アメリと〈Langue de chat〉
ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。
アメリの洗礼式です。
365アメリと〈Langue de chat〉
「転生するのに〈不死者〉なの?」
森番小屋に現れたケットシーの赤ん坊の話を、エンデュミオンから聞いた時の孝宏の疑問はそれだった。
「死ぬような状況になった時、生まれ変わるんだ。〈不死者〉の身体はその場から消えて、全く違う場所に別人として現れる」
「ああ、不死鳥と同じなんだ」
リセットされる状況だ。でも全く別の種族に生まれ変わってしまうというのが違うけれど。
「ケットシーなのは初めてなのかな」
「エンデュミオンは初めて聞いたな。今までは人族だった。前の前の〈不死者〉までは聖都に居たから、教会は密かに〈不死者〉を捜している気はする。〈聖人〉もそうだが、悪用されると影響が出るものに関しては、教会が保護する傾向がある」
司祭ベネディクトの場合は聖職者だった事と、〈女神の貢ぎ物〉であるイージドールが見付かったので、僻地とも言えるリグハーヴスに留保されている。〈柱〉の神殿跡地にリグハーヴス女神教会が建っているので、その管理者代理にエンデュミオンが彼らを指定したからでもあるが。
結局エンデュミオンは、隣に住んでいると言っても良い元司教マヌエルには、〈不死者〉が現れたと知らせた。現司教フォンゼルへはマヌエルから知らせて貰う。リグハーヴス公爵アルフォンスにも教えない訳にはいかないので、エンデュミオンはアルフォンスの腹心でもある執事のクラウス宛に精霊便を書いて送っておいた。エンデュミオンから聞くよりは、マシかもしれないと思ったので。
〈不死者〉は言葉に力を持つが、それをどう使うかは育て方による。教会で育てば言祝ぎのみを唱えるように育てられるし、悪用されれば呪言ばかりを唱えるように育てられるだろう。呪言ばかりを唱えさせられた〈不死者〉は短命だ。
過去にマヌエルはエンデュミオンとの雑談の中で、聖都に居た前々の〈不死者〉に会った事があると言っていた。その〈不死者〉は老年に入りかけていたそうだ。
いちいち教会は〈不死者〉が寿命で消えたなどと発表はしないが、マヌエルが会った〈不死者〉の年齢を考えると、あの赤ん坊の前の〈不死者〉は数年しか生きられなかっただろう。非常に胸糞が悪い。
「ヒロー、ローリエとってきたよ」
ルッツが前肢に青々としたローリエの葉を持って、台所に入って来た。
「有難う。ルッツも壺に野菜入れる?」
「あいっ」
つるりとした茶色い壺に大きめに切った燻製肉と絶叫鶏のもも肉、こちらも大きく切った玉葱や蕪、人参、セロリなどの香草を詰める。
「ぎゅっぎゅー」
ルッツが楽しそうに人参を壺に入れている。ルッツが取って来てくれたローリエと塩と粒胡椒を入れて蓋をし、オーブンに入れて火蜥蜴のミヒェルにお任せだ。今日は人数が多いので、既にトマトと燻製肉と腸詰肉が入った豆のシチューも一つ作ってエンデュミオンに預けてある。
「ミヒェル、宜しく」
「はーい」
今日は昼にヘルマン達がやって来る。ヘルマン達もケットシーの里に行けるのだが、森から行くよりもエンデュミオンの温室経由で行った方がこの季節は安全だ。
彼らはケットシーの里に赤ん坊の顔見せをしにくるのだ。ついでに赤ん坊ケットシーをヴァルブルガにも診察をして貰いたいらしい。
赤ん坊ケットシーが来ると聞いて、ルッツは嬉しそうだ。テオが配達仕事を再開する春まで、子守のお手伝いに通う予定なのだ。
