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ガチャで俺は最強になる  作者: 青藤清也
第2章 ガチャで俺は最強になれる?
33/85

第30話 誰もがそれを願っていた

本編30話となりました。


※12/21誤字脱字と一部文章を修正しました。

 

「センヤ?どうかしたのー?」


 最初にドアを開けてやってきたのはレオナだった。レオナは俺の元へと歩みを進めながらそう口にした。


「なんでもないよ…ちょっと考えごとをしていただけだ」

「センヤはいつも考えごとをしているねー」


 レオナはそう言い、俺の元へと辿り着くと後ろから頭を撫でてくる。現在俺はソファに座っているのでレオナの方を向くと見上げる形になる。


 どうして頭を…いやまぁ、全然嫌ではないんだが…


 そう俺が疑問を抱いているとレオナは言う。


「ありがとね。いつも私達のことを考えてくれて」


 満面の笑みで言われたその言葉にドキッとしてしまう。こんなこと以上のことをしている関係ではあるが、

 それでもドキッとしてしまうのは…やはり彼女の魅力なのだろう。


「でも…1人で頑張り過ぎちゃダメだよ?」


 レオナは心配そうな顔で俺を見る。


「センヤが頑張ってくれるのは嬉しいけど…そのせいでセンヤが苦しい思いをするのは嫌だよ…」


 レオナは俺に言う。その表情から心からそう思っているんだなということが伝わってくる。


「だから…」


 そうレオナが呟いたかと思うと、次の瞬間レオナは俺の膝の上に座っていた。向き合う形となり、レオナの顔がとても近い。

 するとレオナはまたニカッと素敵な笑顔をして…


「いつでも私を頼ってね!!」


 そう言うのだった。まるで、私は守られてるだけの存在なんかじゃないとそう訴えているようだった。


 そしてレオナはそのまま俺に抱きついてこようとして…


「レオナ様…何をしていらっしゃるんですか?」

「ククッ、1人で抜け駆けか?」

「レオナ、それは条約違反じゃないかしら…?」

「おお、ルア姉の顔がマジだ…」

「でも…これは仕方ない…」

「ハァ…ご主人様の周りはライバルが多いですね」


 ドアが開かれ、残りの女性陣がやってくる。マップとマーカーの固有スキルで部屋の外にいたのは知っていたので、タイミングから考えて俺達の様子を見ていたのだろう。


「何ってー、抱きつこうとしただけだよー?」


 レオナは飄々とした態度で女性陣へ言葉を返す。


「ほぅ…レオナよ、そういう態度をするというのなら…少しわからせてやる必要があるな?」

「そうですね…アビス様の意見に私も同意です」

「へぇー、だったら私のことを捕まえてみるんだねー」

「「望むところ(だ・です)!!」」


 そう言うとレオナは逃亡し、ウニとアビスが追いかける。


「おお!楽しそう!私も追いかけるー!!」


 それを見ていたルカも参戦する。3人はすでに開かれたドアの向こうへいっているので、ルカはそれを追いかける形となり部屋を出ていく。


「すごいな…」

「そうね…それよりセンヤ?」


 俺が素直な感想を述べると、ルアはそれに同調し、聞いてくる。


「どうした?」


 俺はルアの方を向き聞く。


「私のことも頼りなさい」


 ルアは腰に手を当てそう言う。さらに…


「そうですね…私のことも頼ってください…」


 ルアに続いてアロエもそう口にする。


「そうね…私達だけじゃないわ、ウニもアビスもそれにルカも…今はレベルが低いけれど強くなる素質は十分にあるわ…だから私達を頼りなさい。私達貴方が望むならいくらでも力を貸すわ」

