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ガチャで俺は最強になる  作者: 青藤清也
第2章 ガチャで俺は最強になれる?
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第32話 彼にはあって俺にはないもの

冒頭はギルマスのオルドリックの話と視点になります。割合的にはごくわずかなものです。

 

 オルドリック・ラマークス。彼は幼い頃から人との立ち回りが非常に巧かった。


 いや…正確には彼だけが使える固有スキル、そのスキルの使い方が上手かったのだ。


心情判定トゥルーアンサー


 スキルの内容は簡単に言うと嘘かどうかがわかる能力だ。


 そして彼はこれを使うための頭が非常に良かった。もし何百、何千年後に過去の歴史を見ることができたとして…今までこのスキルを使うのは誰が素晴らしかったか?と問われればそこにいる者達が満場一致でオルドリック・ラマークスの名を上げただろう。それほどまでに彼は巧みにこのスキルを利用して過ごしてきた。


 とある村で生まれた彼は幼少の頃から大人達に天才と言われ続け同世代の者達からは憧れの眼差しを向けられた。その凄さは井の中の蛙ではなく村の外でも通用するものであった。

 彼はこの世界最高峰の学園へと入学した。彼は常に主席に君臨し続け歴代の記録を1年以上も上回る若さでその学園を卒業した。

 卒業後の彼は自分という存在を最大限生かせる場所を見つけるために旅に出た。その旅の中でも彼は様々なことを成し己の糧にした。


 そして現在…そんなことをしても尚、25歳という若さでギルドマスターを任されているのだ。


 なのに…


「そんな俺を利用する…か…」


 俺はそう呟くしかなかった。


「ん?何か言ったか…?」


 そして俺の呟きに反応した元凶を見る。身長は自分よりも少し小さい、でも自分はこの人間という種族の中で身長が高い方だといくことを知っているので必然と彼の身長も高身長といえるだろう。彼は今16歳なので俺と同じ年齢になったら抜かしているかもしれない。

 そんなことを考えている間も彼は疑問の目をこちらに向けてくるので…


「何でもないよ」


 そう返す。すると彼はもうこちらに興味はなくなったのか彼の仲間である少女達と話を始める。少女達のレベルはとても高く、可愛い女の子達ばかりだった。

 自分が今のような素晴らしい人生を歩んでいなかったら同じ光景を見ても嫉妬や憤怒しか湧かなかっただろう。


 だからこそ思う…自分のことを利用した彼がもし…もしもこのスキルを手にしていたのなら…それはととても…



 〝とても…おもしろいだろうな″



 と…可愛い少女達と話す加藤 千弥という不思議な若者を見てそう思うのだった。


 彼と出会い、彼と会話をし彼の成そうとしていることについて考える。いつしかオルドリックは加藤 千弥という若者の望む景色を見たいと思ってしまっていた…



 〈視点変更〉


 今現在、俺達がいるのはボーシュリクス城…つまりはこの国の王城だ。


 ドウシテコウナッタと言いたい気もするが…予想の範囲なので思うだけで留める。そう、この場所にいずれ訪れることになると予想はしていたのだ…ただ予想よりもすぎたのだ。とウニ達と会話をしながら考えていると…


「〜〜〜〜〜」

「ん?何か言ったか…?」


 俺は丁度そのことを考えていた元凶が何かを言った気がしてそう聞いてしまう。だがソイツは少し無言の後…


「何でもないよ」


 そう答えるのでウニ達との会話に戻る。と同時に頭の中で先程の出来事について思い返す…




「貴方今…最低最悪の嘘を吐いた」


 オルドリックは席から立ち上がりマリオンに対しそう口にする。その表情と纏っている雰囲気はいつもとは別物になっている。


「いやいや…まさかオルドリック殿もそんな世迷言を言うとは…」


 マリオンは振り返りそう言うが、オルドリックの雰囲気をや表情に対しても先ほどと変わらない表情をしている。


「それが世迷言なんかじゃないんですよ…ですから貴方のことを拘束させていただきます。ギルドマスターの権限を使って…ね!」


 そう言った瞬間オルドリックはすぐにマリオンとの間合いを詰める…が


「甘いわっ!!」


 それを予想していたのかマリオンは瞬時に腰にあった剣を抜きオルドリックに刺突しようとする。オルドリックはすぐに距離を詰めるために一直線に移動したため、マリオンの剣がオルドリックの体を貫くかに思われた…だが…