ヴァルブルガとヨナタンは、カチヤとヨナタンの部屋で、猛烈な勢いで子供用のベッドに合う布団を作っていた。
定期的に増える妖精の為に、大工のクルトが見本を兼ねて子供用ベッドを作って工房に置いていてくれるのが有難い。昨日エンデュミオンがそれを購入してきたので、ヴァルブルガ達は早速布団を作り始めたと言う訳だ。布はヨナタンのコボルト織があるし、エンデュミオンが溜め込んでいた、眠り羊の羊毛と絶叫鶏の特上羽毛、リグハーヴス産バロメッツの羊毛など使いたい放題である。
仕立屋のマリアンにも「そのうち服を頼みに来ると思うから」と伝えたら、半日後にはお昼寝毛布にも使えそうな綺麗な刺繍入りのおくるみを、ギルベルトが届けてくれた。春の広葉樹の葉のような綺麗な緑色の布で可愛らしい。
温泉に入りに来ていた肉屋のアロイスや靴屋のオイゲンには里のケットシーが話したらしく、上等の燻製肉や初めての靴の無料券が届いた。明らかに手書きの無料券を作ったのは靴職人コボルトのリュック・グラートだろう。靴を自分に作らせろという圧を感じる。釦職人コボルトのシュトゥルムからも、団栗やひよこ、花の形をした可愛らしい木工細工の釦が届いている。
〈薬草と飴玉〉のラルスには、今日勉強会に行ったアインスとシュネーバルが話しているに違いない。
ある程度街住みである近所の妖精達に知らせておくのは、〈不死者〉である赤ん坊に何かあった時の予防線だ。赤ん坊を知っていれば、たとえ誘拐されても追い掛けていけるのだ。
赤ん坊を育てる漂泊の民である人狼のハシェは、沼蛇の毒の後遺症がある。沼蛇の後遺症である麻痺は、冷えると強張りが出やすい。ハシェは温泉に浸かって行くだろうから、その間赤ん坊を妖精達に会わせればいいだろう。
今日は〈Langue de chat〉はお休みで、テオとカチヤはケットシーの里の大鍋にスープを作りに行っていた。イシュカは温室の広場に、敷物を広げに行っている。ついでにベリーの採取もお願いした。
「ただいま」
イシュカがベリーの籠を片手に居間に入って来た。ルッツが鼻の頭に皺を寄せる。
「イシュカ、ちのにおいする」
「革手袋持って行くのを忘れて、ラズベリーの棘に引っ掛けたんだよ」
イシュカは台所に来て、血が滲む赤いひっかき傷のある手の甲をルッツに見せた。ルッツの尻尾がぼふっと膨らんだ。
「いやーん。ルッツ、なおすよ」
「イシュカ、有難う。籠頂戴」
孝宏が籠を受け取り、イシュカの傷付いた手をルッツが確保する。魔女ではないのでルッツは大きな怪我は治さないが、小さな怪我はよく治している。走り回って、ちょくちょく転ぶからだ。
水の精霊魔法で傷口を洗浄し、〈治癒〉を掛けてあっという間にイシュカの怪我を治してしまった。
「あいっ」
「有難う、痛くなくなったよ」
イシュカがルッツの頭を撫でる。魔法を使えない孝宏とイシュカは、怪我をした場合はこうして治して貰うか、自己治癒を待つ以外ない。
「小さな傷を治すのが上手いな、ルッツ」
「へへー」
エンデュミオンに褒められて、ぐねぐねと尻尾をルッツが動かす。孝宏はご褒美に、ルッツにブルーベリーを入れたヨーグルトに蜂蜜を掛けておやつにあげた。
「スポンジ冷めたかなー」
焼いて冷ましていたスポンジケーキを横に切り、断面に苺のジャムを塗り泡立てたクリームとベリーを散らして挟む。ケーキの上面にもたっぷりとクリームを塗って、これでもかとベリーを敷き詰める。ヴィクトリア・サンドイッチ・ケーキもどきだ。
「パンは〈麦と剣〉で買った玉蜀黍とチーズのパンがあるし」
