第16話 守りたいこの笑顔
センヤが職業の1つに守護者を選んだのもルア達を守りたいというのが大きいです。
「大切な人達を守りたいだけだ」
その言葉に嘘はない。ウニ、ルア、レオナ…この世界に転移してからまだ2日目だが…少なくともすでにこの3人には並々ならぬ思いを抱いている。
だからこそ俺は昨日の夜にルシフェル達という危ない橋も渡ったし、朝方の冒険者達の行為も笑って済ますことができなかった…
そして、俺のスキルはそう思える者達が増えていくだろう。この世界にいるほどそう思える人達も増えるだろう。だからこそ…その人達が危険な目に遭った時に助ける力、守る力が俺は欲しい…
だから…この言葉は俺の本心から出た噓偽りのない言葉だった。
「少佐の思いは伝わった…俺もセンヤ少佐の思いを叶える力になろう…」
スネークが右手を差し出してくるので俺も右手を差し出し強く握手する。
「…頼むよスネーク…俺に力を貸してくれ」
「了解した…その任務を遂行する…」
俺は早速、スネークの力を借りる。
「で早速なんだが…この辺りに魔物はいないか?できれば強い方がいいんだが…」
「了解した…」
スネークはそう言うと耳を地面にあて目を瞑る。俺達も余計な音を出さないようにジッとしていると…
「ここから、あっちの方角にしばらく進むとホーンボアの群れがいる。その中に上位種も混じっているようだ…」
「わかった…ウニ!門までの道程は迷わずに帰れるな!?」
「問題ありません!ワールドマップを用いて最短ルートを割り出しています!」
「それじゃあ、今から討伐に向かう。スネーク、先導してくれ」
「了解…」
俺達はスネークの後についていく。スネークはとても身軽でポンポンと木の枝を飛び移っていく。俺達はユーガの走れる全力のスピードでどんどん進んでいく。
それから30分ほど移動したところでスネークがピタッと止まったので俺達も止まる。そこには頭に角を生やした猪のような魔物が沢山いる。
『少佐…目的のホーンボアの群れだ』
『ご苦労…それじゃあこれからホーンボアの群れを討伐する。各々周りに大きな被害を出さないように狩れ』
俺はハチコウから降りパーティチャットで皆に伝える。すると、真っ先にハチコウが飛び出す。
「はやっ!早いよハチコウ!」
俺達もホーンボアの群れに向かって走り出す。
ズバン!と近くにいたホーンボアを斬る。
「ハァ!って強!?斧めっちゃ強い!!」
俺はリバイアサンを斧状態にしてホーンボアを斬り伏せるがあまりの威力の高さに驚く。
「ボゥオオオオ!!!」
ズバン!…ズバン!
俺の存在に気付いたホーンボアが俺に突進してくるので正面から斬る。さらに深青眼で後ろからも突進してくる別のホーンボアもいたので斬る。
「アイスニードル!」
「アクアカッター!」
「スパークプラグ!」
ウニ達は魔法を放ちホーンボアを倒しているようだ…
ザシュ!…ドゴン!
ハチコウは牙や爪を用いて、ユーガは力任せに叩く…うん、ユーガのは痛そうだね…
ズバン!
スネークは事前に渡しておいた鋼の剣で斬っていく。
そうしてしばらく狩りを続けてホーンボアの群れを掃討した。
「やっと終わったねー」
「そうだなぁ…」
辺りを見渡すと魔物に姿がなく、そこら中にドロップアイテムが散らばっている。俺達はアイテムボックスを用いてドロップアイテムを回収し、最後に俺が纏めてカード化する。
・一角猪の肉×32.毛×15.牙×15.角×15.骨×15.頭殻×4.
・大角猪の肉×12.毛×7.牙×7.角×7.骨×8.頭殻×4.大角×3.
・巨角猪の肉×1.角×1.牙×1.骨×1.剛角×1.
