野外実習の始まり
ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。
訓練場へひとっ跳び。
346野外実習の始まり
「きゅっきゅー」
ぺちぺちと小さな前肢に頬を叩かれて目を開けた孝宏の前に、翡翠色の鱗をもつ幼竜が居た。
「……起こしてくれたの? グリューネヴァルト」
「きゅっ」
孝宏に返事をし、グリューネヴァルトは隣に寝ているエンデュミオンの方に飛んで行った。そしてふさふさとした毛が生えているお腹に抱き着いて、ぐいぐいと顔を擦りつけた。
「きゅうー」
「む……朝か? おはようグリューネヴァルト」
エンデュミオンは自分の腹毛を堪能している木竜を肉球で撫でた。それから起き上がって大きな欠伸をする。
「……まだ眠い」
「いつもより早いもんね」
孝宏も起き上がって部屋に備え付けのバスルームに行く。少し熱めのシャワーを浴びて、着替えを済ます。エンデュミオンは孝宏に手拭いをお湯で濡らして絞って貰い、自分とグリューネヴァルトの顔を拭いた。
孝宏はエンデュミオンに風の精霊魔法で髪を乾かして貰ってから、エンデュミオンの着替えを手伝った。それから〈魔法鞄〉になっているポーチの中身を点検した。今日は野外実習の初日なのだ。
「大丈夫かな」
昨日消費したお菓子などはエンデュミオンの〈時空鞄〉から補充してある。そもそも孝宏はエンデュミオンと一緒に行動しているのだが、念には念を入れる性分である。
「グリューネヴァルトの鞍もエンデュミオンが持ったぞ」
「じゃあそのまま広場に出ても大丈夫だね」
「うん。朝食を食べに行くか」
「お腹空いたね」
三食きちんと食堂で食べているが、訓練で身体を動かしているからか、孝宏の腹がくうと鳴った。
部屋を出た所でプラネルトと雷竜レーニシュに会ったので、一緒に食堂に行く。
「今日から野外実習ですね。組み分けはどうするんでしょうか」
「多分他領の竜騎士に一人か二人、王都竜騎士団の竜騎士をつけるんじゃないかな。何しろ、俺は砂漠やオアシスでの野営しか知らないし」
〈暁の砂漠〉出身のプラネルトが、ローストビーフに似た薄切り肉を数枚まとめて皿に乗せながら言った。
「俺は整備された野営地か、うちから行ける森の中くらいですね」
孝宏は日本で行ったキャンプと、エンデュミオンの温室から行けるケットシーの里を思い浮かべながら、たっぷりベビーリーフを盛った深めの器の上にポーチドエッグを乗せた。これにベーコンと黒パンを一口大に切って和えようと思う。ベリーを乗せて蜂蜜を垂らしたヨーグルトとポトフとお茶で、朝食としては充分だろう。エンデュミオンも孝宏も、一般的な黒森之國の成人男性に比べると小食である。
「面白いことしてるね」
「これにベーコンとパンを切って、卵を崩して混ぜようと思って」
「野菜も摂れていいな」
プラネルトも孝宏と同じようにサラダボウルを作成し始めた。薄切りのチーズも取っているので、肉はテーブルにあるパンに挟むつもりなのだろう。
自分の分とエンデュミオンの分の料理を取り、一度テーブルに置きに行く。それから孝宏は大きいティーポットに紅茶を淹れてテーブルに戻った。
「今日の恵みに、月の女神シルヴァーナに感謝を」
「いただきます」
皆で食前の祈りを唱える。
「エンディ、一寸待ってね」
孝宏は皿の上でベーコンと黒パンを一口大に切ってエンデュミオンの器に入れた。ポーチドエッグの上に軽く塩胡椒を振る。
「はい、卵を割ってざっくり混ぜて食べてね」
「うん」
椅子の上に立ったエンデュミオンがフォークで卵を割って、ザクザクと底からサラダを混ぜる。孝宏は自分の分のサラダも仕上げ、卵の絡んだベビーリーフと黒パンを口に入れた。
