448人が消える家(中)
ルリユール〈Langue de chat〉は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。
腹が減ってはなんとやら。
448 人が消える家(中)
「ヴ~」
「すまんな、ヴェスパ。帰って来たら、ヴェスパが着られる飛行服をマリアンに頼むから」
イシュカに抱っこされた状態で耳を伏せ、不満げな声を上げるヴェスパを、エンデュミオンが宥める。ヴェスパの足がしゅっしゅっと動いているのは、スタンピングしたいのだろう。
昨夜、王都まで竜で行くと聞いたヴェスパも一緒に行きたがったのだが、蹴撃を行うカニンヒェンプーカのズボンは、エンデュミオンの物では合わない。温度管理の付与をされた飛行用の服でないと、竜に長距離乗るには心もとないのだ。
「王都に着いたら〈転移〉で迎えに来るから。一緒に建物を調べような」
「ヴ!」
伏せていたヴェスパの耳が、ぴょこんと立ち上がる。納得したらしい。
孝宏はヴェスパの外套を壁掛けから取って、ソファーの上に置いた。フード付きのPコートのようなヴェスパの外套は、蹴撃の時に開脚出来るようにAラインで作られている。エンデュミオンの直弟子になったので、深緑色の外套の胸元には、〈精霊樹と眠る竜〉の紋章が銀糸で刺繍されている。解る人が見れば、エンデュミオンの庇護下にあると一発で解るらしい。〈眠る竜〉は眠る竜を起こすな、という意味もあるのだとか。物騒である。
「そろそろ時間だな」
懐中時計を確かめて、エンデュミオンが言った。既に孝宏とエンデュミオン、テオとルッツ、ビブリオとアルスは準備万端だ。
「では行ってくる」
「気を付けてな」
イシュカとカチヤに見送られ、リグハーヴスの街の外にある草原に〈転移〉する。リグハーヴス公爵領は、森林と草原が殆どだ。吹き曝しの草原に積もった雪は、すっかり表面が凍っていた。
「凍ってるね」
「昨日、離着陸の為に、氷の精霊に固めてもらったんだ。滑らないようにしてもらったんだが……うん、大丈夫そうだな」
氷の表面はざらざらしていて、ブーツでも滑らない。
「きゅー」
幼体化した状態で鞍を着けた翡翠色の木竜グリューネヴァルトが、のんびりと頭上を旋回している。エンデュミオンを乗せて飛べるからか、朝からご機嫌だ。
─おはよー。
孝宏の頭に思念が飛び込んで来た。領主館のある丘の方から、薄紫色の雷竜レーニシュが飛んで来るのが見える。
レーニシュはふわりと危なげなく氷の広場の上に降り立った。
「おはよう」
「おあ!」
プラネルトの腹側にハーネスでくっついている魔熊エアネストが、孝宏に四本ある前肢を振る。エアネストは定期的に飛行訓練をして、今でははしゃがずに乗れるようになっていた。最初の頃は興奮しすぎて落竜しそうになっていた。
「グリューネヴァルト、乗せてくれ」
「きゅっきゅー」
エンデュミオンの呼び掛けに、グリューネヴァルトが成竜化して下りてくる。氷の上に下り立ったグリューネヴァルトの鞍にある梯子をまず孝宏が上って、ビブリオとアルスを籠状の鞍に座らせてベルトを締め、膝掛けの毛布で包む。
それからエンデュミオンを孝宏とハーネスで固定する。
「最後に俺も鞍のベルトを着けて……よし!」
孝宏が準備を終える頃に、テオとルッツもレーニシュの鞍に上がっていた。手信号で準備完了を伝え合う。
すうっとグリューネヴァルトが先に浮上する。次いでレーニシュが浮上するのを待ち、並んで王都へと竜首を向ける。
今日は所々に薄い雲があるが、天気は良い。その分寒いが、グリューネヴァルトとエンデュミオンが風の精霊と火の精霊に頼んで周りを温めてくれているので、飛んでいる間の方が快適だったりする。
