第40話 もっとお金を稼いでみよう
予定日を守れた良かった。
昼間から男4人が店の中で号泣するという...何も知らない人達からすれば、え?この人達ヤバいんじゃない??と顔を背けられそうなことになったわけだが...
その後エジルに「俺に出来ることがあれば何でも言ってくれと!」と力強い言葉を言われたので今後、建築などをした際に手伝いや相談なんかをしてくれるようにお願いした。
クレイドさんやトリスさんも店を経営する中で耳よりな情報を手に入れたら教えてくれたり、お店の経営などの相談や俺の家の手伝いをしてくれると約束してくれた。
特に一番嬉しかったのが俺が冒険者らしからぬスキルを習得したいなら知り合いの農業者などの冒険者とかけ離れた職業の人に掛け合ってスキルを習得できるようにしてくれると言ってくれたことだった。
「最終的には食料や資材の供給・運営を自分達だけで行えるようにしたいとは思ってるんですけど…」
口調が柔らかくなったのはトリスさんとクレイドさんがいるからだ。別にこの話し方も苦というわけではなく、現代社会日本を生きてく上で歳上の人を尊重するというのは根本のようになっているので当然、高校生の俺もそこら辺を理解して過ごしてきたので自然と身についている。
なので早速、自分よりもこの世界を長く生きてきた彼等に相談させてもらっている。
ちなみにクレイドさんはアリンを1度家に送り届け、妻のシーナさんに許可を貰った上で戻って来てくれた。シーナさん自身もむしろ行ってきなさいというようなことを言ってくれたらしく、俺は心の中でシーナさんへ感謝の言葉を述べた。
「確かにセンヤ君達だけでそれを行うことができれば...実に安定したものとなるね」
「そうだね。食料問題...例えば魚なんかの仕入れも自分達で賄えるのならクレイドの言うようにいつでも安定した供給ができることになる」
「ハハッ!やっぱセンヤはおもしろいことを考えるな!最高じゃねぇかその考え、建物の建築なら俺もいつでも力を貸すぜ!」
3人とも俺の考え自体に異論なんかはないようなので内心ホッとする。
「だったらもういっそのこと、そういう商業的な組織を設立したらいいんじゃないかしら?」
そんな中ケイトさんがそんなことを言い出す。
そのケイトさんが言うには...もういっそそういうお店を経営してみればいいのでは?とのことだった。
ケイトさんはこの中で1番俺という存在のことを理解している立場にある。つまり俺のメンバー達のことも一番理解しているということだ。
ケイトさん曰く、俺の仲間達はレベルの高い者達・強者が多い、だからこそ安定した資金は確保できる。
その資金を使って奴隷達を購入して組織力を上げていくのが今までの俺の考え方である。
それならばいっそ様々な物資を供給する商業を始めてみては?というのがケイトさんの考え方だった。
クレイドさん達の知り合いを抱き込み協力してもらい、それを主軸とした各方面の物資...野菜・果物などの農業、魚類・貝類などの水産業、鉱石・鍛冶などの工業、伐採・建築などの林業などなど...多方面に対して展開できる総合的な事業を始めればいいとのことだった。
この仕組みは素晴らしいものだが、実はこれができるのは簡単ではなく俺のような者でなければできないらしい...
