第44話 彼等もきっとそうだったのかもな…
すいません...物語が進むのは次回からになりそうです。
「ほ、本当に大丈夫なんだよね…?」
未だ警戒しまくりのレオナ達。レオナが代表するように聞いてくる。
「大丈夫だよな?」
『...大丈夫』
「ほら大丈夫だって言ってるんだからさ...それにそろそろ信用してやらないとユウトも可哀想だろ?」
「それは...そうだけど.....うん!もう決めた!私はレオナ!よろしくねっユウト!!」
レオナはコチラに歩みを進め意を決してユウトの前でそう言う。
『レオナ...よろしく...』
ユウトの対応にレオナも緊張を解く。
するとそんな2人のやり取りを見てアロエとセンも近づいてきてユウトと互いに挨拶を含めた自己紹介を交わした。
「俺だけ蚊帳の外だな...いや、レオナ君達が普通に接しているから大丈夫だってのは分かるんだが…それでも会話が分からないってのは不気味だな」
「じゃあお前も俺の配下になればいいだろ?」
「いやいや配下じゃなくて奴隷だろ?嫌だよ奴隷になんかなりたくないさ」
俺の固有スキル【真不明不定箱】による新たに追加された能力、レオナ達のように召喚した者達・奴隷同士なら俺が召喚した魔物でも会話ができるようになった。
なのでレオナや奴隷のセンもユウトと会話することが出来るようになったのたのだが...オルドリック支配下にないのでユウトの会話が聞こえないのである。
「じゃあ、諦めてくれとしかいいようがないな」
「うーん...センヤ君の不思議スキルでなんとかなったりしないの?」
「しないな。少なくとも現状では無理だから諦めてくれ」
「そうか...じゃあ仕方ないか...っとそれじゃあ俺はそろそろ行くよ」
軽く笑いながらオルドリックは席を立つ。
「お姫様のお迎えか?」
「いや、それは俺の仕事じゃない。明日パーティーがあってそれに招待されてるからね、その準備さ...立場上警備等の確認もしないといけないしね」
「さすがギルドマスターさん大変ですねぇ...ってあれ?考えたらオルドリックってそこまで働いていたか??」
ギルドマスターって忙しいイメージがあるけどオルドリックって基本ヒマしてるような...
「ウチには優秀なギルドマスター代理を務められる者がいるからねぇ...基本的には一任してるんだよ」
あぁ...ミレーネに任せてんのか…。確かにオルドリック不在の中でも代理として十分役目を果たしていたしな…
「じゃあとっとと帰って役目を全うしろよ」
「はは...手厳しいなセンヤ君...それじゃあ失礼するよ...あっ最後に1つ聞きたいんだけど…」
「なんだ?」
「明日のパーティー、規模は小さいから大丈夫なんだけど...念のためセンヤ君が警護に来てくれたりは...」
俺がオルドリックと護衛の約束をしたのは国王の授与式とその後のパレード、夜に盛大に行われるパーティの間である。王女様帰還を祝うこじんまりとしたパーティまで警護する必要はない。
「まぁ、警護はしないけどパーティーに出る分にはいいぞ?噂の王女様達も見てみたいしな」
「本当かい!いやぁー助かるよ」
「俺は警護をするわけじゃないぞ?パーティーに出るってだけで...」
「大丈夫さ。なんせパーティーの同行者にミレーネ君とマリン君を連れていくからね。君はマリン君が危険な目に合うような事があればそれを防ぐだろ?つまり必然的に荒事を抑えられる」
コイツ...コイツマジか.....保険かけてやがったぞこの男はよ…
「...そしたら後で行くよ...ってアレか?一緒に行かないといけない感じになるのか??あと他に連れてってもいいものなのか?」
「そうだね...パーティーには一緒じゃないと入れない。それとセンヤ君も俺の付き添いという形になるから...悪いけど連れてはいけないな」
なるほど...俺以外のメンバーは誰も行けないのか…
「だったら行く必要はないな…誰もいない中で他の歳の近い女の子に合うと...ちょっとな...それにパーティーは皆で楽しみたいし派なんだ。だから当初の予定通りパレード後の警備を兼ねたパーティーにだけ出席させてもらう...マリンには悪いがもし、危険な目に合うことになってもお前が守ってくれるだろ?」
「うんまぁ...そうなるよね...はぁ...じゃあ俺だけでなんとかするか...」