カミルとエッダへの孝宏のパンとお菓子教室はまだ続いていて、父親のカールは刺激を受けると新しいパンを作って売っている。玉蜀黍の粒と角切りチーズの練り込まれたパンは孝宏の最近のお気に入りで、大きい塊のまま買ってエンデュミオンの〈時空鞄〉に保存して貰っていた。
お昼前になり、いい具合に火が通った壺を確かめ、ミヒェルの分を取り分けてからエンデュミオンの〈時空鞄〉入れる。シチューとパン、ベリーの小鉢をお盆に乗せ、オーブンの上にいたミヒェルに声を掛ける。
「温室に行ってくるね」
「はーい、いってらっしゃい」
ミヒェルはのんびり食事をするのが好きだし、火蜥蜴は家に憑くので余りオーブンから離れない。特に今は冬で外は寒い。
孝宏達は外套を羽織り、外に出た。エンデュミオンとヨナタンは孝宏が抱っこし、ヴァルブルガを抱いたイシュカにルッツは肩車して貰っている。外に出ている妖精達はお昼に温室に待ち合わせだ。
二重扉になっている温室に入り、ハーブガーデンから奥の果樹に囲まれた広場に入る。すでにアインスとシュネーバルは戻ってきていて、テオとカチヤにベリーを取って貰っていた。ラルスも来ている。ギルベルトはいないから、後から来るのだろう。
「ヘルマン達はまだか」
「そろそろ来るんじゃないかな。エンツィアンが〈転移〉するんだから」
エンデュミオンにテオが答えた。ヘルマンはテオの友人でもある。
イシュカに芝の上に降ろして貰ったルッツは外套を脱いで、敷物の端に置いた。そしてまだ誰も居ない敷物の上をころころ転がって遊び出した。それを見たアインスとシュネーバルも真似をする。
「ヨナタンもする?」
孝宏はヨナタンを敷物の上に降ろしてやった。
「……」
もそもそと外套を脱いでから、ヨナタンも敷物の上に転がる。やってみたかったようだ。
「テーブル出すから、こっちに来るなよ」
エンデュミオンが声を掛けて、毛布の端に低いテーブルを出した。その上に〈保温〉の刺繍の入った布を敷き、シチューの壺を乗せる。
「いい匂いだな」
ラルスが壺の近くで匂いを嗅いで左右色の違う目を細めた。
「アロイスの燻製肉を使ったからな。トマトはマヌエルの畑で採れた奴だ」
隠者マヌエルの庵の周囲にある畑は、ケットシー達が好き勝手に野菜や果物を植えている。そして食べきれない程採れると、〈Langue de chat〉に分けてくれるのだ。
「マヌエル達も呼んで来る。子供達が壺にぶつからないように見ててくれ」
「いいぞ」
壺の見張りをラルスに頼み、エンデュミオンは庵への小道に入った。小道の途中から〈黒き森〉の中に入るので、空気中の魔力の濃さが変わる。平たくて大きさがまちまちな飛び石がこじんまりとした庵へと繋がっている。芝のように綺麗に狩り込まれた草は、領主館の庭師コボルトのカシュと、シュネーバルの愛玩植物マンドラゴラのレイクが手入れをしていた。
レイクはエンデュミオンの温室と隠者の庵を自由に行き来している。今日はベンチに座って靴下らしき編み物をしている修道女姿のシュトラールの隣で日向ぼっこをしていた。隠者の庵のある場所はケットシーの里の一部であり、年中春の陽気なのだ。
シュトラールがエンデュミオンに気付き、ドアを開けたままにしてある庵の中へ声を張る。
「マヌエルー、エンデュミオン来たよー」
「有難う、シュトラール」
庵から出てきたマヌエルは黒い修道服の上に、生成りのエプロンをしていた。
「……珍しいな?」
いつもはシュトラールが台所仕事をしている。
「ケットシー達が沢山マッシュルームをくれましてね。食べきれないから、オイル漬けにしていたんですよ」
マッシュルームのオイル漬けは、ニンニクや赤唐辛子、ローリエと塩で作る。半月ほどもつので、作っておくとおつまみやパスタに使える。孝宏の言うペペロンチーノが作れる。