「な…!?」


 マリオンが剣を刺すために伸ばされた腕は剣を持っておらず、オルドリックの体の少し前で止まっている。剣をっていれば確実・・にオルドリックの体を貫いていたはずなのにマリオンは剣を握っていなかったのだ。


 そして一拍の間があいた後、カランッ!と何かが落ちる音がする…そうマリオンの剣である。それに気づいたマリオンが驚愕していると思った次の瞬間。


「!?ぐ…ぐは…」


 オルドリックの攻撃を受けたマリオンが気絶しその体が地に落ちる。

 すると、さすがにこの事態に気づいたのか係員さんが来たのでオルドリックは事情を説明するとともにギルド職員や兵士の収集などを係員さんに伝える。


 俺は迅速な対応をしているオルドリックを見ながら一連の流れを思い出す。


 マリオンがオルドリックを刺そうとし剣を抜いた瞬間、そこには岩の塊のようなものが出現しておりその岩の塊がマリオンの剣を弾いたのだ。

 まるでマリオンがそう行動することを知っていたかのように…いや、この言い方をする必要はないな…


 なぜなら俺は知っていたからだ。オルドリックなら可能ではあることを…

 固有スキル【心情判定トゥルーアンサー】を持っているオルドリックなら可能でもおかしくないことを…


 その後、オルドリックを中心とした駆けつけたギルド職員などの対応により城へと足を運ぶことになり現在に至るわけなのだが…


 俺は先ほどのまでのことを思い出し、自分の想定よりも早く片がついたと改めて思う。

 正直、もっと時間がかかるものだと思っていたのだ。それはマリオンとオルドリックのステータスを見比べたり、マリオンがどこまで策を講じているのかと考えた結果であった。

 だが現実はすでに終わってしまっている。だがこれにも、こうなったことにもちゃんと理由がある。

 それはオルドリックが自身の固有スキルの性能を俺の想像以上に理解して使うことができていたからだ。


 例えばライター。その性能は簡単に火を作りだせることであり、俺達現代社会を生きる人間にとって当たり前のもので、それこそ小学生にでもなれば誰でもその性能を知っているものである。


 ではこのライターを時代を遡って原始人だった頃の人間に渡したとして…すぐに火を着けることがで出来るであろうか?


 おそらくは出来ないであろう…何故なら知らないからだ。中に入っている液体も注意事項として書かれている文字すら知らないのだ。

 火を着けることが出来る優れたライターという代物。とても不便であろう原始人のいる頃まで遡った世界でそれがあればどんなに便利なのか理解されない。正しく性能を発揮することが出来ない。


 つまり…ただの宝の持ち腐れだ…


 だがオルドリックはそうではなかった。スキルの性能を理解・・し、使いこなしていたのだ。


 だからこそ俺はこのオルドリック・ラマークスという存在を認めなければならない。彼は紛れもなく強者であると…そして同時に彼と彼の仲間が秘密裏に活動しているBoshという組織にも彼ほどの強者がいる可能性を考え心が震えた。




「今回の件…オルドリック達には本当に感謝する。また本当に済まないことをした…この通りだ…」


 そんな言葉と共に男性2人が俺達とオルドリックに頭を下げる…って!ええ!?アンタ達って現国王と次期国王でしょ!?確か大臣なんて人が悪事を働いていたとかヤバイことだけど…だからって頭を下げるもんなの??こう…立場的なものってあると思うんだが…


「え、えーと…王ともあろう者が頭を下げるっていうのは…」

「あぁ、大丈夫だよセンヤ君。これがこの国の王のスタイルだからね。あぁ…でも俺達みたいな平民に頭を下げるってのは…他の国でもなかなか無いね。この国も現国王のノルディン様になる前は…ここまでではなかったし」