「頑張れギルドマスター」
俺の他にもレオナ達が労うような言葉をオルドリックにかけるとオルドリックは苦笑しながら「頑張るよ」とだけ言葉を返して帰っていった。
「センヤさん...私達に気にしないで行ってきた方が良かったんじゃ...」
オルドリックがいなくなった後、アロエがおずおずといった感じで聞いてくる。
センは休憩を終え仕事に戻って行ったためこの場には俺とアロエとレオナとユウトだけとなる。
「うーん...こういうことをあんまり言いたくないんだが…王女様達って...やっぱ王族なだけあって可愛いらしいんだわ…」
「それが...どうしたの?センヤって可愛い娘好きだよね??」
「大好きだ!」
レオナに聞かれ即答する。
そこは否定しない、むしろ大肯定させていただく。
「だったら...というかセンヤなら実際マリンがいなくても守ってたでしょ?王女様達のこと」
「ですね...センヤさんは女の娘が危険な目に合うと助けてくれますから...特に可愛い娘ならなおさら...」
レオナとアロエが言うように実際問題、マリンがいなくともパーティーに行っていれば自然と王女様達のことは護衛することになっていただろう。
初めの方にも言ったが王女様達を拝見したいというのも本音である。だって男の子だからね仕方ないね。
「そうなんだけど…ほら...俺の周りには既に可愛い娘達がいっぱいいるから...その上で誰かいるならともかく1人で会いに行くっていうのはちょっと...」
言ってて自分で恥ずかしくなってきた。顔が赤くなっていくのが自分でわかる。
「.....」
ほら2人とも顔だけ赤くして何も言わないじゃん!ちょっと変な空間が完成するじゃん!だからあんまし言いたくなかったんだよ!!
結局その後その空気に耐えられなくなった俺は逃げるように屋敷を飛び出す。
「やっぱああいう事を言うのは照れるなぁ…」
今俺がいるのはジャバリパ大聖堂という建物にある塔の1番てっぺんにいる。ここは以前見つけた穴場で滅多に人が来ない。
周りを一望できるだけの景色があるのに大聖堂というのが抵抗を感じさせるのか、それとも知らないだけなのか他に人がいるのを見たことがないのだ。
だから何か考え事をしたりする時俺はここに足を運ぶ。
俺は現役高校生であるが今まで彼女がいたことがなかった。フレンドリーな男友達や先輩に恵まれ、竜藤や四ノ宮姉妹という昔から親しく付き合いのある女性にも恵まれていたため...彼女が欲しいと思ったことは多々あってもその為に努力しようと何かしたことはなかった。それ以上に興味の持てるもの、楽しいと思えることがあったからだ。
「それがあそこら辺に転生してきてこの世界にきてウニに出会ってレオナとルアに会って...」
俺が見る方角には大森林に囲まれていてその先には盛り上がった地形が見える。両端にいくにつれどんどん崖のような地形が形成されているのでこの方角から陸路でここに来るにはあの坂道を通らなければ行けないということが見てわかる...
そう、もう一つここを気に入っている理由。むしろこれが1番なのだが…それは俺がこの世界に来てからこの国に来るまでの道のりを一望できるからだ。
「それが一変して美少女に囲まれた生活に...しかも好意を抱いてくれる娘達が沢山いてその娘達と関係まで築いてるもんなぁ…」
自分でも時折思い出しビックリするのだが…まさかこんなことになるなんて思っていなかった。
「本当...どこのラノベの主人公だよ…」
今俺はとても幸せで毎日が楽しい。その分考えること、考えてないといけないことは増えたし苦労しないといけないこともあるけど…それがこの幸せに繋がるならとあまり苦には感じなくなった。
多分ラノベやアニメの主人公達もこんな気持ちなのだろう...変え難いものなのだ、これらはきっと...
俺の【深青眼改】で見た視界が転倒した馬車の姿を捉える。それを見た途端フラッシュバックしたかのようにオルドリックとのやり取りが頭の中を駆け巡り、最悪の可能性が瞬時に導かれる。
だから...俺の幸せを守る為なら...何だってやらなくちゃって気持ちになるんだよ...
俺は塔のてっぺんを蹴り空中に身を投げる。
全ては俺の未来をグッドエンドへと繋げるために...
次回、ついに彼女と出会います。




