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王妃様のお茶会

ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。

リグハーヴスの収穫祭初日、王宮では……。


78王妃様のお茶会


「もうすぐでしょうか……」

「ふふ、そんなに覗き込んでいたら、エンデュミオンが驚いてしまいますよ」

 侍女控え室を入口から覗いている若い侍女に、王妃エレオノーラは刺繍の針を止めずに微笑んだ。

 エレオノーラが時間を見付けては刺繍をしているのは、趣味ばかりではなく、時々行われるバザーで売り、その売上を孤児院に寄付しているからだ。

 お菓子などは王妃と言う立場上作り難いし、ハンカチへの刺繍なら、作りためておいても腐らない。

 白いハンカチへ、小さな花や鳥を一つ刺繍したものは、平民のバザーでも手が届く手頃な値段を付けられる。孤児院への寄付の為のバザーは匿名で出品する決まりなので、よもや王妃が刺繍した物だとは解らないだろう。

 側妃達もそれぞれの出身領へ、同じ様に刺繍やレースを送り、地元の孤児院へ売上を寄付している。

 エレオノーラは王都とリグハーヴス公爵領のバザー用に、刺繍入りのハンカチを作っていた。

「来ました」

 侍女の弾んだ声に、エレオノーラは針を止め、裁縫籠に布を置いた。


 侍女控え室にお菓子の入った木箱と共に〈転移〉したエンデュミオンは、戸口から見ていたまだ少女と言って良い侍女と目があった。エンデュミオンにティーポットを落とした侍女だ。

 偶然が重なっただけの事故なので、彼女を恨めしく思っていたりはしないが。

こんにちは(グーテンターク)、エンデュミオン」

 侍女の後ろからエレオノーラが現れた。

「こんにちは、エレオノーラ。運んで来たぞ」

「有難う存じます」

 膝を軽く曲げてお辞儀するエレオノーラに頷き、エンデュミオンは木箱を前肢で示した。

「アルフォンスの所から皿が運ばれて来たから、ケーキ(クーヘン)はそれに載せたぞ。クッキー(プレッツヒェン)砂糖菓子ツッカァズゥジィグカイトはそちらで盛るといい。湿気ってしまうから」

