第25話 ガチャで俺は最強になる
タイトルからわかるように、とりあえずこの話で一区切りとなります。
半年ぶりにボーシュリクスの門をくぐると中は半年前よりも賑わいを見せていた。というよりも…
「これは…祭りか何かでもあるのか?」
「兄ちゃん冒険者かい?これは国王の即位式のお祝いさ」
俺がそう呟くと近くにいた商人が教えてくれる。
「即位式…この国の王が変わるのか?」
「ああそうだ。といっても新たな国王は現国王の息子で昔から王と共にこの国を切り盛りしてきた人だ。この国が昔より劣るようなことにはならないさ」
商人はそう言うと人混みに紛れていく。
「国王の変わる時に帰ってこれるなんて運がいいねー」
「まぁ、私達はそもそも現国王も新国王も知らないけれど…」
「なにも知らずに半年が過ぎましたからね…」
「でも運がいいのは事実です…それに幸運はセンヤさんの専売特許です」
「確かにセンヤの運の良さは底が見えぬ…まるで深淵のようなものだからな…」
「まぁ、国王の話はここでしても仕方ないし…とりあえずギルドに行こう」
俺達は国王の即位式の話をほどほどにギルドに向かう。たった数日しかいなかったとはいえ久しぶりの街の空気のようなものは懐かしさを感じさせてくれた。
「その後によ…ん?お、おいアレ…」
「何だ…ってアレって…」
「おいアレって…」
ギルドに入ると中にいた冒険者達がヒソヒソと会話をし始めるが、俺は気にせず目的の人物を探す。
目的の人はカウンターで他の冒険者の対応をしていたので俺達はその後ろへと並ぶ。
「それでは次の方ー…え…」
「とりあえず今晩泊まれる宿を探してるんだが…」
「…わかりました。それではグリーンという宿屋を紹介させていただきます。場所は…お分かりですか?」
「ああ、覚えているから心配ない。前に利用したことがあるからな…久しぶりだなマリン」
「そうですね…お久しぶりですセンヤさん…それに皆さんも…よく…ご無事で…」
マリンは涙を流しながら話す。それもそうだろう…何せ初めは1週間の予定だったのだ。それなのに…半年以上の時間が経ってしまった。それよりも…やっぱりマリンは泣いてくれるのか。
ギルド職員と冒険者の関係…そこにはやはり永遠の別れというものが付きまとうだろう。だから本来ならお互いそれを知った上での付き合いになる。マリンもギルド職員の一員であり、俺達のことも割り切っていて泣かないかもしれないと思ったのだが…
俺達に…たった数日の関係しかない俺達に…涙を流してくれた…そう考えると胸の奥が熱くなる。
「マリンー!久しぶりー!」
「レオナさんも元気そうで良かったです…」
現にレオナは泣いてしまい、マリンと抱擁を交わしている。ウニやアロエもほろりと涙を流している。
「やっぱり…英雄様のお帰りだぁぁぁ!!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
俺達の一連のやり取りを見て決定的なものとなったのだろう。冒険者の誰かがそう叫ぶとギルド内は歓声に包まれる。一部の冒険者達がポカンとしているが半年前の俺達の騒動を知らないもの達だろう。
「半年前もこんな感じに騒がしかったわね…」
「原因の一端はお前にもあるけどな…それにいいじゃねぇか、コッチの方が俺達の凱旋っぽいだろう?」
「まぁ、それもそうね…」
呆れた顔のルアだが、心の中では俺と一緒で帰ってきたということをより実感しているはずだ。さすがに半年もの付き合いがあればそれくらいは何となくわかる。
「ククッ、騒々しいが悪くないものだな」
「さすがにいつもこういうわけじゃないけどな」
俺がアビスにそう話していると見知らぬ男性が話しかけてくる。
「へぇー、君が噂の英雄君か…随分と若いんだね」
「えーと…誰だアンタは?」
「お、俺の名前を知らないのかい…?」
「ああ全く知らない。誰ですか?」
もしかして有名な人なのだろうか?いや、この話し方から察するに十中八九そうなのだろう。だが俺達はこの人を知らない。知らないものは仕方がない。
「マジかよ…リベラルを知らないのかよ英雄様は
…」
「嘘だろ、この国唯一のSランク冒険者だぞ…?」
「だが、あの様子は本当っぽいな…」
騒いでいた冒険者達が静かになりヒソヒソと話し始める。唯一のSランク?…ああ!この人が普段は国王の護衛だかをやってるとか言ってたSランク冒険者か!半年前のことだから思いっきり忘れてたよ。
「周りの人が言ったように俺の名前はリベラル。リベラル・イルガーだ」
「俺は加藤 千弥です。それで…そのリベラルさんが俺に何の用ですか?」
「いや、噂になってた英雄君と話しがしてみたくてね…でも君と話して目的が変わった。君は英雄と呼ばれるに相応しくない」
