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王都竜騎士隊へ(下)

ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。

王弟ダーニエルとご対面。


342王都竜騎士隊へ(下)


 竜舎や竜に昇降する広場は竜騎士隊本部の裏側のようだった。正確には表側にある建物と広場を一般騎士が使用、裏側の建物と広場を竜騎士隊が使用しているのだ。

 孝宏たかひろ黒森之國くろもりのくにの成人男性に比べると一回り身体が小さい。そもそも骨格が違う。廊下をすれ違う従騎士は兎も角、騎士はほぼ孝宏より大きかった。

 黒森之國従騎士は騎士見習いで従騎士の者もいれば、騎士の世話をする職業としての従騎士もいるからだ。

 石造りのがっしりとした建物の、見事な彫刻の入った飴色の手摺のある階段を上り二階に上がる。案内してくれた従騎士が奥まった部屋のドアを叩いた。

「ヘア・タカヒロとエンデュミオン、木竜グリューネヴァルトをお連れしました」

「どうぞ」

 落ち着いた男の声で返答があった。従騎士はドアを開け、孝宏達を通した後、自分は入らずにドアを閉めた。

「王都竜騎士隊へようこそ」と言う声に孝宏とエンデュミオンは顔を向けた。相手の顔を見た時にまず「あまり陛下に似ていないかな」と思った。恐らく両親のそれぞれ違う親の方に似たのだろう。

 マクシミリアン王は美しい顔立ちをしているが、王弟ダーニエルは精悍な風貌だった。髪の色と目の色は王家の色を二人共持ち合わせているが、竜騎士隊を率いているだけあって、ダーニエルの方が身体つきが厚いし日に焼けている。

 ダーニエルの斜め後ろには、腰まである長い黒髪を無造作に首の後ろで結んだ女性騎士が立っていた。浅黒い肌をした二十歳半ばに見える女性の瞳の色は金色で、瞳孔は縦に長い。耳も少し尖っていた。

「ダーニエルとは初めてだな。久し振りだなヴェヒテリン」

「ああ久し振りだな、エンデュミオン。ケットシーになっているとは思わなかったよ。それにちゃっかりグリューネヴァルトをリグハーヴスに勧誘するなんてね」

「きゅー!」

「契約が切れていなかったんだから、呼んだら来るに決まっているだろう」

 グリューネヴァルトが不機嫌そうな声を出し、エンデュミオンとヴェヒテリンがニヤリと笑い合う。エンデュミオンは抱っこ紐の中に居るので、可愛い事になっているが。

「ええと、とう()もり孝宏です。初めましてヘア・ダーニエル」

 火花を散らしているエンデュミオンとヴェヒテリンは置いておいて、孝宏はダーニエルに挨拶した。

「初めまして、タカヒロ。基本的に竜騎士は敬称なしで構わない。指示を出す時の時間の無駄だし、誰が上官か丸解りだろう?」

「はい、ダーニエル」

「これが君の階級章だ。あとで襟と袖に縫い付けておいてくれ。針と糸がなければ宿舎で借りられるから」

「持っていますので大丈夫です」

 簡易裁縫道具はポーチの中に入れてある。受け取った階級章もポーチの中に入れた。

「宜しい」

 ダーニエルは頷いた。

「他の竜騎士達にも抜き打ちの為、詳しい訓練内容を手紙に書かなかったが、君は訓練している騎士ではないから、無理のない範囲で構わない。今回はいざという時の為の顔合わせとでも考えてくれ」

「解りました」

 ガチで現役の騎士と同じ訓練をしろと、言われたら孝宏は翌日には寝込むだろう。エンデュミオンの〈治癒〉があるとはいえ、無理なものは無理だ。

「今日は王都以外の竜騎士が集まる日になっているので訓練はない。先程の従騎士に、宿舎まで案内して貰いなさい。食事は宿舎の食堂でこの札を見せればいい」

 ダーニエルが次にくれたのは竜騎士隊の紋章が刻印されたタグだった。二枚ずつ鎖でつながっているものが二つあり、それぞれ裏面に孝宏とエンデュミオンの名前が打ち込んである。所謂ドッグタグだろう。