「うん、美味しい」
ベーコンにも塩気と旨味があるので、それ程濃い味にしなくても美味しい。
「はい、グリューネヴァルト」
グリューネヴァルトには先に好物のベリーを盛った皿を渡していたが、味を確認したサラダも少し取り分けて置いてやる。
「きゅっきゅー」
グリューネヴァルトは嬉しそうに、黄身が絡んだ黒パンに齧り付いた。
─んんん、これ美味しいー。
レーニシュもベビーリーフとベーコンを前肢でまとめて掴んで食べていた。二匹とも前肢が黄身で汚れているが、後でエンデュミオンが〈浄化〉を掛けるだろう。
「昨日の訓練終わりに貰った紙には、北の森? で実習なんですよね?」
「そう書いてあったな。王領の森の方が近いが、あそこは木竜が居るから保護区なんだ」
そこにバロメッツでのこのこ侵入したのが自分の父親達なのだが、エンデュミオンは黙っていた。あの二人にとっては通れる場所が道なのである。今更だ。
「エンディ、俺達がリグハーヴスから飛んで来た時に下に見えたのが北の森?」
「そうだな。あそこの一角に昔から野外訓練場があるんだ。開けた場所じゃないと、火を使う訓練は出来ないから」
野営の実習では火を使う訓練も行う。回りの草木に延焼しないように気を付けなければならない。
デザート代わりにベリー入りのヨーグルトと紅茶で朝食を締め、孝宏達は広場へ移動した。
「わあ、元気だなあ」
広場に着くなり、竜舎からわらわらと幼竜サイズの竜達が飛んで来た。何だか鱗の艶が増した気がする。
「昨日散々主に食べたい物や欲しい物を主張していたからな……」
頭にグリューネヴァルトを乗せたエンデュミオンが苦笑する。
竜騎士は殆どが準貴族出身である。調理した料理や毛布程度ならすぐに用意して貰えただろう。
暫く竜達を撫でているうちに、竜騎士本部や宿舎からぞろぞろと竜騎士達が出て来た。そして地面に防水布を敷いてその上に背嚢を置いて行く。全部同じ型なので、装備品なのだろう。
孝宏の周りに居た竜達は、主の元へと飛んで行った。欲しい物を貰えたので友好度が上がったに違いない。
「全員揃ったか?」
最後に竜騎士団長でもある王弟ダーニエルが、人型の闇竜ヴェヒテリンと共に広場に下りて来た。
「今日は野外実習を行う。そのまま野営もするが、その組み分けを発表する」
ダーニエルが手に持っていた紙に目を落とし、名前を読み上げている。大体三人一組のようだ。夜の見張りの訓練も行うらしい。大抵夜の見張りは三つに区切って行われる事が多いのだ。
「ディーツェ、プラネルト、タカヒロ」
孝宏はプラネルトと一緒だった。ふん、とエンデュミオンが鼻を鳴らした。
「ディーツェというと、あいつか」
「あいつ?」
「孝宏を突き飛ばした奴だ」
「あー、でも竜が雑食って知らなかったんでしょ? 竜を大切に思っての行動だと思うし」
「でもまだ孝宏に謝ってないぞ」
「うーん」
ディーツェが昨日広場に戻って来るなり、彼の風竜の突撃にあっていたので、機会を逃しただけのような気がする。
「地図と背嚢を取りに来い。移動は組ごとに行え」
孝宏達より前に居たディーツェが背嚢が並ぶ防水布へと向かう。先に小走りで防水布の元へ行った竜騎士がディーツェへ背嚢を三つ押し付けるのが見えた。ディーツェは背嚢を腕にぶら下げ、ヴェヒテリンから地図を貰って孝宏達の方へとやって来た。青い風竜は頭の上に乗っている。
「有難うございます」
「有難う」
孝宏とプラネルトはディーツェから背嚢を一つずつ受け取った。ずしりとする背嚢には野営に必要な物が最低限入っているらしい。
「きゅう!」
