第10話 転移者の泊まる宿屋って大概良い宿屋だよね?
宿屋って夢がありますよね…この作品でも「昨晩はお楽しみでしたね」的展開があります。いつかは…秘密ですが
それから少し時間が経ち、俺達は職業選択を終える…
センヤ:召喚士・守護者・海賊・魔法使い・冒険者
ウニ:秘書・商人・氷結士・冒険者
レオナ:魔法使い・対魔士・冒険者
ルア:水芸士・剣士・冒険者
「皆様、冒険者を選んでるんですね。そうですよね…すでに天職がありますもんね…そりゃ、物品倉庫が使える冒険者を選びますよね…」
それだけじゃない…ってかそれ以外の所が理由なんだけどな。
冒険者の職業は全てのスキル習得が可能なのだ。
以前、農業者が木魔法を習得する際にはポイントを消費する必要があると言ったが、じゃあ、農業者は火魔法を覚えられるのか?…実は覚えることができない。
職業ごとにポイント消費で覚えられるものは決まっているのだ…だから本来の召喚士なら低級の水魔法ならポイント消費で覚えられるのだが…俺が使える上位の水魔法は覚えることができないのだ…
あれは俺の固有スキルのおかげで覚えることができる…だがそうなると覚えることのできないスキルを覚えていることになるため、冒険者というポイント消費であらゆるスキルを覚えられる職業を選択することにしたのだ。
「アイテムボックスはあると便利だからな…」
「そうですよね…」
「聞き忘れてたんだが…ランクを上げるにはどうすればいい?さっき言っていたクエストをこなしていけばいいのか?」
「はい。ランクごとのクエストを規定回数クリアしていただければ、次のランクに昇格します。」
「魔物の素材の買取は冒険者ギルドでできるのか?」
「はい。素材の買取はギルドでできますよ、何か買取して欲しい物があるんですか?」
「いや、今日は遅いし後日にする…オススメの宿屋とかってあるのか?」
「それでは…こちらの地図をどうぞ。武器屋や道具屋の場所も掲載されていますので…あと、私のオススメの宿屋はこちらのグリーンと言う宿屋ですね。三食付いて値段もそこそこの良いお店です。」
マリンは地図を広げて宿屋をマーキングする。宿屋として掲載されているところが何カ所かあるので本当にマリンの勧める宿屋なんだろう。
「ありがとう。」
「いえいえ、このくらい何ともないですよ。ではまた…」
「あぁ…それじゃ宿屋に行くか。」
俺達は部屋を後にする。
外に出る途中、当選受付の前を通るが壊れた受付の破片はキレイに片付けられている。あと、やたら冒険者達に見られている気がする…
特に何か言ってくるわけでもないので俺達は冒険者ギルドを後にした。
このボーシュリクスという国は大きく4つの地区に分かれている。
・冒険者ギルドのある冒険者地区
・商人ギルドのある商業地区
・人々が生活する居住地区
・船・魚市場などがある港地区
俺達の向かう宿屋グリーンは居住地区にあるようだ。元々掲載されている宿屋は冒険者地区にあるのでこちらは本当に冒険者向けに書かれたものなのだろう。
俺達がしばらく歩くと目的地の宿屋グリーンと書かれた宿屋にたどり着く。
冒険者地区から居住地区に入ってそんなに歩かずに着いたので冒険者ギルドに行くにも不便に感じない。
俺がドアを開けると…
「いらっしゃいませー!」
中にいたマリンが元気良く挨拶してくる。
バタン!と俺がドアを閉めると…
ドタタタ…バァン!
「何で閉めるんですか!」
「いや…何でお前がいるんだよ?」
「言ったじゃないですか?ではまたって」
「あれは、そういう意味だったのか…」
「はい。ですから走ってきました!」
「まぁいい…それじゃあ入るぞ」
「どうぞどうぞ…お客様ご来店でーす!」
マリンがそういうと店の奥から美人な人が出てくる。
「いらっしゃいませー。あら、貴方達がマリンの言ってた人ね?マリンが冒険者の方をウチの宿屋に勧めることって滅多にないから…」
「あっ、こちら店主で母のシーナです!」
「シーナです。本日は宿泊ですか?それとも食事ですか?」
「宿泊だといくらになるんですか?」
「個別の部屋でしたら三食付きで1人5千硬貨です。相部屋ですと、さらに安くなります。ただいま、1人部屋から4人部屋まで全て空いておりますが、どうしますか?」
「個別の方がいいよな?」
「私はセンヤと一緒がいいなー!」
!?