「はい。ケーキの皿をワゴンに載せて下さいな」

 エレオノーラに命じられ、二人の侍女が木箱の蓋を開け、控え室の端に寄せてあったティーワゴンに銀色の覆いを掛けられたケーキ皿を載せていく。

「こちらがクッキーと言うものと、砂糖菓子ですね」

「ああ」

 大きめのガラス瓶に入れられたアイスボックスクッキーと、和三盆の打ち菓子を見て、エレオノーラの目が輝く。

「まあ、薔薇ローゼの形の砂糖菓子なのですね」

「赤と白だ。味は同じなんだが。これは、味見用だ」

 エンデュミオンはポケットから<Langueラング de chatシャ>の紙袋に入った打ち菓子を出してエレオノーラに渡した。

「有難う存じます。ほら、あなた達も」

 紙袋の中には三つ赤い薔薇が入っていた。エレオノーラは、侍女達と一つずつ口に入れる。

 赤い薔薇の砂糖菓子は、口の中でほろりと溶けた。とても細かい砂糖で出来ているのが解る。

「甘い……」

「んー」

 侍女二人が頬を押さえて悶える。黒森之國くろもりのくにの家庭で作る菓子とは違った甘みだ。

「……美味しいですわ。他のお菓子も楽しみです」

 舌に残る砂糖の甘みを惜しみたくなる菓子だ。エレオノーラは〈異界渡り〉の技術に舌を巻いた。

 届けられた菓子を全て確かめ、エレオノーラはエンデュミオンの前にしゃがんだ。ふわりと淡い水色のドレスが広がる。

「ヘア・タカヒロと<Langue de chat>の方々にお礼を申し上げます。それから、何か御礼をと思うのですが、ご希望の物などありますか?」

 エンデュミオンは短い前肢を組んだ。

「うーん、材料費は貰っているし、特に何も要らないと、孝宏なら言いそうだがなあ。孝宏やエンデュミオンに何か頼み事が出来たら、力になってくれ」

「それで宜しいのですか?」

「うん。<Langue de chat>や孝宏が大切にしている人達については、アルフォンスが気を配っているだろうし」

「承知致しました」

「ではな。お茶を楽しんでくれ」

 エレオノーラの目の前から、エンデュミオンの姿が消える。

 今日からリグハーヴスでは収穫祭エァントダンクフェストの筈だ。エンデュミオンも主達と収穫祭に行くのかもしれない。

「さあ、準備致しましょう」

 優雅な動きで立ち上がり、エレオノーラは侍女達にお茶会の仕度を命じた。


 ローデリヒは黒森之國の第一王子だ。だが母親は側妃カサンドラであり、立場としては微妙だ。

 父王であるマクシミリアンも王妃エレオノーラも側妃の息子だからと言って、ローデリヒを冷遇したりしなかった。

 エレオノーラは、乳母に任せきりで週に一度会えば良いカサンドラなどとは違い、赤ん坊の頃から毎日の様に顔を見に来てくれたものだ。

 子供の頃は、「なぜたまにしか来ない女が母親と名乗るのだろう」と不思議に思っていた位だ。上流階級の子育ては、実際そんなものだったのだが、エレオノーラはどちらかと言えば平民寄りの子育てを選んでいたのだった。

 第二王子レオンハルトをエレオノーラが産み、構って貰えなくなると思っていたローデリヒだったのだが、予想に反してお茶に誘われる様になった。

 レオンハルトのおやつの時間に合わせて、お誘いの精霊ジンニー便が届くのが密かなローデリヒの楽しみだった。

 カサンドラは勿論気に入らない顔をしていたが、王妃からの誘いを断る訳にもいかず、ローデリヒはエレオノーラとレオンハルトとのお茶を楽しんだ。

 そして先日、王太子の決定が下された。

 王太子は第二王子レオンハルトに決まり、ローデリヒは臣として仕える様に、との決定を当然の事として受け取った。臣籍降下は今のところ命じられてはいないが、継承権は無くなる。

 王太子選定後、ローデリヒの生活は変化した。

 まずはカサンドラがあからさまに不機嫌になり、ローデリヒに講義をしていた教授の何人かが辞任を申し出た。王にならないローデリヒに教える理由は無いらしい。その足でレオンハルトの元に雇用を願い出たが、門前払いを食ったと噂で聞いた。

 そして、正妃候補として婚約していた準貴族の娘の家から、婚約破棄が願い出された。ローデリヒとしては、まともに顔も見ていない娘だったので、どうでも良かった。

 こちらもレオンハルトの婚約相手として乗り換えるつもりだったらしいが、聞き付けたマクシミリアン王直々に「恥を知れ」と叱責されたと言う。

 ローデリヒにはもう一人婚約者がいる。位階第三位の騎士の娘シャルロッテで、学院を出た魔法使いだ。王族の妃は治癒能力がある事が、資格の一つであり、シャルロッテも治癒能力がある。

 側妃になる予定だったシャルロッテが、ローデリヒの正妃に繰り上がったのだが、伝えられても本人は「まあ、そうですか」としか言わなかったらしい。

(さて、どうしようかな)

 王妃エレオノーラから久し振りに来たお茶会の招待状には、「珍しい菓子があるのでシャルロッテも連れていらっしゃい」と書いてあった。

 ローデリヒはまだ十三歳、珍しいお菓子にはとても興味がある。それにシャルロッテは同い年で、何度か父親に連れられて年始の挨拶に来ていたので、会話を交わした経験もある。

(シャルロッテ殿の父君に出すべきだな)