・56000硬貨
となった…。一角猪はホーンボア、大角猪はビッグホーンボア、巨角猪はトールホーンボアという魔物の名称だ。
ビッグホーンボアはホーンボアのトールホーンボアはビッグホーンボアの上位種となっており、★1.★2.★3とレア度が上がっている。
「かなりの量だが肉は素直にありがたいな…」
「そうですね。肉があれば食料問題も解決できますからね…」
「それじゃあ…今日は帰るか…泊まれるような準備もしてないし」
皆の了承を得て俺達は街へと帰る。
「じゃあウニ、帰り道の案内よろしくな」
「はい!任せてください。」
ウニの案内のおかげで行きよりも時間を短縮して街に帰ることができそうだ。
そうして、しばらく帰っていると…
『少佐…人の気配を感知した…』
『わかった…』
スネークが人の気配を感知したことを伝えてくれた。
「人の気配があるらしい…ここからは歩いていくぞ」
「それではマスター!」
「バイバイ…」
「おう!また頼むな」
皆に伝え、ハチコウとユーガを戻し歩きだす。
それからしばらく歩くと街へと辿り着いた。俺達は門番の兵士にギルドカードを見せて門を通る。
え?スネーク?…スネークなら気付かれないように進入したよ。何せ固有スキルで姿が見えないからね…今もある程度離れたところでこちらを観察してるらしい…
『スネーク…冒険者として登録してほしい…というかアイテムボックスの為に冒険者の職業をとってほしいから先にギルドにいって登録してきてもらっていいか?』
『了解した…』
スネークにそう告げ俺達も冒険者ギルドを目指して歩く。
スネークにはドロップアイテムの回収をしてもらえるようになってほしいからな…そういやジークの方はどうなってるかな…?
『ジーク…今大丈夫か?』
『やぁセンヤ、昨日ぶりだね。もちろん大丈夫だよ…魔物と交戦中だけどね』
『随分と余裕そうで良かったよ…そっちはどんな感じだ?』
『今は12層を探索中だよ…すまない、魔物も中々ランダムっぽくてね…15個ほどしか手に入れてない』
そう、俺がジークフリートに頼んだのはずばりダンジョンでの素材集めである。
この世界にも当然ダンジョンというものが存在しており、俺達が先ほどまで行っていた森にもダンジョンが存在する。
ダンジョンには魔物が定期的に出現し、基本的には下の階層に進むほど強くなっていく。だが、ダンジョンにも色々な種類があり…ジークが今行ってるアロンジアの森というダンジョンは上の階層にも強い魔物が出現することがある攻略が難しいダンジョンなのだ…その為、攻略しようとする者や探索しようとする者があまりいないそうだ。
あと、ダンジョンに出現する魔物は地上に存在する同種の魔物よりも倒したときの経験値が少なく、ドロップアイテムも少なくなっている。
それでも定期的に魔物が出るのでダンジョンはレベルアップするのに最適な場所らしい…
この近くには他にルイカーバー湖という湖にあるダンジョンがあり、そちらは魔物の出現が一般的なものらしく冒険者達がよく行くそうだ…。
今ジークにお願いしているのは★4の素材を中心に集めてもらっている。朝一で冒険者になってもらいアイテムボックスのスキルをとってもらう為に冒険者の職業を選んでもらった。
ジークのように素材回収をいつでも頼めるようにスネークにも冒険者になってもらうというわけだ。
『いや、1日で15個って十分だろ?それにわざわざ面倒なダンジョン押し付けてるのは俺だしな…』
『ハハッそう言ってもらえると助かるよ。』
『あとな…新たに魔人が仲間になった…つーか仲間にした魔物が魔人になった』
『センヤの固有スキルでかい?』
『ああ…でも元々潜在能力というか…ステータスが高かったらしい』
『へぇー、そんなこともあるなんて…さすがはセンヤだ』
『いや!すごいのは俺じゃなくてスキルだからな!?』
『そのスキルは君にしか使えないし、そのスキルを使うと決断し行動したのも君だ…だから君も十分すごいことに変わりはないよ』
『そういうもんか…それじゃあ引き続き頼むぞ』
『了解。』
俺はジークとのパーティチャットを切る。
そういや、ルアとレオナにはジークのこと説明してないなぁ…ルシフェル達はともかくジークのことは…ん?ルシフェル達…?そういやコイツらディアボロについて何も聞いてこないな…?