「レオナ!?…まぁいいか…それじゃ2人部屋1つと1人部屋を2…」
「待ってください。私もセンヤ様と一緒で大丈夫です…そちらの方がお安いのでそうしましょう。」
「え?あ、あぁ…じゃあ3人部屋1つと…」
「待ちなさい!私も…一緒で…いいわよ」
「本当に大丈夫か?なら、4人部屋を1つ頼みます」
「まぁ、センヤさんはモテモテなのねー。それじゃあ1人あたり4千硬貨でいいわよ。」
「安!それじゃあ、とりあえず5日分頼むかな?」
俺はシーナさんに大金貨を8枚渡す。
「それじゃあ8万硬貨ちょうどいただきました。それじゃあ、お部屋の案内を…マリン!お客様を部屋にご案内しなさい。」
「…は、はい!それではご案内します…」
マリンはハッと気がつくと顔を赤らめながら移動する。
「そ、それではこちらがお部屋になります。食事は一階に食堂がありますのでそちらでお食べください。三食までは無料となっております。体を拭くタオルとお湯が欲しい場合はお申し付けください。」
そう言うとマリンはそそくさと退散していった。
俺達はドアを開けなかに入る。4人部屋ということもあり中々広く、クローゼットやタンスの他にソファーやテーブルや人数分のイスがあり、ダブルベッドが2つ置かれている…
「ベッドが2つしかありませんね…」
「あぁ、そうだな…ウニ達には悪いけどローテーションでもいいからダブルベッドの1つに2人で寝てくれないか?もう1つは1人で使っていいから…」
「センヤはどこで寝るのよ…」
「俺はソファーを使わせてもらうよ」
「え、なんで?一緒に寝ようよー!」
え?なに一緒に寝るのもオーケーなんですかレオナさん!?
「レオナがいいならいいが…じゃあ、俺とレオナでベッドを1つ使わせてもらうけどいいか?」
「はい…」
「ええ…」
「じゃあ、どうする?飯にするか?」
「そうですね。」
「そうね。」
「お腹すいたー」
俺達は食堂へと移動する。
中ににはそれなりに人が入っている。食堂にいる人々が俺達の方を見る、というか俺以外の奴らに見とれている。
俺達は空いてるテーブルに座るとメニュー表を女の子が持ってきてくれる。
「貴方達が今日から宿泊するお客様ね?私はカリン、よろしくね!」
「俺はセンヤだ。えーと…カリンはマリンの妹かな?」
「そう、マリンお姉ちゃんは私の姉よ!あと、私の下に妹が2人いるわ!」
「へー、4人姉妹なんだねー!」
「4人姉妹なのは間違いないわ。でも、あと兄が1人いて5人兄妹なのよ。」
「じゃあ…ここは家族で切り盛りしてるのかしら?」
「そうなの。マリンお姉ちゃんだけは冒険者ギルドで働いてるけどね…でも仕事が終わった後などは手伝ってくれるし、いなくても家族で回せるので大丈夫なのよ」
「じゃあ、食事について教えてもらえるか?」
「宿泊のお客様はこちらのA.B.Cのメニューを1つ選んでもらうことになってるわ、メニューも日替わりだから被ることはないようになってるの。」
メニュー表を指差しながらカリンが答える。俺はBメニューのパンと肉とコーンスープのセットを選択する。
「じゃあ、俺はBメニューで」
「私はAメニューで!」
「私もAメニューにするわ」
「私はCメニューでお願いします」
「わかったわ!料理ができるまで待っててね」
カリンはそう言うと厨房の方に行ってしまう。
「すみません…お手洗いに行ってきます…」
「あっ、俺も行ってくるわ…」
ウニがトイレに行こうとしたので、俺も行っておこうと思い席を立つ。
ついでに、ある予定も済ましておこうと思う…
「いってらっしゃーい!」
レオナが手をブンブン振って送りだしてくれる。
「すぐ戻るよ」
それに対し俺は苦笑しながら答えるのであった。