「エンディ、途中で休憩したりする?」
「今は雪があるからなあ。一気に王都まで行って、王都竜騎士隊で休憩させてもらった方がいいかもな」
「そっか」
グリューネヴァルトは竜の中でも大きい。下りる為の場所が居る。
「わああ、高ーい」
「たううー」
孝宏の前にある籠席では、ビブリオとアルスがはしゃいでいた。黒森之國の古地図の写しを持って来たようで、実際の地形と照らし合わせては色鉛筆で書きこんでいる。書きやすいように折り畳み式の画版まで持ち込んでいた。
「飛行服が出来たら、ヴェスパとアメリも乗せてやるか」
「そうだね、喜びそうだね」
ヴェスパは元より、アメリは目が見えないものの、結構行動的なのだ。
ご機嫌なグリューネヴァルトとレーニシュにより、休みなく飛び続けた一行は昼前に王都上空に辿り着いた。
「たうう?」
「そうだ、ここが王都だぞ。あそこに見える森を背後にした大きな城が、王城だ」
アルスにエンデュミオンが説明する。
王城横にある王都竜騎士隊本部の上空で待機し、発着場の降下許可が下りるのを待つ。
地上に居る竜騎士隊員が降下許可の手旗を持ってきて振るのが見えた。先に慣れているレーニシュが降下し、プラネルトとテオが素早く竜から下りて発着場の端に駆けて行く。レーニシュもすぐに幼体化し、プラネルトの元へ飛んで行った。
再度手旗が降られ、グリューネヴァルトが降下する。雪のない地面に完全に下りたのを確認して、プラネルトとテオがビブリオとアルスを受け取りに来てくれた。
ビブリオとアルスもエンデュミオンの予備の騎士服を着ているので、一寸黒い騎士服人口が増えている訳だが、孝宏が〈異界渡り〉で王族と同じ黒い騎士服と決まっているので致し方ない。基本的に制服は憑いている主に準ずるのでだ。
テオとルッツも族長候補者の濃赤の上着なので、まだ気が楽だ。プラネルトとエアネストはテオの護衛の時は、普段と同じ竜騎士用の青い騎士服である。
「皆様、お疲れ様でした」
「久し振り。トーマ」
迎えに出てくれたのは、王都で孝宏とエンデュミオンの従騎士担当になっているトーマだった。事前に連絡をしていたので、待ってくれていたようだ。
「休憩用の部屋をご用意しております。宿泊される場合も、お部屋をご用意致しますよ」
「有難う。まずは昼食を摂りたいので、休憩用の部屋に案内してもらっていいかな」
「承知致しました。ではこちらにどうぞ」
トーマの先導でぞろぞろと移動する。立ち止まりそうなビブリオとアルスは、テオとプラネルトに捕獲されていた。
案内されたのは、一階にある応接室だった。上階にある応接室の方が調度品も豪華でお貴族様向けらしいのだが、孝宏達の人となりを知っているトーマは気を使わなくていい方の応接室を選んでくれたようだ。
「お弁当を作って来たんだよ」
「ではお茶を淹れましょうか」
「有難う。トーマも一緒に食べない?」
「宜しいんですか?」
「いっぱい作ったので」
足りないよりはいいかと思ったのだ。
「では有難くいただきます」
トーマは台所のある続き小部屋から、三本足の椅子を持って来る。
「トーマ、お茶はトーマの分も含めて三人分追加だ。今一人迎えに行って来る」とエンデュミオンが言って、〈転移〉で消える。
「一人迎えに行って、三人分増えるんですか?」
不思議そうなトーマに、孝宏は騎士服の襟を緩めて、胸元を軽く叩いた。
「ヴィント、もう着いたよ」
孝宏の声にもそりと布地の下が膨らみ、襟元からモモンガ姿のクライネスヴィントが顔を出す。くすぐったいが可愛いので我慢する。
「ヒロ、ここ王都?」
「王都の竜騎士団本部だよ」
「わあー」
するりと孝宏の肩に移り、大きな黒い目でクライネスヴィントが部屋を見回す。