「…(コクリ)」

「私も微力ではありますが力になります。望むことがあれば何でも言ってください」


 ルアが言葉を言い放ち、アロエも頷く。メルトも力になると自分の意志を伝えてくれる。


 あぁ…そうだ…そうだよな…明るい未来を望んでるのは…俺だけじゃないよな…


 心の底が熱くなるような感覚になり俺は下を向く。それほどまでに彼女達の意志は強かった…いや、意志の強さを感じた。


 そうだ、1人でできることは限られている…それがわかっていたから俺はルシフェル達を召喚する賭けだって実行したんじゃないか…

 半年前にあの過酷なダンジョンへと転移させられてから…ダンジョンを生き残ること、生き抜くことを優先に考えてた…そのせいか俺の思考はどうやら変わっていたらしい。


 そうだな。それじゃあ、もう少し皆のことを頼らせてもらうとするか…1人で頑張り過ぎちゃダメって言われたしな…


「そうだな…これからは頼らせてもらう」


 俺がそう言うと周りの女性陣は納得した顔をする。


「それじゃあ、私も追いかけてくるわね」

「私も…捕まえにいきます…」

「それでは私は皆様が疲れて帰ってきたときように飲み物でも準備しましょう」


 さらにルアとアロエはそう口にし軽く準備運動を始め、メルトはキッチンへと向かう。


「え?なになにお前らも追いかけんの??」

「当たり前でしょう?レオナには裁きが必要だわ」

「はい。それに遠距離が得意な私がいれば…楽になるはずです…」


 そう言うと2人は駆けだしていき、その場に俺だけが残される。


「元気なやつらだよまったく…」


 俺は苦笑しつつそう呟く。マップを確認するとレオナ達は外の敷地内で追いかけっこをしていた。


 まぁ、屋敷内じゃなければ多少のことはいいか…


 そう考え俺は屋敷内の確認へと向かうためソファから腰を上げ部屋を出ていく。




「皆さん、どうしてこんなにグッタリしてるんですか…」


 俺が居間へと戻るとマリンの姿があり、そう口にしていた。


「いらっしゃい。コイツらは…ちょっと追いかけっこしててな…」

「あ、センヤさん!お邪魔してます。それより追いかけっこって…?」


 俺に気づいたマリンが挨拶をして聞いてくる。周りにはソファに体を預けたり、イスに座り机に顔を伏せているウニ達の姿がある。

 俺はそちらの方を一瞥し苦笑しつつマリンに答える。


「いやまぁ色々あってな…それより俺に何か用があるんじゃないのか?」


 俺がそう言うとマリンはそうでした!と口を開く。


「そうなんです、センヤさんに用があったんですよ」

「オルドリックか…?何の用だったんだ?」

「そうです、オルドリックさんです!何でもセンヤさんの明日以降の予定を知りたいと…」


 明日以降か…明日は奴隷オークションが開催される日だからそれを見にいくとして…明後日以降は…特別決めていることはないな。


「ああそうでした。明日は奴隷オークションがあってセンヤさんは行くだろうから、明後日以降の予定を聞いてきて欲しいと言われたんでした…」


 オルドリック…いや待て考えるだけ時間の無駄だな…


「明後日以降なら特に予定を決めてはいないな…」


 俺はマリンにそう伝える。すると何故かマリンは嬉しそうな顔をする。


「本当ですか!?えーと…ち、ちなみに…ちなみにですよ?センヤさんって王様の護衛とかやりたかったりは…」

「しないな」

「ですよね…」


 マリンがソローッと聞いてくるが俺は即答する。それに対してマリンはやっぱり…といった感じの対応をみせる。


 だって得たばかりの拠点についても全然手をつけていないのに…国王の護衛なんてやってられないだろ?


「あれだろ?時期的に考えて国王の即位式の護衛を頼みたいとかそんなんだろ?」

「ぐ…さすがセンヤさんですね。全くもってその通りです…」


 マリンは俺の言葉にたじろぐ。


「あぁ、マリン達には悪いんだが俺達も拠点を手に入れたばかりだからな…そっちの方に時間を割きたいんだ」

「そうですよね…わかりました。オルドリックさんにはそのように伝えておきます」


 マリンは申し訳なさそうな顔でそう告げる。その表情を見て若干心が痛むが…仕方のないことなのだ。


「まぁアレだ…お詫びというわけでもないんだが…これでも食べてくれ」


 俺が取り出したのはドーナツである。砂糖をまぶしただけの簡単なものだ。


「はっ!我の甘味センサーが反応を…センヤそれは?それはお菓子なのか??」


 なんだよ甘味センサーって!?固有スキルか何かですか??