 俺の言葉に対してオルドリックがそう教えてくれる。


 ほぉ…ということはこの王様から変わりだしたということか…下の立場の人間に頭を下げることができるっていうのは素直に素晴らしいことだと思う。


 ちなみに現国王がノルディン・ボーシュリクス、次期国王がセグルス・ボーシュリクスという。


「俺達が国を守る上で民の力は必要。ならば民に対しても敬意や感謝を持つことは当然である」


 ノルディンはそう言いながら顔を上げる。その表情からはそれが本心からの言葉であることが伝わってくる。


「…カッケーな」


 俺は思わず小さな声ではあるがそう口にしてしまう。


「ん?何か言ったか?」


 案の定ノルディンからそんな風に問われてしまう。だが今俺が呟いた言葉をそのまま伝えるのは…さすがに恥ずかしいので…


「いや…いい国王だなぁって」


 俺はそう言葉にする。すると俺の返事を聞いたノルディンはニカッと笑った。





「え?ステータスって偽造できるのか??」


 あれからいくつか話をして、家へと戻った俺は思わずオルドリックにそう返す。


「できるよ。そういうスキルがあるからね…というかセンヤ君は…ああ、立派な鑑定スキルを持ってるんだね君は…」


 俺の質問に対してオルドリックは答えるが、同時に何かを理解したっぽい。いや、今のオルドリックの言い方からすると…

 おそらくオルドリックは自身のステータスを偽造している。だが俺にはそれが適用されていないのがわかったのだろう。いや、さっきの件でオルドリックの固有スキルを利用したのを思い出したか…

 それはつまり逆に考えるのなら偽造のステータスは高い鑑定スキルでないと見破れないということか?


 俺は特級鑑定を鑑定、中級鑑定、上級鑑定の順に変化させてみる。すると案の定オルドリックのステータスに先ほどまでと違うステータスが表示され、上級鑑定ですら正確なステータスが表示されなかった。しかも普通は名称まではわからないが所持はしているとわかるはずの固有スキルが…表示されていない。

 ということは…おそらく、その人の力量で見抜ける鑑定が変化する…ってことか?


『ウニ…どう思う?』

『おそらくセンヤ様の考えの通りだと思います。相手側の力量次第で見抜くのに必要な鑑定が変化すると思います。ですからオルドリックさんは本来なら固有スキルを所持していることがステータスの偽造によってバレないようにしているのでしょう』


 俺がウニに聞いてみるが、どうやらウニも俺の考えと同じなようだ。


 俺は頭の中でスキルの検索をかけると【能力偽造】というスキルがあった。冒険者の職業はあらゆるスキルを習得できるが、それにはは誰かが使用しているのを見なければならない。

 俺は特級鑑定があったため常に本当のステータスを見抜いていたので気づかなかった…ってわけか…


 ああ…確かにオルドリックも持ってるな【能力偽造】のスキル。固有スキルやパラメーターしか見てなかったから気づかなかった…いや違うな…

 これは…俺の責任だ、慢心と言ってもいいだろう。固有スキルや特殊スキルのことしか考えておらず、さらに小さな存在…ただのスキルでだからとキチンと見ていなかった。

 そういう意味じゃ…やはり俺は運が良かった。これからは一般スキルにも目を向けるようにしないとな…


 と俺が今後に対して新たな決意を固めているとそんな俺を見ているオルドリックの存在に気づく。


「なんだよ…」

「いや、センヤ君って理解するのが早いなってさ」


 何を急に言い出してんだコイツは…?まぁ、いつものように軽く流して…


 そこまで考えたが、俺はその考えを取り下げる。


「…理解が早いんじゃない。ただ知識があってそれを実行する適応力があったってだけだ…」


 俺はテーブルに肘をつき手のひらに顔を乗せオルドリックの方ではなく窓の外を見ながらそう口にする。窓の向こうでハチコウやユーガと元気にはしゃぐレオナ達の姿が見える。


「へぇー、だからそんなに余裕があるんだね」


 俺の言葉に対してオルドリックはそう言う。いつもと変わらずニコニコしながら。


「余裕があるように見えるなら…そうなんだろうよ」

「ハッハッハ、俺に対して堂々と嘘をつくなんてさすがセンヤ君だね」


 俺の言葉に対してオルドリックは笑いながらそう答える。


「なんだ?固有スキル持ってませんよ演技はやめたのか??」

「ああやめた。君が本心を語るなら俺も本心をからの言葉を話そうと思ったんだ…」


 俺がおちょくるように言うと、さっきまでの態度とは一変して真面目な顔でオルドリックはそう答えた。


「………」


 俺が何も答えられずにいると…続けてオルドリックが口を開く。


「センヤ君…本当は余裕がある振りをしているんだろう?」

「…そう見えたのか」


 オルドリックの言葉に俺は内心ドキリとしたが平静を保ちつつそう口にする。


「そうは見えないよ…ただわかっただけさ」


 俺はオルドリックの言葉に疑問を浮かべるが俺が考える前にオルドリックが続ける。


「俺も…適応力のある人間だったからね」


 ああ…と俺はその言葉だけで納得してしまう。何故なら俺も理解したからだ。いや正確には結びついたと言うべきだろうか…


 オルドリックのことは少しだけ知っていた。何せ半年前に俺のことを拘束したようなやつが代理者だったのだ。ならば当然、本当のギルドマスターについても興味が湧くだろう?だから少しだけ情報を集めた。