俺がことを済ませて食堂に行くと食事はまだできていなかったが…40代くらいのイケメンがレオナ達と話していた。
「あっ!おかえりー!」
「ただいま。えーと、マリンのお父さんですか?」
「ええ、クレイドと言います。この度は宿屋グリーンを利用していただきありがとうございます。」
「どーも、センヤと言います。マリンに勧められたのでここにすることにしました。」
「そうですか!料理はもうすぐ出来ますので楽しみにしててください。厨房に居る者に声をかけてくだされば1日3食までなら無料で作りますので…弁当も希望でしたら1食分として作るのでクエストなどで外に行く時は言ってください。」
「ありがとうございます。楽しみにさせていただきます…それじゃあ、明日の昼用のお弁当を4人分お願いしてもいいですか?」
「わかりました。朝食後にお渡しします…それでは。」
クレイドは厨房の方に行き、ちょうどウニが帰ってくる。
それから直ぐに料理が同い年くらいのイケメンによって運ばれてくる。
「こちらが料理になります。」
「ああ、ありがとう…」
「僕はレナードといいます。主に料理を作らせていただいておりますのでご用の際にはお申し付けください。」
「俺はセンヤだ。同い年くらいだろ?敬語はいらないから気軽に話してくれ」
「それじゃあセンヤと呼ぶよ。可愛い娘ばっかりだけど…みんなセンヤの彼女なのかい?」
「いや、彼女は1人もいないな…」
「ハハッ!そうなんだ…じゃあ、これを機にお近づきになりたいものだね…」
「ハハッ!本人の意思だからな…俺が決めることじゃねぇよ」
「それじゃあアピールさせてもらおうかな?」
「ごめんねー、私はセンヤが好きだからー」
「私もムリね…」
「レナードさん、すいません…」
「振られるのが早いなぁ…それじゃあ料理を召し上がってください。」
「そうさせてもらうよ」
レナードはあっけらかんとした感じで厨房に戻って行く。
レナードは嫌な感じがしない良いイケメンだった…彼とは良い友好関係を築けそうだ。
食事はとても美味かったので、料金等を考えるとやはりこの宿屋はお得だと言えるだろう…
食事の後、朝食の時間を伝えにいくためレオナ達には先に部屋に戻ってもらい厨房に行くとちょうどマリンがいたため尋ねてみると…
マリン曰く、ちょうど空いていたのと俺達のことが気になり近くで観察していたかったそうだ…
話していた時に好きな食べ物などを聞いてきたので、好物の配慮もしてくれるのかもしれない。
話している時に顔が赤かったが…きっと男性と2人きりで話すことに緊張でもしていたのだろう…
部屋に戻ると疲れていたのかレオナとルアはすでに寝ており、ウニは部屋にいなかったのでちょうどいいなと思い俺はそっとドアを閉め…とある部屋へと向かう。
部屋のドアを開けるとそこにはすでに人がいたので話しかける…
「待たせたか?」
「いいえ、そんなに待っていませんよ。」
「アイツらが寝ていたのは…お前の仕業じゃないよな?」
「私にそんなスキルはありませんよ…それはセンヤ様が一番良く知ってることでは?」
「そうなんだが…タイミングが良い気がしてな…」
「2人きりの秘密ですものね…」
「そのうち秘密じゃなくなるかもしれないが…初めてはやっぱお前がいいからな…」
「そう言っていただけると…嬉しいです。」
俺は話しながらその人がいるベッドへと向かう…
「それじゃあ…始めましょうか?」
俺達はまだ眠ることができそうにない…
センヤの口調が強気なところは牽制のようなものです。初めてのことばかりなので舐められないように意識しております。宿屋は毎日お世話になる場所で印象が大事なのでちゃんとしてます。