 机に突っ伏していたアビスが顔を上げキョロキョロと辺りを見渡し、その視線は俺の手を捉える。そして見たことがないであろう変わった形状のものを見つけ期待に満ちた眼差しで俺に聞いてくる。


「あ、ああそうだ。これはドーナツというお菓子だ」


 俺がアビスに説明するとアビスは、おお!と表情を輝かせる。


「ということは…そのドーナツが昨日センヤの言っていた新しいお菓子ということだな!!」

「そういうことだ…というわけでマリンにこれをあげよう。ああもちろん、ちゃんとアビス達の分もあるからな?」


 アビスにそう言い、ドーナツをマリンへと差し出す。


「ありがとうございます…良い匂いがしますね?このドーナツというのはセンヤさんがお作りに?」

「そうだ。俺が作った」

「そ、そうなんですか…それではいただきますね!」


 マリンはそう言うとドーナツを一口食べる。そして…


「美味しい…美味しいですよセンヤさん!!」


 マリンは笑顔でそう言うと、食べかけのドーナツをペロリと食べてしまう。


「ククッ、センヤの作る菓子が美味なのは当然のこと…それよりセンヤ、我にもドーナツを渡すのだ」

「ああ了解…ほら」


 アビスが俺にドーナツを要求してくるので渡す。マリンがドーナツを頬張る姿を見て我慢ができなくなったようだ。


「それではいただくとしよう…ウマい!ウマいぞセンヤ!」


 アビスはそう言うとモシャモシャとドーナツをすぐに食べ切ってしまう。そして手元にドーナツがないことに気づくと俺の方を見てくる。

 アビスの表情は俺に訴える。もうないのか?とこれで終わりなのか?と訴えてくる。そしてアビス以外にも視線を感じそちらの方を見ると…机に突っ伏していた者達は顔を上げこちらを見ており、ソファでダウンしていた者達も顔を出しこちらを見つめている。それらの視線の中には1つ食べたマリンも含まれており…

 それらの目は語っている…ドーナツを食べたいと…ドーナツを寄越せと語っている。


 俺はハァ…と小さくため息を吐くと告げる。


「メルト、全員の飲み物を注いであげてくれ…あと…お前らあんまり食べすぎると夜飯食えなくなるから気をつけろよ?」


 俺はそう言い固有スキル便利機能コンビニエンスツール、通称コンビニにある次元倉庫ポータルボックスを発動させる。

 まぁ、発動させると言っても使うのは物品倉庫アイテムボックスの方であり、俺は大きめの皿を取り出す。

 そしてその皿をテーブルの上に置き、その上にドーナツを置く。


 すると群がるかのように四方八方から皿に手が伸びドーナツを掻っ攫っていく。そして口に運ぶと皆美味しいと感想を述べる。この状況は予想していたことなので俺は苦笑しつつ、テーブルを離れる。そして壁に隣接している小さなテーブルへと移動すると、飲み物を注ぎ終わったのにも関わらず立場上のことを思ってかドーナツに手をつけないメルトを手招きで呼んでやる。