風竜が鼻先でディーツェの頭を突く。それを受けてディーツェが孝宏へ向き直った。
「その……昨日は突き飛ばして悪かった。怪我はなかったか?」
「芝の上だったので大丈夫でした。俺も主本人に許可を貰ってからおやつをあげれば良かったと思いますし」
「きゅうきゅう!」
どすどすと風竜がディーツェの頭を突く。
「痛いって、キーラン!」
なんとなくキーランと呼ばれた風竜が言いたい事が解る。それだとおやつ貰えなかった! とでも言っているのだろう。
「昨日散々文句言われたんだ……」
ディーツェが少々げんなりしている。
「竜は雑食だから、ディーツェの食事の時に少し分けてやればいい」
「そうします」
エンデュミオンの忠告に、ディーツェが溜め息を吐いて頷いた。
広場では全員に背嚢と地図が行き渡り、ダーニエルが首から提げていた銀色の笛を吹いた。
「では呼ばれた順から飛行の準備を。他の者は広場の端に寄れ」
孝宏達は後の方の順番だったので、さっさと広場の端に移動した。順番が来る前にプラネルトに手伝って貰って、エンデュミオンを抱っこ紐で身体に固定する。
「これでいいかな。エンディ、苦しくない?」
「うん。ディーツェ、地図を見せてくれ」
「はい」
エンデュミオンは地図を広げ、それを全員で覗き込む。目的地までの目印が書かれた地図だったが、それほど詳細な地図では無い。白地図に近く、それに幾つか目印や目的地が書かれている。
「うん。五十年前とさほど変化はないな。ディーツェ背中を貸せ」
ディーツェの背中を台にして地図を押し付け、エンデュミオンは赤鉛筆を〈時空鞄〉から取り出して「こちらが北だ。ここが王宮でここが王領の森。この辺りに湖があるのが上から見ても解る筈だ。北の森はそこを超えてすぐだ。目的地は拓けているから見て解る」と説明しながら書き込んだ。ディーツェには記入し終わってから地図を見せる。
「王宮を背にして飛べばいいんですね」
「そうなるな」
エンデュミオンは三枚あった地図全部に赤鉛筆で書き込みをした。はぐれる事はないだろうが、何かあった時の為だ。
「次、ディーツェ組!」
呼ばれたので先にレーニシュとキーランに成龍になって上空で待機して貰う。グリューネヴァルトは他の竜よりも大きいからだ。
「よいしょ」
孝宏はグリューネヴァルトのハーネスによじ登り、鞍に跨りベルトを締める。
「準備完了。グリューネヴァルト上昇」
「きゅっ!」
大きくなってもどこか可愛い声で返事をして、グリューネヴァルトがふわりと地面から離れる。レーニシュとキーランと同じ高度まで上がり、防寒対策の手袋をした手で先に行くように合図を送る。騎士には行動する時の合図が決められており、竜騎士もそれを学ぶのだ。孝宏も事前にエンデュミオンに教わっていた。
レーニシュとキーランが並んで飛ぶ後ろにグリューネヴァルトが付く。プラネルトもディーツェも地図をきちんと読む訓練を受けているようで、正しい方向に向かって飛んでいる。
「うわー、本当にエンデュミオンの地図通りだ!」
孝宏の近くでディーツェの声が聞こえた。どうやらキーランが魔法で声を伝えてくれているらしい。
「このまま方向を変えないで飛べば、そのうち右側遠くに川が、左側近くに湖が見える筈だ」
「了解」
「了解」
エンデュミオンの指示にプラネルトとレーニシュが返事をする。多少のずれはあるが、先に飛んだ竜の姿も小さく見える。
「川と湖を確認した」
先にプラネルトからの報告がある。視力が良いようだ。
「目的地は手前の大きな第一広場だから、その隣の発着場に降りる」
「エンディ、幾つか広場があるの?」
「あるぞ。戦闘訓練したりする時は、分かれて陣営を作ったりするからな」
「成程」