 なるべく丁寧な字になる様に気を付けて、ローデリヒは手紙を書き、風の精霊(ウィンディ)に託した。

 精霊便の返事は直ぐに戻って来た。「喜んで娘を向かわせます」と記してあり、ちょっぴり心が浮き立ったローデリヒだった。


 お茶会の始まる少し前に、シャルロッテはローデリヒの部屋へ侍女に案内されて来た。

 淡い金髪の横髪は三つ編みにされ、すっきりと後頭部で纏められ、ドレスと同じ少し光沢のある緑色のリボンで結ばれていた。ドレスの裾には、小花の刺繍が入っていて清楚だ。

「こんにちは、ローデリヒ様」

 淑女の礼の後、シャルロッテはローデリヒの顔をちゃんと見て微笑んだ。以前と変わらぬ利発そうな青い瞳だった。

「こんにちは、シャルロッテ殿。では行きましょうか」

「はい」

 ローデリヒの用意した腕にそっと指先を乗せ、シャルロッテが隣に並ぶ。

 お茶会は後宮の談話室で行われる。シャルロッテをエスコートしながら談話室迄行くと、ドアを両脇に立っていた騎士が開けてくれた。礼の代わりに軽く頷き、談話室に入る。

 談話室の中央には赤いテーブルクロスと白いテーブルクロスを重ねた丸テーブルが三つ並んでいた。その上に菓子の皿が載せられている。壁際にはティーテーブルと椅子が並べられ、皿に取った菓子をそちらでお茶と楽しめるのだ。

 ローデリヒはまずシャルロッテと一緒に、お茶会の主催者であるエレオノーラの元に挨拶に向かった。

「王妃様、お招き頂き有難う存じます」

「いらっしゃい、ローデリヒ、シャルロッテ。さあ、お菓子を取っておいでなさい」

「はい、王妃様」

 中央のテーブルでは、レオンハルトが専属侍女のティアナと菓子を選んでいた。

「兄上!」

 ローデリヒの顔を見て、笑顔になる。

「素晴らしいです。みんなタカヒロのお菓子ですよ」

「タカヒロ?」

「リグハーヴスの〈異界渡り〉です。タカヒロのお菓子は美味しいんです」

 レオンハルトの皿には、緑色のケーキが載っていた。

「鮮やかな色だね」

倭之國わのくにのお茶を使っているそうです」

「なんと、倭之國の食材を使えるとは、珍しい……」

 輸入してはいるが、倭之國の食材を扱える料理人は少ないのだ。

 レオンハルトがティアナとティーテーブルの方へ行ったので、ローデリヒとシャルロッテはまずは一通り菓子を見る事にした。

 先程レオンハルトが持っていた緑色のケーキは細長い丸い筒状のものだった。どうやっているのか不明だが、緑色の生地に白い線で花弁の模様が描いてある。巻いてあるクリームには紫色の豆が入っていた。