「次のご命令ですか?」


 俺の元に来るとメルトはそう口にし、その姿に思わず笑みがこぼれる。

 俺は皿を取り出すとそこにドーナツを乗せる。こうなることは予想していたので、あらかじめ少量のドーナツは向こうの皿には乗せずに取っておいたのだ。


「そうだな命令だ…俺とドーナツを食べよう」

「え…?」


 メルトはキョトンとした顔でこちらを見る。


「メルト…昨日も言ったが今のお前の役割は何だ?」

「形上はご主人様の奴隷ですが…実質はメイドや給仕係のようなものです…」

「あとは?」

「役割的にはメイドですが…基本的には対等な立場だと…」

「その通りだ。お前の中に葛藤や抵抗があるのかもしれないが…対等な立場であるということをもう少し考えてもいいと俺は思う」


 俺は浮かない顔をしているメルトに言う。


「ですが…」

「それでも納得できないんだろ?だからもう一度命令するからな…メルト、俺とドーナツは食べてくれ」


 俺がもう一度命令するとメルトはハッと顔を上げ困っている、でもどこか嬉しそうな顔をして…


「はい。かしこまりました」


 そう言ってやっとドーナツへと手を伸ばす。そしてドーナツを食べると美味しいと感想を漏らす。


 なぜ、こうまでしてメルトに食わせたのかというと…別に美味しいと言ってもらって欲求を満たしたいとかそういうわけではないのだが…同じ屋根の下で共通の物を食べる。この行為はお互い知らない中、これからの関係を築いていく上で重要なことだと思ったからだ。

 話のきっかけにもなるし記憶の共有というのはそれだけで繋がりを感じさせる。

 だからこそ俺はメルトにもドーナツを食べてもらいたかったのだ。


 そうすれば…


「センヤ…ドーナツがなくなってしまった」


 アビスが俺達のテーブルへとやってくる。向こうのテーブルを見てみると確かにドーナツの姿はない。だが、周りの者達に視線を向けると…もう充分という者もいればアビスのように食べ足りないと感じている者もいるようだ。

 現にアビスは俺達のテーブルの上にあるドーナツへと釘付けになっている。


「俺はもういらないから後はメルトに聞いてくれ」


 俺がアビスにそう言うとアビスはパァッと表情を変える。そしてすぐさまメルトの方に顔を向けると口を開く。


「メルト…我に、我にドーナツを恵んでくれぇ!」


 アビスが必死に懇願する。土下座でもしそうな凄まじさである。


「私は構いませんので食べてください。皆様もまだ足りないようでしたらどうぞ」


 メルトはまた困ったような、でもどこか嬉しそうな顔をしてアビスに言うと…向こうのテーブルの者達へと顔を向け、そう口にした。


「おお女神よぉぉぉ!!感謝、圧倒的感謝ぁぁ!!」


 アビスは…なんかすごい感謝してるな…ではなく、メルトの発言によりレオナとルカ、それにマリンがこちらへとやってくる。


「ありがとうメルトー!」

「メルトさんありがとうございます!」

「やっぱり持つべきものは幼馴染ね!」


 などなど口にしドーナツへと手を伸ばす。するとメルトは口を開いて何かを言おうとするが閉じる…かと思うと俺の方を見て何かを決心したような顔をし、また口を開く。


「そ、そういえばマリー。アンタ少し…いえ何でもないわ」


 初めの方は声が震えていたが…マリンへと対等な言葉づかいをする。というかマリーって呼んでたんだな…


「な、なによメル!気になるじゃない言ってよ!」


 マリンがメルトにそう言うとメルトは少し困ったような顔をして視線をマリンのとある場所へと動かす。


「それじゃあ…マリー、アンタ少し太った…?」


 ピシャリと空気が凍る。マリーだけではないアビスを除く全員の動きが止まったのだ。


 そういえばシーナさんが言ってたな…俺達が心配でいつもより食べていたと、ストレスを食事にぶつけるタイプだと言っていた。


 見た感じ全然変わらないように思うのだが…同じ女性であるメルトには高センサーでもついているのだろうか?


「……」


 マリンは無言で手に持っていたドーナツを皿へと戻す。


「アビス…残りのドーナツ食べていいよ…」

「私もいらないです…」


 レオナとルカもこれ以上は食べる気になれないようだ。メルトの方を見ると大変困った表情をしており、アビスだけは残りのドーナツを食べられると嬉しそうな顔をしていて、俺はその光景に苦笑いするしかなかった…



 余談になるのだが…本日の夕食は誰も食べなかった。俺とアビスを除いて…



次回は…オークションの話になります。もしかしたらガチャるかもしれません。

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