「孝宏、つまり〈王と騎士〉だ」
言われてみればその通りだが、サバイバルゲームにも縁がなかった孝宏は言われて初めて納得した。
〈王と騎士〉はチェスや将棋のような陣取りゲームだが、騎士はこれも学ぶのだそうだ。
「第一広場上空。下の竜が居無くなり次第、レーニシュから発着場に降りろ」
「了解」
「了解」
先にレーニシュ、キーランの順で降り、最後にグリューネヴァルトが降りる。不測の事態が起きても、経験豊富なプラネルトなら対処出来るからだ。
ゆっくりと空き地に降りたグリューネヴァルトの背中から孝宏は降りた。背中の背嚢が重いので、バランスを崩しそうになるが無事に地面に足が付く。
「きゅー」
幼竜の姿になったグリューネヴァルトが孝宏の肩に乗り、頬ずりして来る。
「ご苦労様、グリューネヴァルト」
〈魔法鞄〉から出した橙色の干し杏子を、グリューネヴァルトの口に入れてやる。
「はい、レーニシュとキーランも」
プラネルトとディーツェにも干し杏子を渡し、レーニシュとキーランに与えて貰う。
はぐはぐと嬉しそうに干し杏子を食べるキーランにディーツェが「折々のおやつ……」となにやら呟いていた。
孝宏達の後にも来る組が居るので、そそくさと発着場から続くまばらに草の生えた道を進む。すぐに人の気配がして、先着組が大きな広場でテントを張り始めていた。
「襲撃された時にテントって周りに気付き難くない?」
「今回は人数が多いからな。それと素人も居るのに襲撃訓練はしないだろう。来たら返り討ちにしてくれるが。今回はテントを張ったり、食事を作ったりという、陣営を作る訓練だな」
抱っこ紐のエンデュミオンが、浮いている肢をぶらぶらさせながら言った。
「あの辺が空いていますよ」
「ではそこにしよう」
ディーツェが指差す場所へと移動する。テントはプラネルトが持っていた背嚢に付いていたので、皆で建てた。というか慣れているプラネルトとディーツェが主に建てた。
「テントの床にこれを敷け。地面からの冷えを防げる」
エンデュミオンが〈時空鞄〉から毛皮のマットを取り出し、プラネルトに渡す。
「これは暖かそうだな」
「持っている物を使っても構わないだろう。禁止はされていないし」
「そうだね」
臨機応変にプラネルトがさっさとテントの床に毛皮のマットを広げる。
「エンディ、食料ってどうなっているのかな」
「携帯食料か、干し野菜などの加工品が背嚢にあると思うぞ。各自で用意とは書いてなかったし」
「そっか」
孝宏はエンデュミオンを身体の前に付けたまま、背負っていた背嚢を下ろして中を確認した。
「うーん、重い訳だ」
背嚢の中には応急手当用のキットや水筒、一人用の鍋にもなる金属製の携帯食器類と布類の他には煉瓦が二つ入っていた。食料はない。
「プラネルト、ディーツェ、背嚢見せて」
孝宏は二人の背嚢も開けて中を確かめたが、やはり食料は入ってなかった。
「どれか一つなら入れ忘れもあるだろうけど、三つ共はありえない!」
ディーツェが気色ばむ。軍隊であれば確認は執拗に行うものだ。
エンデュミオンが鼻の頭に皺を寄せる。
「ふむ。背嚢を取りに行った時、ディーツェだけが自分で取らずに渡されていただろう。わざとだな」
「わざとって……」
「孝宏が竜達を手懐けたのが気にいらない者もいるという事だ」
「竜騎士なんて人数限られているんだから、直ぐに誰がやったか解るよね? 馬鹿じゃないの?」
呆れた孝宏に、プラネルトが吹き出す。
「お坊ちゃんはそれが解らないんだよ、ヒロ。困ればいい位にしか思わないんだ」