というのもこの世界では素材の仕入れですら難しいものなのだ。なぜならこの世界には魔物というものが存在しいつも危険がつきまとう。
地球のように便利性・合理性を追求し、なおかつ安全性にも考慮された機会が発達・存在していないこの世界ではそれはとても一筋縄ではいかないことだった。
鍛冶屋や服屋なんて、どうしても必要な素材が存在する時なんて冒険者ギルドに依頼するなんて日常茶飯事のことで失敗することもあるので仕入れ日は未定、それがレアなものであればあるほど難しくなる。だが...高レベルの者が少なからず存在し、俺のガチャガチャや奴隷を購入・育成でそういった者達を増やせる環境にいる俺なら安定した素材の供給ができるのだ。
これなら資金がさらに貯まりやすくなる俺も喜び、宿屋や喫茶店の食材を仕入れるクレイドさんやトリスさんも喜び、建築に必要な木材などを仕入れる必要なエジルも喜ぶという...なんとも素晴らしい仕組みが成り立つことになる。
このケイトさんの話を聞けば聞くほど男4人も真剣な顔になり...話が終わった時にはケイトさんのことを崇めるようになっていた。
さらにこうしてはいられないとクレイドさん、トリスさん、エジルは喫茶店を飛び出し知り合いの各職業の者達を集めてきて...改めてケイトさんや俺を交えて話をする。
話が終わった時にはその者達もケイトさんを崇めるようになり、中心となる俺という存在も大変歓迎され喜ばれることとなった。
酒屋を経営してるイグドという男が「これは祝うしかねぇ!」と何人かを連れ店に戻り大量の酒を持ってきそうになったので、どうせ宴会をやるなら広いところの方が良いと思い俺が屋敷で宴会をすることを提案してみたところ、皆から大喝采とともに喜ばれ俺の屋敷で宴会することになった。
俺はすぐさまパーティチャットで家にいる者達にそのことを伝える。
その後、俺の屋敷の場所を伝えると酒屋組は酒を取りに酒屋に向かい、八百屋組や肉屋組は食材を確保するために急いで喫茶店を後にする。
クレイドさんも美味い料理を作るとやる気を見せたので、どうせなら家族皆を連れて来たらと俺が提案すると...クレイドさんは嬉嬉として喜び「レナードと最高の料理を作ってやる!」と店を飛び出していく。
エジルも「俺も家族を呼んでいいか?」と聞いてきたのですぐにOKと答える。
というか俺の屋敷の庭でやれば全然余裕だなと思い、どうせならと皆家族を呼べばいいんじゃね?と思い付き、そのことを残っている他の者達に伝えると嬉嬉として喜び先に食材確保にいった連中達にも伝えてくるとエジルとともに店を飛び出していった。
残された俺とトリスさんとケイトさんもある程度の料理や準備はしていた方がいいという話になり急ぎ俺の屋敷へと向かうこととなった。
屋敷に辿り着くと庭には既にいくつものテーブルや椅子が並べられていた。
これがウニやメルトのおかげであることを俺は知っているので、ウニやメルトの手腕に俺が驚いているとメイド組に指示を出しているメルトがこちらに気づき向かってくる。
「お帰りなさいませ、ご主人...」
メルトはいつものようにそう言い俺に礼をすると俺の隣にいるトリスさんとケイトさんに何か言いたげな視線をぶつける。
「ただいまメルト。あと今日は別にメイドさん状態を強制してないから言いたいことは言ってくれていいぞ?」
「本当ですか?それでは...何やってんの父さん母さん?何でこういう状況になるの?...」
メルトは呆れたような顔でトリスさんとケイトさん...父親と母親にそう言う。
「いやぁ...父さんもケイトにはビックリしてるよ」
トリスさんは苦笑いをしながらメルトにそう答えるとメルトはチラリとケイトさんの方へ顔を向ける。
「これが母親の力ですよメルト」
えっへん!と腰に手を当て実に誇らしげな顔でケイトさんは言う。
「...まぁ、母さんがご主人様の役に立ったのは事実らしいから...良いとするわ」
メルトは項垂れたような顔をし、ジト目でケイトさんを見ていたが...結果的に俺の役に立ったということには変わりないので良しとすることにしたようだ。
「む?センヤよ、もう屋敷に来てたのか」
「言われてたとおり食材なんかを買ってきましたよ」
そこに屋敷へと帰ってきたのはノエルとアロエである。ちょうど街にいた彼女達には食材の買い出しをお願いしたのだ。
「おかえり、2人ともありがとう助かったよ」
「いえいえ、アビスさんとパナケイアさんももう少ししたら帰ってくると思います」
さらに付け足すようにアロエが教えてくれる。アビスとパナも2人と一緒にいたのだが、冒険者ギルドに行ってマリンに声をかけてもらうようにお願いしたのだ。
と…ここで話していては時間がもったいないので俺達も各自やるべきことをやり始める。
ケイトさんはメルトの手伝いをしテーブルなどのセッティングなどを行い、トリスさんは俺と食材を購入してきたアロエとノエルとともにキッチンへと向かう。