 孝宏は自分とエンデュミオンの首にタグを提げた。

「次の集合は明日の朝九時に、竜騎士隊の広場だ。それまでは休んでいて構わない」

「はい。では失礼します」

「寝坊するんじゃないよ、エンデュミオン」

「いつもと同じ時間に起きれば間に合うから平気だ、ヴェヒテリン」

「きゅっきゅー!」

「こら、良い子にしてて! 明日からよろしくお願いします」

 なんだか締まらないまま、孝宏は部屋から退出したのだった。


「あれは何だ? ヴェヒテリン」

「エンデュミオンとグリューネヴァルトとそのあるじだな」

「いや、そうだがな……」

 実は上空からグリューネヴァルトが降りてくるところから、ダーニエルは見ていた。

 まずはグリューネヴァルトの大きさに驚いた。雄だからなのか、闇竜ヴェヒテリンよりもグリューネヴァルトの方が大きかったのだ。

 しかし身体の大きさを誇示するでもなく、グリューネヴァルトは地上に降り孝宏とエンデュミオンを下ろすなり幼竜化してしまった。

 孝宏は孝宏で気負う所を見せずに現れた。エンデュミオンを変わったもので身体の前に括りつけたまま。エンデュミオンが脚をぷらぷらさせていたので、苦しくはないのだろうが、まるで赤ん坊を連れているようで気が抜ける。

 そんな状態でもダーニエルを驚かせたのは、孝宏の周囲に風の精霊(ウィンディ)が五人もくっついていたからだ。あれは明らかに契約している精霊ジンニーだった。だが、事前にマクシミリアンから聞いている話では、精霊も見えず魔法も使えないとの事だった。

「明日の訓練ではツヴァイクも来るから確認するか……」

 〈異界渡り〉が竜騎士訓練に参加するのは初めての事である。怪我でもさせたらエンデュミオンが荒れそうだが、竜騎士が停滞している現状で、せめて各地の成竜に訓練だけは体験させておきたかったのだ。

 右筆ゆうひつ係に調べて貰った昔の記録では、竜騎士訓練にはグリューネヴァルトが単独で参加していた。エンデュミオンはぎりぎりまで塔に幽閉されていて、必要な時だけ連れだされていたようだ。勿論グリューネヴァルトはエンデュミオンの命令のみ実行するので、頑として他人を背中に乗せなかったらしい。そのグリューネヴァルトの背中に、孝宏は平然と乗っていた。

「〈異界渡り〉が特別なのか、あの子が特別なのか」

「明日になれば解るだろ」

 ヴェヒテリンの言葉に、ダーニエルは苦笑する。

「確かにな。それより洗礼には気を付けておかないとな。私の目の届かない所でやらかす馬鹿がいそうだ」

「エンデュミオンとあの主なら切り抜けそうな気がするがなあ。あれだけ精霊が憑いているなら、死ぬ事はあるまい」

「そう願いたいな。ケットシーの呪いはしつこいらしいじゃないか、ヴェヒテリン」


 鼻が急にむずむずとして、エンデュミオンはくしゃみをした。

「へぶしっ」

「お大事に。大丈夫? エンデュミオン」

「一寸むずむずした。誰か噂でもしているのかな」

「うーん。俺達さっきから見られているもんね。別に珍しくもないだろうにね、一応平原族だしさ」

「黒い騎士服は珍しいぞ」

「あ、そうだった」

 呑気な事を話しているエンデュミオンと孝宏を案内していた従騎士が、本部隣の建物の前で足を止めた。

「こちらが竜騎士宿舎です。食堂は一階にあります」

 警備の騎士が居る宿舎の扉を開けて中に入る。玄関の近くにあるのは竜騎士の待機室のようだ。食堂の場所を教えて貰いながら少し奥まったところにある階段を上って上階に行く。一般騎士に比べて竜騎士は圧倒的に数が少ないので、開いている部屋もそれなりにあるらしい。それでも黒森之國では王都が一番竜騎士が多い。だからなのか、エンデュミオンが解放した竜の卵は殆どが四領に渡っている。