「いやまぁ、俺がそう呼んで欲しいと頼んだわけでもないですし…そう思うんだったらリベラルさんが周りの冒険者達に言ったらどうですか?英雄呼びを止めろって」
「君のその態度は何なんだい?仮にも英雄と呼ばれているのだからその呼び名に相応しい行動を取るべきだろう?」
「いや勝手に呼ばれてるのに相応しい行動とか言われても…」
「わかった…カトウ、今から俺と戦おう。君が勝ったら英雄と呼ばれることを許そうじゃないか」
「ん?呼び名に関してはアンタの許可なんていらないだろう?」
「いやあるさ…俺がそう呼ばれていないのに君が呼ばれるのは普通に考えておかしいからね。それにSランクの俺と戦いたくない君の気持ちもわかる。綺麗で可愛い女の子達に負けるところは見せたくないんだろう?君には勿体無い子達ばかりだからね」
コイツ…頭おかしいんじゃねぇのか?俺に絡んでくる冒険者達は頭のおかしい連中ばっかじゃねぇか。
「勝つとわかってる勝負をしかけるとか…Sランク冒険者のすることじゃねぇな。最低な性格じゃねえか」
「君が負けを認めるならそれでも構わないよ…その代わり英雄と呼ばれることをやめてもらうけどね」
「いや、その必要はねぇよ。それより俺にだけ何の利益もないんだが…」
「利益…?」
「俺が勝った時の利益だよ。まさか英雄呼びを許すからとかだけじゃねぇよな?それだったらマジでキレるぞ俺は」
「君は俺に勝つつもりなのかい?冗談はやめてくれよ」
おい、じゃあさっき何で勝負に勝ったらとか言ってふっかけてきたんだよ…コイツ、マジでウザいな。
「じゃあ、俺が勝ったら何でも言うことを聞け」
「そんな条件、認めるわけが…「負けるのが怖いのか?」」
了承しないリベラルに俺がそう言うとリベラルは明らかにイラっとした顔になる。
「いやでもそうだよなぁ…国王の護衛までやってるSランク様がBランクの冒険者に負けたら恥ずかしいもんなぁ…断るのも仕方ないか…」
「…いいだろう。その代わり君が負けたら君も何でも言うことを聞いてもらう」
「ハハッ!さらりと条件を追加して見っともねぇけど、それでやってやるよ。あーあ、負けたら余計に惨めになるだけなのになぁ…ルールは何でもありか?」
「…殺しはなしだ」
リベラルは明らかに怒っている。きっと今すぐにでも俺を攻撃したくて仕方がないはずだ。もちろん笑ったのは相手を怒らせるためだ。だってコイツムカつくし…それに普通殺しないだろう、勝利の利益を提示した意味がなくなる。それくらいも分からんのかコイツは…
「センヤ、俺が相手をしようか?」
そう言いだしたのはジークだ。確かにコイツの相手をするのは面倒くさいが、それ以上にぶん殴りたい気持ちの方が強い。
まぁ、実際ジークの方が適任だろうが俺が相手をしたところでコイツ程度なら変わらない。それにジークやネビロスにばかり…あぁ、ネビロスとはこの半年の間に増えた仲間だ。ダンジョンを出た後に周りの地形を見て回りたいとかで1人でどっかに行ってしまった。話が逸れた…とにかくアイツらには頼り過ぎてしまっているのでたまには俺が戦ってやらないとな。
「必要ねぇよ、俺が受けた勝負だ。それにもう隠す必要もないしな」
「わかった。なら俺は見物させてもらおう」
「話は済んだかい?それじゃあ外に行こうか」
俺達は外の広場へと移動する。俺とリベラルはある程度の距離を離し対峙する。勝負開始の合図はマリンにお願いした。周りには即位式の影響のせいでギャラリーがたくさんいるが関係ない、もう力を隠す必要なんてないからな。だから…
「それでは…始め!!」
これからは俺の好きなようにやらせてもらう!!!
「な…」
「お、おい…リベラルが…」
「ま、負けただと…」
そして俺はギャラリーが騒いでいるように一瞬でリベラルを倒す。特別なことは何もしていない相手より先に攻撃しただけだ。
「悪いな。Sランクの冒険者なんかに負けるわけにはいかないんだよ俺は…」
そう、あのダンジョンを乗り越えた今…Sランクの冒険者に負けるわけにはいかないのだ。なぜなら…
「俺はこの力で最強を目指すことにしたんだ…」
最強になれば誰も傷つかずに守ることができる。それを成せるだけの力が秘められていることを知った。だから決めたんだ…
〝ガチャで俺は最強になる″
「ねぇセンヤー、最近ガチャを回してないんじゃない?」
「いや、そんなことは…」
「確かに…デイリーガチャしか回していませんね…」
「これじゃあ…タイトル詐欺…?」
「ククッ、詐欺とはやるではないか…」
「わかったよ!次の話で回すよ!!」
「なぜかしら…次回の話、とても不思議な感じがするわ」
すいません、次回ちゃんとガチャりますので詐欺じゃないですからね!
11/8すいません。ルアの期待は次ではないかもしれません…