そこには料理を作っているソニアと料理を手伝いながらも各自に指示を出しているウニなどの姿があった。
「では...あ、お帰りなさいませセンヤ様」
「「お帰りなさいませご主人様!」」
俺に気づいたウニに続き各メイド達も俺に挨拶をしてくる。
「アロエ様とノエル様も食材の買い出し、ありがとうございます」
「そんないいですよ...それより私達も何か手伝いますか?」
「うむ。何でも手伝うぞ!」
「ありがとうございます。それではアロエ様はこちらを手伝ってください。ノエル様は外にいるメルトの手伝いをお願いします」
ウニの指示を受けたアロエ達も各自手伝いを始める。
「じゃあ俺達は料理の方を手伝うな」
トリスさんが手伝ってくれることやクレイドさんも合流したら料理を手伝ってくれることはあらかじめ伝えてあるので俺はそう言いキッチンへと向かう。
「そんな...センヤ様も料理をするんですか!?」
「あー...まぁ子どもとかも来るかもしれないし、子ども達にも食べやすいものでも作ろうかなって思ってな...」
ウニが驚いた顔でそう言ってきたので俺も答える。基本的に俺は料理を作らない...というか俺が料理を作ると地球の料理になってしまうので作らないようにしている。
だが地球の料理やその調理法はこの世界では珍しいものが多いのですごく喜ばれるので時間がある時に少しずつソニア達には教えるようにした...というよりも俺の料理を見たソニアにお願いされたのでそうすることとなった。
そして俺は簡単に大量に作れるポテトチップスをつくった。これは以前にもつくったことがあるものなので滞りなくつくることができた。
今回は以前につくった塩味だけでなく、スミルという梅干しに限りなく近いものがあったのでそれを乾燥させカリカリ梅のような状態にし、粉末近くまで細かくしたものをまぶした梅味の2種類をつくった。
俺がポテチを完成させるとほどなくしてクレイさん達が家にやってきたので家の中へと招く。
俺の家がとても大きいことやメイド達がいることに終始驚いた様子でクレイドさん達はそれぞれ感想を述べている。
「センヤさん...これって本当にセンヤさんの家なの??」
カリンが真実を確かめるように俺に聞いてきたので俺も「そうだ」と答えてるとカリン「そう...なんだ...」と言い何やら考えるようなポーズをとりブツブツと独り言を始める。
その際に「結婚」というワードが聞こえた気がしたが独り言の声が小さかったのでよくわからなかった。
「いやぁ...センヤさんってすごいんですね。私もここで暮らせたら毎日不自由なく過ごせそうです…」
「お前が望むなら別にいいぞ?その代わりちゃんと雇って働いてもらうけどな」
ノリンがそんなことを言ってきたので俺も苦笑しながらもノリンにそう言うとノリンも「そうですよねー...えーと、ちなみにお金の方は...」初めは苦笑しながら答えていたがお金のこと...給料について聞いてきたので俺は耳元で月給の金額を教えてやる。するとノリンは「...え、そ、そんなに貰えるんですか!ど、どうしよ...」と狼狽え初めシーナさんに「私の娘を勧誘するなら相応の覚悟をしないとダメよ」とニッコリ顔で言われたので俺も苦笑するしかなかったのだが...
「まぁ...センヤさんなら安心できるから娘達が本当に望むなら別にいいけどね」
と結局シーナさんも苦笑しながらそう言ってくれた。
その後クレイさん達の協力もあり、酒屋のイグド達が大量に持ってきたお酒が皆へと渡り俺の乾杯の合図で無事に宴会を始めることができた。
庭にも簡易的な調理場を作ったのでクレイさんやトリスさん達が代わり替わりにお酒を飲みながら簡単な料理をつくっていくので料理が途切れることもなさそうだ。
「おいセンヤ!このポテチとかいうやつ酒の肴に最高だな!」
イグドが俺の肩を抱きながらそう言ってくる。イグドだけでなく俺のポテチはたくさんな人から好評であり俺が予想していた通り家族の中に小さな子どももいて、その子達にも大変喜ばれた。
「そうだろ?いやこれが炭酸に合うんだよ」
「ガハハッ、本当だな。なぁ今度つくり方を教えてくれよ?」
「全然いいぞ?簡単につくれるしな...その代わり俺にスキルを教えてくれよ」
俺はイグドにそう提案する。
「あん?スキル??別に構わねぇが...そんなんでいいのか??」
「むしろ俺にとってはそっちの方が嬉しいんだよ」
「それじゃあセンヤ、俺もスキルを教えるからポテチのつくり方を教えてくれよ」
「俺も俺も」
俺のポテチの代償に様々な人達がそう言ってくれる。これなら様々なスキルを習得できそうだ。
そんなことを話していると俺の屋敷へと近づいてくる者達がいたので俺はその席を離れそちらの方に向かう。
次回は騒ぐだけのお話になりそう...