「ヘア・ヒロ、その子は……?」
「俺の魔刀の中身の風の妖精クライネスヴィントだよ。ペーパーナイフなんだ」
「ペーパ―ナイフ」
何故か、クライネスヴィントがペーパーナイフだと言うと、皆この反応をする。妖精憑きのペーパーナイフはクライネスヴィントだけのようだ。
風の魔法が使えるので、多分クライネスヴィントは孝宏より戦闘能力がある気がするのだが、このモモンガはふわふわ飛んでいたり、孝宏の料理の手伝いをするくらいしか風の魔法を使っていなかったりする。風呂上がりの濡れた髪や、書いた万年筆のインクを乾かしてもくれるので助かっている。
ポンッと部屋の中に、エンデュミオンとヴェスパが現れた。
「ヴェスパを連れて来たぞ」
「ヴ! ヴヴ?」
嬉しそうに孝宏の膝に抱き着いたヴェスパは、トーマを見て首を傾げる。知らない人が居ると思ったのだろう。
「従騎士のトーマだよ、ヴェスパ」
「ヴ!」
ヴェスパはトーマに向かって、右前肢を上げた。
「これはご丁寧に。トーマと申します」
トーマもきちんと騎士の礼をヴェスパに返す。
「ヴェスパはエンデュミオンの直弟子だ。まだお披露目をしていないから、それなりに秘密にな」
「承知致しました」
それなりに秘密とはなんだろうか。孝宏と同じ事を思ったのか、トーマも苦笑している。
「お茶を淹れて参りますね」
トーマが続き部屋にある台所に向かう。
「ごはーん」
「たうー」
「お腹空いた」
椅子に座ったルッツとアルスとビブリオが、自分のお腹を擦る。座って飛んでいただけだが、意外と腹は減る。
孝宏は〈魔法鞄〉からお弁当の包みを取り出して、テーブルに乗せた。重箱サイズの重ね容器に入った、たっぷりおかずと蝋紙に包んだサンドイッチとおにぎりの籠だ。
「沢山作ってくれたんだね」
プラネルトが驚いていた。〈Langue de chat〉の通常運転だったりするのだが。足りないよりはいいかと思ったのだ。
トーマが大きな紅茶のティーポットとマグカップ、子供用なのか小さいマグカップをティーワゴンに乗せて戻って来た。
「王都の流行りの紅茶は花や果物の香りがあるものが多いのですが、食事用のお茶なので、癖のないものにしてみました」
「へえ、そうなんだ。王都の人は余り紅茶にミルクを入れないのかな」
「そうですね。砂糖や蜂蜜、檸檬をお使いになる方が多いですよ」
無駄のない動きで、トーマがティーポットからマグカップにお茶を注ぐ。
「リグハーヴスだとミルクを入れる事が多いよね?」
孝宏はエンデュミオンに訊いた。エンデュミオンが頷く。
「身体を動かして働く人が多いから、栄養面でそうなったのかもな。せっかちでお茶の温度を下げる為もあるか? だからか、普段使いにはミルクと合わせても美味しい茶葉が好まれるな。リグハーヴスだと花茶も良く飲むな」
各領地によって好みが別れそうである。
「今日の恵みに。月の女神シルヴァーナに感謝を」
「今日の恵みに」
「いただきます」
食前の祈りを唱え、それぞれ好みのサンドイッチやおにぎりを取る。
「ん?」
ブルーベリーとホイップクリームを挟んだコッペパンをナイフで三分の一ほど切って、クライネスヴィントに渡した孝宏は、視線を感じて窓を見た。この部屋は発着場に面しているので、左右に分けてタッセルで留められたカーテンの間から、低い生垣越しに外が良く見える。
「……ヴェヒテリン?」
そこには窓枠に前肢を掛けて部屋を覗いている、見覚えのある黒い竜がいた。
「んぐ、何しているんだ? ヴェヒテリンは」
焼き鮭のおにぎりを飲み込み、エンデュミオンが呆れた声を出す。ヴェヒテリンは王弟でもある王都竜騎士隊長ダーニエルと契約している闇竜だ。