 他のケーキは柔らかそうな淡黄色の生地にベリー類を黄色いクリームで挟み、白いクリームで覆ったものだ。ケーキの上部もベリーで覆われ、何故か艶々と光っている。

 最後の一つはタルトで、型に注がれた生地の一面に薔薇の花が咲いていた。林檎アプフェルの香りがするので、薔薇は林檎で出来ているらしい。

「まあ……初めて見るお菓子です」

 シャルロッテが思わず呟く。

 手軽に摘まめる様にと用意された皿には、焼き菓子(プレッツヒェン)が綺麗に並べられていた。茶色と白の市松、緑と白の渦巻き、薄黄色と白の縞のクッキーだ。

 硝子の脚付きの器には、濃いピンク色とクリーム色の薔薇の形の砂糖菓子ツッカァズゥジィグカイトが盛られている。

 他にも孝宏はパステルカラーのマシュマロなども、木箱に入れていた。

 シャルロッテはアップルローズタルトを選び、ローデリヒはベリーのショートケーキを選んだ。

 クッキーなども、少しずつ別の皿に二人分とり、ティーテーブルに移る。

 自分の専属侍女にはお菓子の味を楽しみたいので、癖のないお茶を頼んだ。

「今日の恵みに。月の女神シルヴァーナに感謝を」

 食前の祈りを唱え、デザートフォークを取る。

「──っ」

「──っ」

 一口ケーキとタルトを口に入れ、ローデリヒとシャルロッテは目を瞠った。

「美味しいです」

「何だ、この生地の軟らかさ」

 じっ、とお互いの皿を見る。

「……一口、いかがですか?ローデリヒ様」

「シャルロッテ殿もいかがですか?」

 行儀が悪いかもしれないが、我慢出来ずお互いの皿のケーキを一口ずつ味見する。

「こちらも美味しいです」

「本当に」

 ケーキとタルトを食べ終え、二人はクッキーに手を伸ばす。

「ふわあ、さくさくです」

「この緑色の部分は倭之國のお茶なのか。こちらは檸檬味とは」

 薔薇の砂糖菓子は、二人とも黙って口溶けを楽しんだ。ティーカップを手に溜め息を吐く。

「如何でしたか?」

 いつの間にかエレオノーラがティーテーブルの近くに来ていた。二人は椅子から立ち上がった。

「とても美味しかったです」

「初めての物ばかりで、楽しませて頂いております、王妃様」

「召し上がっていない物があったら、行ってらっしゃい。まだお腹に余裕があるでしょう?」

 悪戯っぽくエレオノーラが微笑む。そこへつんとすました声が割って入った。

「王妃様、ごきげんよう」

「あら、カサンドラ」

 ローデリヒの母親であるカサンドラが、他の側妃クリスティーネとフリーデリーケを連れて、談話室に入って来ていた。

 息子のローデリヒと婚約者のシャルロッテは、視野の外らしい。いつもの事だが、用事がある時以外は、彼女にとってローデリヒは見えない存在なのだ。特に王太子にならなかった息子は。

「今回はリグハーヴスの作り手にご依頼になったとか」

 扇の陰でくすくすとカサンドラが笑う。〈作り手〉と言う時は職人以外を差す。フィッツェンドルフの豊かな準貴族の娘であるカサンドラが主催する時は、お茶会の菓子はちまたで有名な〈職人〉を選び抜いて作らせていた。王都の有名菓子職人は大概がカサンドラの専属になっていると言って良い。

「ええ、とても腕の立つ作り手ですのよ。縁があって作って頂けましたの」

「そうですの。わたくし、先日王妃様の元にケットシーが現れたと小耳に挟みましたわ。ティーポットをぶつけて気絶させたとか」

「まあ嫌ですわ、一寸ちょっとした事故ですのよ」

 時間が惜しく、侍女がジークヴァルトに説明しながら移動していたのを、カサンドラの息が掛かった者が聞いていたのだろう。

「わたくし、何故気絶したケットシーに従属の首輪をお付けにならなかったのか、不思議に思いますわ」

「あらあら、カサンドラは怖いもの知らずだ事」

 ほほほ、とエレオノーラが上品な笑い声を上げたが、目は全く笑っていなかった。

「ケットシーは黒森之國くろもりのくにの宝。あるじを選ぶのはケットシーですよ?それにあの様に可愛らしい子達に、無下な事は出来ませんよ」

「獣ではありませんか」

 カサンドラは鼻の頭に皺を寄せた。

妖精フェアリーですわ」

 きっぱりとエレオノーラは訂正し、追加する。

「それに、あなたが従属の首輪を着ければ良い、と言った相手はエンデュミオンですよ。もしこの事をエンデュミオンが知ったらどうなるでしょうね」

「呪うんじゃないですか?」

 ティアナにベリーのショートケーキを皿に取って貰いながら、レオンハルトがけろりと言う。

「ケットシーは主から無理矢理離されたら怒るでしょうから。特にエンデュミオンは王族が嫌いですし」

 六百年も拘束されれば厭がられて当然だ。

 エンデュミオンと聞いて、流石にカサンドラの顔色が変わる。

「……エンデュミオンとはとっくに亡くなっている大魔法使い(マイスター)エンデュミオンですの?」

「そのエンデュミオンですわね。王も既にご存知ですのよ。彼も彼の主も庇護下にありますから、お気をつけ遊ばせ。……立ち話の時間が勿体無いですわね、どうぞお菓子を召し上がれ」