『ウニ、ディアボロのことってルア達に話したのか?』
『はい、話しました。センヤ様の切り札だと…』
『まぁ、あながち間違えてもいないからそれでいいか…機会をみてジークフリートのことをルア達に話そうと思ってな…』
『そうですね…ジークフリート様のことでしたら…伝えておいた方がいいかもしれません』
ウニとパーティチャットでそんな会話をしているとスネークからキャッチが入ったのでウニとの会話を終える。
『少佐、任務完了だ…』
『ご苦労…それじゃあ引き続き俺の身辺警護をしてくれ』
『了解した…』
そんなことをしていると冒険者ギルドに着いた。もう空も暗くなってきているせいかギルド内から騒がしい音が聞こえる。
俺達がドアを開けギルド内へと入ると中にいた冒険者達が声を上げてくる。
「おお!英雄様のお帰りだぁー!!!」
その言葉に周りの冒険者達は次々と俺達の方を見て…
「ほんとだ!英雄のお帰りだぞー!!」
「お帰り英雄様ー!!」
などなど、俺達を見るなり声を上げてくる。後ろを振り返るがそこには誰もいない。
「え、えいゆう?俺達が…?」
戸惑って俺がそんな言葉を呟くと近くにいた冒険者が俺に言ってくる。
「いや、英雄はアンタのことだよ…俺達の英雄センヤ…」
「は…俺!?何で俺が英雄なんだよ!?」
「俺達のことを導いてくれたじゃねえかよ…正直でいることの大切さを教えてくれたじゃねぇか…アンタは俺達にとっての英雄なんだ…」
「それって朝のこと言ってんのか!?」
「そうだ…あの時は熱くなったぜ…」
周りの冒険者達もウンウン頷いてやがる…まぁいいか…正直、英雄呼びは悪くないしな。
「とりあえず了解はした…」
俺達はカウンターへと向かう。
「いらっしゃいませー!本日のご用件は何ですか?」
「何でアンタがカウンターにいるんだよ…」
そこにはニコニコ顔で声をかけてくるミレーネがいた。
「何でと言われましても…これが私の仕事ですので」
「いや、ギルドマスター代理なんだろ?重要な書類の案件とかと睨めっこしてるもんじゃないのか?」
「ギルドマスターとしての職務は昼頃に終わらせたので…それに受付の仕事の方が好きなんですよ私」
そういや、昨日もカウンターにいたもんなぁ…
「それじゃあ、クエスト完了の報告と素材の買い取りを頼みたい」
「もう終わったんですか?さすがですね…それではギルドカードを確認させていただきますので提示してください。」
俺は森林茸を10個取り出しカウンターの上に置き、ギルドカードを見せる。
「森林茸のクエストも完了してたのですね…はい、両方とも確認しましたのでギルドカードをお返しいたします。」
ミレーネは硬貨を準備して渡してくる。
「それでは、こちらが報酬金の6000硬貨になります。」
円金貨と金貨が1枚ずつトレイに乗せて渡されのでポケットにしまう。
「買い取りはゴブリンの素材ですか?」
「ゴブリンもそうなんだが…なぁ、俺ってまだ冒険者のランク、Fだよな?」
「そうです。あとEランクのクエストを3つ完了していただくとEランクになります。」
「どの程度の魔物を狩れば一気にランクが上がるんだ?例えば…ビッグホーンボアとか…」
「討伐したのですか…ビッグホーンボアの討伐ならEランクになれますよ?その上のトールホーンボアならDランクです。」
「それじゃあ…」
ドン!とサイクロプスの角をカウンターの上に置く。
「コイツだと何ランクになれる…?」
一瞬の静寂の後、ギルドは再び喧騒に包まれた。
センヤは用意周到タイプなので偶然ルシフェル達やジークフリートのような強い者が仲間にいるため最後のようなことをしてますが…もし、ルシフェル達がいなかったら地道にクエスト完了してます。