トーマが慌てて窓を開けに行く。ヴェヒテリンはトーマに「有難う」と礼を言って、部屋の中に入って来た。声はキリッとした女性の声だ。人型になった時も怜悧な女性の姿だったりする。
「吾は待っていたのに、挨拶に来ないから来た」
「腹が減っていたんだ。食べたら挨拶に行くつもりだったんだが、ヴェヒテリンも食うか?」
「うむ」
不満げにぼやいたヴェヒテリンに、エンデュミオンがシロップ煮の桃とホイップクリームを挟んだコッペパンを渡した。幼体化しているので自分の大きさと余り変わらないコッペパンに、口の中で食前の祈りを早口で唱えたヴェヒテリンが齧りつく。
「美味い!」
「いっぱいあるからおかずも食べてね、ヴェヒテリン」
「うむ」
ヴェヒテリンの食の好みはエンデュミオンに近いと孝宏は思っているので、好きそうなおかずをトーマが用意してくれた皿に乗せて身体の前に置いてやった。
「これ美味しいー」
「たうー」
ビブリオとアルスはおかかと角切りチーズのおにぎりを食べて尻尾をぶんぶん振っている。コボルトにチーズは外れない。
「ふむ、カニンヒェンプーカと変わった色のコボルトか」
ヴェヒテリンが口元に付いたクリームを桃色の下でぺろりと舐めて、千切り人参を巻いた肉巻きを食べているヴェスパと、甘い卵焼きに前肢を伸ばすビブリオを見て言った。
エンデュミオンが絶叫鳥のザンギにフォークを刺す。
「カニンヒェンプーカのヴェスパはエンデュミオンの二人目の直弟子だ。焦がしカラメル色のコボルトはビブリオだ」
「ビブリオ? 何処にいたんだ?」
「えっ、ビブリオですか!?」
ヴェヒテリンよりも、トーマが驚いた声を上げる。感覚的には長命種のヴェヒテリンは暫く振りという感じだし、平原族のトーマにしてみれば失われていたものが突然現れた状態だろうか。
「マクシミリアンにはアルフォンスから連絡が行っている筈だが、〈Langue de chat〉の前の住人が神殿時代の神官司書の末裔だったようだ。うちの屋根裏部屋にいたんだ。アルスがビブリオの専属司書になったから、内密にな。探したい本があれば精霊便で問い合わせを受ける形になると思うぞ」
「神殿時代の失われた書籍か。研究者が騒ぎそうだな」
「うちはルリユールと診療所だからな。直接来てもビブリオの本は貸せないぞ」
「写本を取らせるか、複製本を渡すかだろうなあ。しかし、そのうち古代シルヴァーナ大図書館に入りたいと言われるぞ」
「そうなんだよなあ……屋根裏以外の出入り口を検討するべきか? エビマヨ美味いぞ、ヴェヒテリン」
エンデュミオンがヴェヒテリンにエビマヨを勧める。
「む、この白いのは中々美味い」
お気に召したようだ。初めての物でも躊躇わずに口に入れる闇竜である。
「あの、私が聞いていい話ですかね……」
卵サラダのコッペパンを持ったままトーマが震えているが、孝宏とエンデュミオンの専属従騎士になっている段階で諦めてもらった方がいい。
「大丈夫、大丈夫。リグハーヴスに居る方が、色々あるからね」
プラネルトが笑いながら、エアネストの汚れた前肢を拭いている。
「えっ」
「大丈夫、大丈夫。場合によってはリグハーヴスに転属させてもらえると思うしね」
テオもルッツのお茶を冷ましながら頷く。トーマが愕然となる。
「どんな状況なんですか……」
「ある日唐突に、悪魔の錬金術師と双子の靴磨きの妖精と家事妖精が従業員になったりするんだ」
「えっ」
テオの暴露に驚き続けるトーマに、孝宏は口を尖らせた。
「主募集中のお隣さんだったんだから仕方がないじゃん。ンガガルとンガガロ可愛いよ」
絶対に右足の靴しか磨かないンガガルと、絶対に左足の靴しか磨かないンガガロという靴磨きの妖精達だが。