「そう言えば〈暁の砂漠〉って竜騎士いるのかな。砂竜は守護竜なんでしょ? あの屋台してた人」

「そうだな」

 屋台をしていた砂竜、と聞いて前を歩いていた従騎士が階段に躓き掛ける。

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。失礼しました」

 明らかにぎくしゃくとした動きで階段を上がって行く。

「テオに聞いた事はなかったが、一族の誰かが竜と契約しているかもしれないな。砂漠とこちらでは竜の種類が違うからな」

「卵の時も、〈暁の砂漠〉には無かったもんね」

「〈暁の砂漠〉の卵は無かったんだ」

 あの時エンデュミオンは、出来るだけそれぞれの地域に卵を戻したのである。

「今回は過去の記録を掘り起こしたと言っていたから、暫くぶりに出て来る竜もいるだろうな」

「そっかー」

「……こちらのお部屋をお使いください」

 なんだか先程よりも顔色の悪い従騎士が、三階にある部屋の一つのドアに持っていた鍵を挿し込み開けた。

「どうもありがとう」

「不足の物がありましたら、書き物机の上にありますベルを鳴らして下さい。この階にいる担当が参りますので」

「解りました」

 孝宏に部屋の鍵を渡し、従騎士は戻って行った。彼が急ぎ足でダーニエルの所に報告に戻って行ったとは知りもせず、孝宏は内側からドアに鍵を掛けた。

「ふう。もうすぐお昼御飯だけど、少し休もうか」

「そうだな」

「きゅきゅ」

 抱っこひもを緩めて孝宏はエンデュミオンをベッドの上に下ろした。ころんとベッドに転がり、エンデュミオンが伸びをする。

「んー、運んで貰うのは楽だが、身体が凝るな」

「落ちた時を考えるとくっついてないとさあ」

「そうなんだよなあ」

 数日間の事だし妥協している孝宏とエンデュミオンである。

 バスルーム付きの部屋だったので、顔と手を洗った後、洗面台でグリューネヴァルトに水浴びをさせる。さっぱりしてから、孝宏達は先程教えて貰った食堂に行ってみる事にした。

 竜騎士関係者専用の食堂なので、一般騎士用の食堂よりも混まないと、案内してくれた従騎士が言っていた通り、食堂の席の埋まり具合は四割といったところだった。

 保温の魔道具の上に乗せられた琺瑯の容器が幾つも並んでおり、ビュッフェスタイルのようだ。

 おかずが混ざらないように区切りの付いた皿が置いてある。

 一先ず孝宏とエンデュミオンは、何が置いてあるのかを見た。それから空いている席でエンデュミオンとグリューネヴァルトに待っていてもらい、孝宏が往復して二人分取ってきた。

「エンディ、高さ大丈夫?」

「うん、座面に立てばいける」

 柔らかい革のブーツを脱いで、エンデュミオンが孝宏の隣の椅子に立つ。ここには子供用の椅子がなかった。

 グリューネヴァルトはテーブルの上で、千切った黒パンとスープ、果物を食べる。他のおかずは孝宏とエンデュミオンから少しずつ貰って満足そうだ。幼竜化しているグリューネヴァルトはそれほど食べない。大気中の魔力も摂取しているので、竜はそもそも見た目より食べないのだ。どちらかと言えば嗜好品なのだろう。

 食堂の料理は少し味が濃い目だったが美味しかった。

 ティーポットにティーバッグとお湯を入れて席に戻り、お茶が抽出されるのを待つ間、孝宏は食堂の中を観察する。

 食堂に来るのは上着が青と茶色の騎士ばかりだ。文官もいるのだろうが、剣のあるなし位しか孝宏には見分けが解らない。

 孝宏も剣は下げておらず、エンデュミオンに借りたナイフをポーチのベルトに付けている。何しろ孝宏は正式には騎士ではない。エンデュミオンも騎士ではない。他に成竜を持つ者がいなかったゆえの措置である。