「いやーそれすっごく恥ずかしいですよ!? もー、騎士団の携帯食料どんなのか気になってたのにー。まあいいか、材料はあるし。俺お昼ご飯作りますね。煉瓦もあるなら竈が楽に作れていいや。ええと、スコップは柄をネジ留めするんだね?」
「俺やるよ」
組み立て式のスコップを孝宏が組み立て始めたのをみて、ディーツェが竈用の穴を掘るのを変わってくれた。プラネルトはレーニシュと小枝を拾いに森に入って行く。
孝宏はテントの毛皮の上にエンデュミオンを降ろした。
「ではエンデュミオンは料理が作りやすいようにするか」
エンデュミオンは〈時空鞄〉から折り畳み式のテーブルと椅子を取り出した。さらに〈精霊水〉の小樽をテーブルに乗せる。
孝宏は〈魔法鞄〉から鍋を取り出した。鍋の中に乾燥野菜と干し肉、押し豆、トマトスープの素を入れ〈精霊水〉を注ぐ。
「ヒロ、穴はこの位でいいかな?」
「わあ、有難うございます」
小枝や薪が転がらないように掘られた穴を煉瓦でコの字に囲い、プラネルトとレーニシュが持ってきた小枝と乾いた落ち葉を入れ、固形の着火剤を置く。
「ええと、〈着火〉の魔石……あった」
〈魔法鞄〉からクヌートとクーデルカが作ってくれた〈着火〉の魔法陣が刻まれた赤い魔石を取り出す。双子は孝宏が竜騎士訓練に行くと聞いて、魔力はあるが放出出来ない者でも、魔石経由なら初歩の魔法は使えるのだと作ってくれたのだ。
「〈着火〉」
魔石を着火剤に近付けて発動呪文を口にするだけで、ぽっと着火剤に火が点いた。本当に小さな炎しか出ないので、着火剤がないと点きが悪いのは御愛嬌である。それでも魔法を使えた嬉しさがじわっとある。
「きゅう」
てちてちと風竜キーランが、小さく揺らぐ火の前にしゃがむ孝宏の隣にやって来た。
「きゅう!」
ふう、と風が起こり、ぼっと火が大きくなった。ぱちぱちと音を立てて小枝が燃える。
「有難う、キーラン」
「きゅうう」
「美味しいごはん作るからね!」
「きゅう!」
孝宏は材料を入れた鍋を煉瓦の上に乗せた。あとは押し豆が水分を吸って柔らかく煮えればいい。パンは天板一杯に焼いた千切りパンが〈魔法鞄〉の中にいくつも入っているし、スコーンやビスケットだってある。エンデュミオンも孝宏も、基本的に何処かへ行く時には余分に食料を持っているのだ。
「ご飯出来るまでお茶でも淹れようかな」
孝宏はヴァルブルガ謹製の〈熱〉の魔法陣が赤い糸で刺繍された鍋敷きを取り出した。その上に片口のミルク鍋を乗せる。これで料理を作らなかったのは、訓練目的の中に火を熾して食事を作るという項目があったからである。
お湯が沸いたらティーバックを入れて蓋をする。〈魔法鞄〉から蜂蜜玉の瓶と、クッキーの袋を取り出しテーブルの上に置く。
「お茶ですよー。携帯食器出してくださいね」
「どれ一服するか」
「きゅ!」
─わーい、おやつー。
「きゅううー」
エンデュミオンと竜達は当然のように孝宏の元へ行く。
「ええー……」
「あはははは」
ディーツェが信じられないような顔で孝宏を見て、プラネルトが笑い出す。
野外実習は始まったばかりである。
野外実習の始まりです。
ちょっと嫌がらせを受けた孝宏達ですが、腐らない〈時空鞄〉や〈魔法鞄〉を持っているので、なにかと食べ物や道具類を持っています。
ちなみにエンデュミオンは料理が出来ないので、すぐ食べられる物を多く持ち歩いていたり。孝宏は素材も持ち歩いていたりします。
野営に平の竜騎士がテーブルや椅子出している時点でなんかおかしいのですが、孝宏もエンデュミオンも気が付いていません。
ヴァルブルガの魔法陣付きの布は、コボルト達と一部のケットシーが作れるもので(マリアンもつくれそう)、殆ど普及していません。刺繍の腕がいいか、正確な魔法陣が描ける人が作れます。