「え、ええ。そう致しましょう」

 そそくさとカサンドラが中央のテーブルに向かい、側妃の二人も後に続く。

「あの、王妃様。今のお話は……?」

「灰色で縞のある身体に黄緑色の大きな目のケットシーは、エンデュミオンなのですよ。もし会う事が出来たら、決して失礼な態度を取ってはいけませんよ」

 礼には礼を返すのがケットシーですから、とエレオノーラはローデリヒとシャルロッテに微笑んだ。

 事故とはいえエレオノーラは、侍女が作ったエンデュミオンのコブを〈治癒〉した。最初は依頼を受けるか迷っていた孝宏が、引き受けてくれたのはそのお礼だと、エンデュミオンは手紙に書いていた。

 引き受けた理由が理由なので、エンデュミオンも反対しなかったのだろう。

「んまあ!何ですの?この菓子は」

 中央のテーブルから、カサンドラの高い声が上がった。

「あらあら。ゆっくりしていらしてね」

 エレオノーラはローデリヒとシャルロッテから離れ、ゆっくりとテーブルに歩み寄る。

「どうかなさいまして?カサンドラ」

「この菓子は何ですの?この様な菓子はわたくしの菓子職人も作りませんのに」

 豪華な刺繍のされたハンカチをに握り締めて、カサンドラがエレオノーラを振り返る。

「リグハーヴスに〈異界渡り〉が降りたのはご存じですわね?その方が作った物ですわ。ちなみにエンデュミオンの主ですの」

「〈異界渡り〉ですって?」

「随分と賑やかなお茶会だな」

「王様」

 談話室に入って来たマクシミリアンに、全員が立ち上がり頭を下げる。

「楽にすると良い」

「王様、お聞きになりまして?こちらの菓子を作ったのが〈異界渡り〉なのだそうです」

 カサンドラが早速マクシミリアンに近付く。マクシミリアンはテーブルに並んだ菓子に目を細めた。

「リグハーヴス公爵から話は聞いていたが、素晴らしいな」

「何故王宮に召し上げませんの?いいえ、リグハーヴス公爵は王宮に献上するべきですわ」

「残念ながら、〈異界渡り〉の所有権はエンデュミオンとリグハーヴスの住人の一人が持っているのでな。彼をリグハーヴスから取り上げる訳にはいかぬのだ」

 見付けた者が所有者になると言う決まりは、古来から続いている。

「でしたらその者達から献上させれば宜しいのですわ」

「大魔法使いのケットシーから、どうやって献上させるのですか?カサンドラ。王都が呪われますよ」

 胸を張るカサンドラに、エレオノーラは呆れてしまった。マクシミリアンも同意する。

「そうだな。カサンドラ、子供の様な事を言うものではない。〈異界渡り〉に安寧の場所を与え、友好関係を築いた方が実りがあると言うものだ。エレオノーラ、どの菓子がそなたのお薦めだ?」

「ふふ、どれも美味しいのですよ」

 マクシミリアンがエレオノーラに菓子の説明を受ける姿に、カサンドラがハンカチをグシャグシャにする。クリスティーネとフリーデリーケの側妃二人は顔を見合わせ、カサンドラを置いて菓子を選びに行った。

(やれやれ……)

 そんな母親の姿を見て、溜め息が出てしまうローデリヒだった。


 この件以外はお茶会は和やかにして終わり、残った菓子は手伝った侍女と騎士に下げ渡された。

 珍しい菓子と共に催された王妃様のお茶会は、〈幻のお茶会〉と呼ばれ、再びの開催を心待ちにする者も多かった。



レオンハルトとローデリヒは兄弟仲が良いのです。

ロールケーキの白い模様は、まず白い模様(の生地)だけを絞り出して少し焼き、その上に抹茶の生地を流して再度焼いています。柄物のロールケーキはこの様に作るらしいです。

文字などを書く場合は反転して書けば良い訳ですね。


王様と王妃様も、地味にラブラブ……。

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