 人々は皆、彼のことをすごい人だと言っていたが…そう思う決め手として1番理由が多かったのが、ジョーダー学園というこの世界最高の学園でトップにいつづけたこと、その学園を歴代の中で誰よりも早く卒業したことである。

 だけど俺はずっと引っかかっていた…本当にそれを実現させることができたのか?と…

 だが先ほどのマリオンとの一件を見て、今のオルドリックの言葉を聞いて疑問が確信へと変わった。


 俺と同じだとわかったからだ…ただ1つ違うことをあげるなら…


「でも…君には足りていないものがある。何かわかるかい?」


 ちょうど俺の考えていたこととオルドリックの質問が重なり結びつく。


「…この世界の知識と常識」


 俺がそう言うとオルドリックは満足そうな顔をする。


「その通りだよ。幼少の頃に得るべき情報が君には足りていない。もちろん、それは君がこの世界とは違う世界から来たからだけどね…でも君が目指す未来には必要なことだろう?」


 そう…俺とオルドリックの決定的な違いはこの世界に生まれたことと異世界から来たってことだ。この世界に生まれたなら成長する過程で知識と常識が自然と理解できるし、それらを学ぶ機会がある。

 だが、異世界から急に来た俺にはその時間がない。さっきオルドリックには知識と適応力があったからだとさりげなく答えたが…知識の部分が正確には違う。

 なぜならその知識は色々なラノベやアニメなんかを見て集め知り得た知識…言わば可能性の存在だからだ。

 こうならばこの可能性がある、そうあるならばこの可能性が高いか?…そんな風にいくつもの可能性を考え最適なものを選び、時には可能性どうしを組み合わせることで…この世界に来てから今まで生き抜き過ごしてきた。

 だからこそ正確で絶対であるこの世界の知識や常識はこの先この世界を生き抜く上では確かに必要なものであった。俺の目指す未来にもな…


「アンタのいう通り…俺には必要だな…」

「だろうね…だから俺が協力するよ」


 …は?どうしてお前が協力する?意味も意図もわからん……聞いてみるか…


「…なんでだ?」

「君という存在が素直にスゴイと思ったし、おもしろいと思ったからだよ。だから…そんな君が描く未来を見たいと思った…」

「それを素直に信じろと?アンタが俺と同じように生きてきたのなら…その行為がどれだけのものか…わかるだろ?」


 オルドリックは依然として真面目な表情をしている。そう…オルドリックならわかるはずなのだ。信じることは信じるという行為は俺達にとってとても難しいことであると…なぜなら彼もその場その場で適応することで生きてきたからだ。

 

 そんなことを考えているとオルドリックは諦めたようにハァと深い溜息を吐く。そして苦笑しながら言葉を述べる。


「…初めてだったんだよ。誰かに利用されたのって…」


 オルドリックはそう言うとさらに言葉を続ける。


「それは必然ではなく偶然の出来事だった…でもそれが偶然だけとは考えられない気がしたんだよ。だからこそ、それを成し遂げた君の…そんな君の見たいと思う景色が…見たくなったんだ…」


 なぜかオルドリックの言葉は俺の胸にスッと溶け込んでいく。

 この感じは前にも感じたことがあるもので…だからこそ…


 オルドリックを信じてもいいと思えたのだ。


「わかった。じゃあ早速聞かせてくれ、【能力偽造】のスキルなんだが…」


 俺がオルドリックに聞こうとするとオルドリックは待てと言うように手で俺の言葉を遮る。


「その質問には後で答える。だが君には絶対に知っていてもらいたいことが1つだけある」


 俺がオルドリックに疑問を抱いているとオルドリックは続けるように言葉を放つ。




 〝君の…センヤ君の学友もこの世界に転移している″



 オルドリックは俺にそう告げたのだ。


…ついにセンヤは知ってしまいました。その事実に…この先どうなってしまうんでしょうか…

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