 ちらっとグリューネヴァルトがごつごつとした砂糖が入っている容器に目を向けるのに気付いた孝宏は、木竜が砂糖を齧る前にポーチから携帯バーを取り出した。

 木の実と干し果物を、刻んで煎った押し麦とキャラメルで和えて固めた物だ。

「はい」

 包んでいる蝋紙を剥いて、グリューネヴァルトに渡してやる。

「きゅー」

 グリューネヴァルトは尻尾を振って携帯バーを受け取り、齧り付いた。携帯バーを抱えるようにして食べているが、さっきご飯は食べた気がする。

 エンデュミオンには薄い紙でキャラメル包みをした和三盆を、幾つかテーブルの上に出してやる。

「流水にしよう」

 エンデュミオンは流水の形の水色の和三盆を口に放り込んだ。孝宏も紫色の菖蒲を口に入れる。直ぐにほろりと溶けたのを、充分蒸らせた紅茶で飲み込む。

「ぴゅぴゅ」

 とん、といきなりテーブルの上に青紫色の幼竜が降り立った。驚いたものの、竜には見慣れているので、孝宏もエンデュミオンも青紫色の竜をそのまま眺める。

「綺麗な子だね」

「これは雷竜だな」

 ─レーニシュは雷竜だよ!

 思念が届く。どうやら主以外にも思念を届けられる年齢のようだ。ちなみにグリューネヴァルトの場合はやらないだけである。

 ─ねえ、何食べてるの? 美味しい匂いがするよ。

 ふんふんと、レーニシュがグリューネヴァルトの携帯バーの匂いを嗅ぐ。

「木の実と干し果物と煎った麦をキャラメルで固めた携帯食だよ。グリューネヴァルトはおやつにしてるけど。はい」

 孝宏はもう一本ポーチから取り出して、レーニシュに渡してやった。

「食べるときは蝋紙を剥いてね。あと主にちゃんと食べていいか聞いてね」

 ─有難う(ダンケ)

 レーニシュはグリューネヴァルトの身体に鼻先を擦り付けてから、並んで皿に料理を取っていたらしい、背の高い蜜蝋色の髪の長い青年の元へと携帯バーを抱えて飛んでいった。

「あれ? 雷竜って〈暁の砂漠〉の竜?」

「そうだな。砂竜と雷竜が〈暁の砂漠〉の竜だ」

「どの竜も綺麗な色してるよね」

 黒森之國の竜は色が綺麗で、幼竜だと可愛いのだ。

「砂竜は砂色だが、鱗が少しキラキラしてるんだ」

「へえー」

 あの屋台の砂竜はキラキラ鱗なのかと、孝宏は一寸楽しくなった。

「すまない、いいかな」

「はい?」

 声を掛けてきたのは、先程見た〈暁の砂漠〉の青年だった。空いていた孝宏達の向かいに料理の乗ったお盆を置いて椅子に座る。レーニシュは携帯バーを抱えたまま、グリューネヴァルトの隣に降りる。

「レーニシュにお菓子をくれたって聞いたんだけど」

「お菓子って言うか、それ携帯食糧。木の実と干し果物と煎った麦をキャラメルで固めたものです」

「立派なお菓子になるよ、それは。うちの辺りでは作らない物だから。どうも有難う」

 青年は笑ってレーニシュの頭を指先で撫でた。

「俺は〈暁の砂漠〉のプラネルト・モルゲンロート。テオフィルの従兄弟だよ」

「そうなんですか!」

 確かにどことなくテオやイージドールと似た感じがする。

「テオフィルがお世話になってます」

「こちらこそ。改めて俺は塔ノ守孝宏です」

「エンデュミオンとグリューネヴァルトだ」

「話には聞いてたんだけど、初めて会うね。俺は普段は長のオアシスの警備隊にいるんだよ」

 プラネルトは元々騎士のような仕事をしているらしい。

 ─ねえ、プラネルトこれ開けて。

「はいはい」

 レーニシュが持つ携帯バーの蝋紙を、プラネルトが剥いてやる。

 ─今日の恵みに!