「一瓶要りませんか?」
「貰う」
教会の下働きから司教にまで上り詰めたマヌエルは、こういった保存食作りは上手い。
貰ったオイル漬けを〈時空鞄〉に入れ、エンデュミオンは本題を思い出した。
「森番小屋のケットシーの赤ん坊が来るから呼びに来たんだ」
「それはそれは。すぐに準備します」
エプロンを外したマヌエルは、使いこまれた祈祷書を手に取った。黒い革張りで角に保護用の金具を付けてある。
「エンデュミオン、聖水はありますか?」
「欲しいだけあるぞ」
「小瓶一つでいいですよ」
軽口を叩きながら、エンデュミオンとマヌエル、シュトラールとレイクで温室に戻る。
温室にはヘルマン達の姿があった。入れ違いで来たようだ。
敷物の上に毛布に包まれた赤ん坊ケットシーが寝かされていて、妖精達が周りを囲んでいる。
「可愛いなあ。ミヌエットでシャムかバーマンみたい柄だね」
孝宏が何かの呪文のような事を言っているが、孝宏がいた国の猫の種類や柄だろう。
「ハシェ、名前は決めたのか?」
「うん。アメリにした」
アメリという名前になったケットシーの赤ん坊は、ここに来たばかりのルドヴィクよりは大きかった。栄養状態は良好なのだろう。ミルクをたっぷり飲ませて貰っていて、お腹がぽんぽこりんだ。
「まだ目を開けるには早いのかな?」
アメリの目は閉じたままだが、誰かがしゃべるとそちらの方へ反応している。
「まずはマヌエルに洗礼してもらえ」
本当なら教会に連れていくべきところだが、事情を話しているとはいえベネディクトとイージドールに積極的に関わらせない方が良い。元司教のマヌエルは当然洗礼をする資格がある。
シュトラールが魔銀製の鈴を取り出し、鳴らし始める。温室中に鈴の音が広がるのを待ち、マヌエルがエンデュミオンの渡した聖水の小瓶を持って祈祷し始める。次第に小瓶の中の聖水がキラキラと輝きだした。
「──この幼子に月の女神シルヴァーナのご加護を」
小瓶の聖水を細くアメリの額に垂らす。不思議と聖水はアメリを濡らすことなく、小さなケットシーの全身を銀色の光で包んで消えた。
「わあ……」
誰ともなく声を上げた。アメリの目が開いていたのだ。
底から発光しているような青とも碧ともつかない色合いのアメリの瞳は、宝石のように煌めいていた。
「南の海の色みたい……」
ハシェが呟く。あちこちを移動していたクレフとハシェは南にも居た事があるのだろう。
「マヌエル」
「ええ、間違いありません。この子は〈不死者〉です」
マヌエルは直接〈不死者〉に面会している。この特徴的な瞳は一度見たら忘れられないだろう。
「アメリ、かわいいー」
「かわいー」
「……」
年少組はアメリの可愛さにメロメロになっている。この状態なら、里のケットシー達も虜にするだろう。子守の心配はなさそうだ。
「あのさ、マヌエル師に洗礼して貰って良かったのかな」
おずおずとヘルマンがテオに訊いている。それを耳にしたマヌエルが微笑んだ。
「こんな可愛い子の洗礼をさせて頂いて光栄ですよ」
洗礼は月の女神シルヴァーナに「こんな子が産まれました」と知らせる儀式だといわれている。妖精で聖職者に洗礼を受けるものは少ない気がするが、〈不死者〉なら月の女神シルヴァーナに少しくらい気にかけておいて貰った方が良いだろう。
「お昼御飯にしようか。ゆっくりして行けるんでしょう?」
孝宏が壺の蓋を布巾で掴みながら言った。
「この時期は誰も来ないから」とヘルマンが笑う。冬は地下迷宮も閉鎖中だ。
クレフはイシュカとナイフの納品について話していて、エンツィアンはラルスと薬草の在庫の確認をしている。ハシェは年少組とアメリを囲んでにこにこしていた。