「癖が強いですね」
仰るとおりである。
皆のお腹が膨れた所で「あ、ダーニエル忘れてたな」とヴェヒテリンが言ったので、数本残っていたコッペパンを紙袋に入れた。一本ずつ蝋紙に包んでいるので、仕事しながらでも食べられる筈だ。紙袋の底には、ラム酒につけた干し果物入りで、熟成させる時にもラム酒を染ませた大人用パウンドケーキを一本忍ばせる。酒にも合う、甘くシロップで煮てから干した、輪切りオレンジの半分にチョコレートを付けたものも一袋入れておく。
『これを袖の下にしよう』
孝宏の賄賂は菓子である。
ヴェヒテリンが隊長執務室まで案内すると言ったので、片づけをトーマに頼んでぞろぞろと二階に上がる。
「ダーニエル、戻ったぞー」
孝宏に扉を開けさせ、ヴェヒテリンが部屋の中に飛び込んで行く。
「失礼します」
「待たせたな」
エンデュミオンとヴェスパを先頭に、孝宏達も部屋に入る。
「リグハーヴスから遠路ご苦労様。休憩中なら休憩中と知らせに戻ってもいいんじゃないか? ヴェヒテリン」
「吾もお昼ご飯をご馳走になっていた!」
わははは、と悪びれずに笑うヴェヒテリンに、ダーニエルが諦観の溜め息を吐く。
「ダーニエル、これ休憩中の軽食にどうぞ」
孝宏は紙袋を、書類が綺麗に片付けられた執務机の上にそっと置いた。
「有難う、あとでいただくよ。陛下から連絡を受けてはいるが、城下街にある邸を調べてくれるそうだね」
「あの邸は商業区か?」
「そうだ。貴族区よりの商業区だな」
王都は中心に森を持つ王城区があり、その周りに貴族区、商業区、平民区と同心円状に外壁で分かれている。人口が増えるごとに外壁を増やしていったからだ。貴族区は王家の縁戚や王宮に勤めている上位貴族階級の官吏やその家族が暮らしている。商業区と平民区の違いは、商業区の方に大店が多いのでそう呼ばれているだけで、どちらにも下位貴族と平民が暮らしている。
「人が消えるのは本当なのか?」
「あの邸……まあ神殿時代の博物館だな、あそこに行ったまま帰ってこないという訴えが、騎士詰所に来ているのは間違いない。これが届け出書だ」
ダーニエルが抽斗から数枚の紙を取り出しだ。孝宏が抱き上げたエンデュミオンが、それにさっと目を通す。そして鼻の頭に皺を寄せた。
「んん? これ皆、研究者か。という事は、〈聖職者の穴〉を見付けて出て来られない……?」
「〈聖職者の穴〉とはなんだ?」
「孝宏が言うに、隠れ場所や抜け道があるんじゃないか、と。生きていればいいが、まあ研究者なら携帯食くらい持ち歩いているだろう」
それは彼らが、食事の時間を惜しんで携帯食で済ませているという意味だろうか。
「調べに行く時はトーマも連れて行ってくれ。予備の水や携帯食も持って行かせたい」
「解った」
トーマは連絡係だろう。本当に〈聖職者の穴〉が見付かれば、王都騎士団や王都竜騎士隊に知らせなければならない。
「行方不明者がこれだけ出ているから、博物館は閉めている。馬車の用意をさせよう」
「有難う、助かる」
「ところで、何人か見た事がない妖精が居るのだが?」
ダーニエルの視線が、今まで会った事のない妖精達に向けられる。エンデュミオンが紹介した彼らの素性に、ダーニエルが胃痛を堪えるような顔になったのは、気のせいだと思いたい孝宏だった。
結構自由なヴェヒテリンです。
孝宏は知らないけれど、普通は、悪魔の錬金術師や靴磨きの妖精や家事妖精が従業員になったりしないんですよ。
お隣さんもお隣さんで、ある意味隠居していた悪魔と家事妖精だったんですけど、前の主人が赤ん坊の靴磨きの妖精を拾って来たから……(そして二人に養育を頼んで亡くなったので)。
次回は神殿時代の邸にレッツゴーです。