 あーん、と携帯バーの端に齧り付き、レーニシュが幸せそうに金色の瞳を細める。

 ─甘くて美味しいー。木の実カリカリで干し果物甘酸っぱいよ。

「気に入ってくれて良かった」

 グルメリポーターのように感想を思念で伝えてくれるレーニシュが、再び携帯バーに向き直る。

 プラネルトも食事を始めたので、孝宏とエンデュミオンもお茶の残りを飲んだ。

「ヘア・プラネルトも竜騎士訓練に参加するのは初めてですか?」

「そうなんだよ。昔からうちの家系には兎と馬と竜が憑いてるんだけど、今まで呼ばれなかったね。あ、俺に敬称は要らないよ」

 兎は木の妖精(エルム)ティルピッツで、馬は水の妖精(マイム)レヴィンの事だ。この二体の妖精については、長に憑くので、長以外に雷竜レーニシュが憑くのだろう。

「本当にダーニエルは古い文献を探したのだな」

「エンデュミオンが竜の卵を配って孵したからじゃないかと。竜騎士を再開させる為だったと、俺はここに着いた時にダーニエルに聞いたんだけど」

 プラネルトが、哀愁豚の肉を薄く叩いて間にチーズを挟んで衣を付けて揚げた物に、フォークを刺して言った。持ち上げた揚げ物の端をレーニシュが首を伸ばして齧りとる。

「確かにそうだがな。訓練の為にエンデュミオンと孝宏が、王都に呼ばれるとは思わなかったんだ」

「昔の訓練を経験しているグリューネヴァルトが呼ばれない訳ないんじゃあ……」

「むう」

 エンデュミオン自体は、半ば隠居しているつもりなのだ。しかしどうやら周りは大魔法使い(マイスター)が隠居するとは考えないらしい。

「俺、騎士じゃないんですけどね。ルリユールの店員なんですよ」

 ポーチから雷の素入りチョコミントクッキーの紙袋を取り出しながら、孝宏もぼやく。

「ケットシーだけ竜に乗せて訓練受けさせると、煩いのがいるんじゃないかな。一応ここってほぼ準貴族しかいないだろ?」

「あー」

 そういうプラネルトの襟には星二つと竜の襟章が付いている。

 各地の領主と〈暁の砂漠〉の族長は位階一位であり、モルゲンロートの名前を許されているプラネルトはその家族扱いで軍では位階二位になるようだ。ちなみに孝宏は位階一位の星一つと竜である。〈異界渡り〉と言うだけでこの位階なので、どうにも座りが悪い。

「俺は精霊も見えないし、魔法も使えませんから、戦闘訓練は無理だと思うんですよ」

「野外訓練はやれそう?」

「野外で宿泊訓練ならいけそうですね」

 キャンプの方が孝宏は得意だ。準貴族ばかりなら、何かしらお膳立てされた訓練から始まるだろうと踏んでいる。一般騎士と違って、サバイバル訓練は初回でやらなそうだ。

 エンデュミオンの話を聞くに、かなりの期間竜騎士はお飾りだったらしいので。

 ─わあー、パチパチするー。

 孝宏がプラネルトと話している間に、エンデュミオンが紙袋からクッキーを取り出して、グリューネヴァルトとレーニシュに与えていた。

 レーニシュがクッキーを齧って、羽をばたつかせる。

「パチパチ?」

「これ砕いた雷の素を練り込んだんです。プラネルトもどうぞ」

「面白い事をやるね」

 笑ってプラネルトもクッキーに手を伸ばす。

「俺、お茶取ってきますね」

 孝宏は大きめのポットにお茶を淹れて、それがなくなるまでプラネルト達とお喋りを楽しんだのだった。


抱っこ紐でくくったまま、王弟ダーニエルに挨拶にいくエンデュミオンと孝宏です。

ダーニエルの方が、騎士として仕事をしているので、マクシミリアン王よりも体格がよかったりします。でも魔法使いとしてはマクシミリアンの方が上だったり。

次回は訓練開始になるのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] こら、良い子にしてて! って、成竜600才に対しても発揮される孝宏のおかん力、 強い。 [一言] 新しい登場人物ザクザク登場ですね。 更に竜や竜騎士が登場するでしょうし楽しみです。 孝宏の…
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