孝宏はカチヤとシチューをスープボウルに注ぎ、パンを切った。
「壺料理ですか、久し振りですね」
マヌエルが豆のシチューを受け取って、懐かしそうな顔になる。壺料理はどちらかというと庶民の料理だ。
「壺、うちの戸棚にあったよ、マヌエル。シュトラール見た」
シュトラールも豆のシチューを選び、千切った玉蜀黍とチーズのパンを浸して口に入れた。
「そうですか。うちでも壺料理を作りましょう」
「マヌエル、庵のオーブンに火蜥蜴はいないのか?」
「暫く無人でしたからねえ。まだ火蜥蜴は見ていないのですよ。オーブンに憑いていない知り合いの火蜥蜴は居ませんか? エンデュミオン」
使いこまれたオーブンや窯に、火蜥蜴は棲み付くのだ。
「ルー=フェイに誰か派遣して貰うか」
ほろほろに柔らかくなったもも肉を木匙で掬ってエンデュミオンは呟いた。ルー=フェイは召喚師スヴェンの契約妖精だが、実は火蜥蜴の中の最上位にいる。
「に、ぴゃうぅ」
毛布の中で赤ん坊らしい声を出しながら、アメリがもぞもぞと動いてむずがる。す、とヴァルブルガがアメリに似たケットシーの編みぐるみを取り出して、赤ん坊の横に置いた。編みぐるみの中に鈴が入っているのか、チリリと微かな音を立てた。
「にっ」
すかさずアメリが編みぐるみに抱き着く。くるくると喉を鳴らし、アメリがそのまま寝始めた。
「そうだ、子供用のベッドと布団を用意したからな。街の妖精達には知らせたから、贈り物を色々貰ってるぞ。それとな、ギルベルトには確実に〈祝福〉を貰うと思え」
「ええっ」
ヘルマン達が驚愕の表情になる。元王様ケットシーのギルベルトは、幼い妖精を庇護するのが最早習性である。止められないので、甘んじて受け入れて欲しい。
「知らせない方が怒られるんだ。あとでケットシーの里にも行くだろう? きっと交代で子守に行くって言われるぞ」
「有難いけど、いいのかな」
恐縮するヘルマンに、エンデュミオンはなで肩を竦めた。
「子守に来たケットシーの毛繕いして、食事を一緒にすればいいんじゃないか?」
それが日当代わりだ。
里のケットシー達は春が過ぎてもそのまま子守に来るだろうし、畑も手伝いに来るかもしれない。そんな予想が既に出来たが、エンデュミオンはあえて教えなかった。
マヌエルからの手紙を受け取った司教フォンゼルは、読み終わった手紙を自分に憑いている猟師コボルトのリットの〈時空鞄〉にしまって貰った。
聖都の真偽官がここ数年、〈不死者〉を捜しているのは知っている。だが監禁されているとしかいえない〈不死者〉の人生を思えば、アメリの存在を教える気にはならなかった。しかも白くはない〈不死者〉だ。存在を知られれば、穏やかな暮らしは出来ないだろう。
〈不死者〉の力を借りなくても、月の女神シルヴァーナの恩寵は揺るがない。ならば、大切に育ててくれる家族の下で、穏やかに暮らす方が幸せだ。
マヌエルは自分と交友のある妖精達の可愛さについて、かなりの行数を割いて書き記していた。羨ましい事である。非常に。
「本当に近いうちにリグハーヴスの視察に行きましょうね、リット」
「たうっ」
忙しくて延び延びになっている視察に、意欲を燃やすフォンゼルとリットだった。
赤ん坊ケットシーの名前はアメリになりました。
肢が短めで柄がシャムやバーマン系です。目はパライバトルマリン系の色です。
子供のいない里のケットシー達に交代で可愛がられそうです。
妖精は種族関係なく子供を大事にするので、色々と贈り物をくれます。
リュック・グラートは可愛い靴を作りたいのです。