんじゃん
頭を悩ませていた俺だったが解決策を見出し思わずポンッと手を叩く。
俺は【手札召喚】を用いて召喚を行う。
『お前は誰だ…俺に…何の用だ?』
鋭い眼光は俺のことを見下ろし、開かれた大きな口からは鋭利な牙がいくつも生えていて…そこにいるという…ただそれだけで凄まじい威圧感を放っており、纏っている雰囲気が脳と体そして本能へと危険信号を送っている。もしこれがゲームならアラーム音が鳴りっ放しの状態だろう…
蒼海竜シャーブリル…蒼と黒に包まれた巨体はそれほどまでに存在感を放っている。
「俺は加藤 千弥、呼び名はセンヤで構わない。お前を呼んだのは他でもない…あの船…あそこにある船まで俺を運んで欲しいんだ…」
『この俺を…そんなことのために呼んだのか?』
シャーブリルの瞳がより鋭く険しいものとなり俺を見る。
「嫌なら嫌で構わないさ…知りもしないで、そんなことと見切りをつけたお前の選択を…お前が後悔しないならそれでいい」
ピクリと一瞬表情に変化が現れる。
『…どういうことだ?』
「あそこには囚われのお姫様がいるんだよ…いいか…国を治める王の娘だぞ?助けた方がいいと思うけどな俺は…なぜなら1番歴史を変えることのできる存在って権力者だからだよ…」
『……』
シャーブリルは何も答えない。あれだけ鋭かった眼光は瞼を閉じ遮られている。
持って生まれた者と持たずして生まれた者、この両者には決定的な差がある。
これまでの歴史を振り返ってもそうだろ?日本史や世界史で学ぶ過去の戦において覚えさせられた人々の名は?戦国大名と呼ばれる存在達は豊臣秀吉のように全員平民から成り上がったか?
答えはNOだ。それが歴史だ。
だから…
「お前がお姫様を助けるのを協力してくれたのなら…お姫様を助けたドラゴンがいた…という歴史は今後とも語り継がれるだろうな……だからシャーブリル、俺に力を貸してくれ…」
『…いいだろう。センヤ、ともにお姫様を助けるぞ』
再び目を開きそう言うシャーブリル。その瞳は先ほどと打って変わり恐怖を感じさせなく、ただ力強さを感じさせるだけだった。
さらにシャーブリルは頭を下げ俺に頭上に乗るように言ってきたので俺は「ありがとう」とそう伝えシャーブリルの頭上に乗る。
うぉっ…おお!これは良い眺めだ!!
俺が乗った後に再びシャーブリル頭を上げる。ピンと張られ、そびえ立つように伸びた長い首。その上から眺める景色の良さに思わず感動する。
さらに…
「ハハッ!早いなシャーブリル!さすがだぜっ!!」
シャーブリルはその巨体に似合わないスピードで船を追いかけ始める。
『俺は海を総べる竜の一角だぞ?これくらいは当然だ!』
そのスピードは本当に早く、ものの数分で船へと近づくことができた。
安心しきっているのか甲板には誰もおらず、このドラゴンの接近に気づいているものはいなかった。
【天水眼改】&【暗視探知】…
俺はスキルを使い外から船内にいる人間達の正確な位置と情報を割り出す。
さてそれじゃあ...返してもらおうか...お姫様を...
今回話が短い分は次回の話で増量させていただきますのでよろしくお願いします。




