ルッツと窓拭き屋
ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。
黒森之國には窓拭き屋さんが居ます。
196ルッツと窓拭き屋
もそりと隣で寝ていたヴァルブルガが起き上がった気配で、イシュカも目が醒めた。
暗闇の中、ヴァルブルガの緑色の瞳が光っている。
まだカーテンの向こうのリグハーヴスの街は、夜の静けさの中だ。日付が変わった頃かは解らない。イシュカは手を伸ばして、ベッド脇の小物箪笥の上に置いてある光鉱石のランプを点した。
折れ耳をそばだてているヴァルブルガに問う。
「どうした? ヴァル」
「ルッツが泣いてるの」
「ルッツが?」
テオとルッツは今日も朝から配達に出掛け、夕食前に帰って来ていたが、おかしな様子はなかった気がする。
「いや、ルッツが夕食を残したか」
いつもなら食べきる量のおかずを──それも柔らかいローストビーフを「あしたたべる」と残した。その後に果物は少し食べていた気がするが。
「様子を見に行こう」
ルッツは常日頃はご機嫌なケットシーであり、泣く時は怪我や病気、もしくはテオの気配が近くにない時位である。
イシュカはヴァルブルガを抱き上げてベッドから下り、廊下へのドアを開けた。
「イシュカ」
「ヴァルブルガも起きたか。呼びに行くところだったのだ」
バスルームから孝宏とエンデュミオンがこちらに向かってきていた。
「ルッツが泣いているとヴァルが言っているが」
「熱中症みたいなんだ。今バスタブで冷やしてるけど、ヴァルも診察してくれる?」
「熱中症!?」
リグハーヴスは熱中症になるほど暑くない。今だって、パジャマをしっかり着ていて丁度いい気温だ。
「テオとルッツ、今日はヴァイツェア行ったんだって」
「夏のヴァイツェアか……」
イシュカは思わず呻いた。
ヴァイツェアは南にあるので、夏はかなり暑いのだ。ケットシーには辛い。テオの事だからきちんと予防線は張ったのだろうが、幼いルッツの身体が対応出来なかったのだろう。
「ルッツの鼻も乾いているし、俺は林檎ジュースを薄めて持ってくるよ」
「エンデュミオンは氷枕を作ってくる」
「解った」
台所に向かう二人と逆方向へと、イシュカとヴァルブルガは向かった。
途中にある孝宏とエンデュミオンの部屋では、カチヤとヨナタンが眠っているアハトとシュネーバルの様子を見ていた。
どうやらテオとルッツの部屋から一番遠いイシュカ達が最後だったようだ。
バスルームに近付くにつれ、弱々しく泣くルッツの声が聞こえてきた。
バスルームでは水を浅く張ったバスタブの中にルッツが浸かっていた。水で濡らした手拭いを頭から首筋に垂らし、水の精霊がチョロチョロと水を上から掛けていた。
イシュカには精霊が見えない為、空中から水が出現しているように見えるのだが。
「テオ、ルッツが熱中症だって?」
「うん。起こしちゃった?」
「いや、こういう時は起こしてくれて良い。ヴァル、バスタブの中で良いの?」
「うん」
イシュカはヴァルブルガを、バスタブの水の中に下ろした。
ヴァルブルガがルッツの額を撫でる。へにょりとルッツの大きな青みのある黒い耳が伏せられてしまっている。
「テオ、ルッツってここ最近熱中症になった?」
「あー、半年くらい前かな。里帰りした時に。関係ある?」
「少しは。それにケットシーは元々北に棲んでいるから、暑さに弱いの」
そしてケットシーは毛深い。熱を体内に貯めまくりである。
ヴァルブルガはえぐえぐと静かに泣いているルッツの両前肢の肉球を、自分の肉球の上に乗せた。肉球が熱い。熱がある証拠だ。
「ルッツ、魔力冷やした奴送るの。魔力ぐるぐるするの、解る?」
「あいー」
熱中症になると魔力のバランスも崩れるのだ。魔力がうまく体内で循環しないと、余計体調も悪くなる。
ヴァルブルガの中の温度の低い魔力を右の肉球からルッツに流し、左の肉球からルッツの熱い魔力を受け取り体内で冷ます。それを繰り返すのだ。
熱い魔力を受け取れば、ヴァルブルガの体温も上がるので、水に浸かっていた方がいい。水が苦手なエンデュミオンがヴァルブルガを呼びに来ようとした理由だろう。水の中ではエンデュミオンは固まってしまって何も出来ない。
「林檎ジュース持ってきたよ。ルッツ、少しでも良いから、飲めるかな?」
孝宏とエンデュミオンがバスルームに戻ってきた。
「りんご」
どんな状況でも林檎好きは不滅だった。コップに挿したストローを口に入れて貰ったルッツがチューと白湯で薄められた林檎ジュースを飲む。ふにゃ、とルッツが笑った。
「おいしー」
吐き気はなさそうだし、口から水分が取れるのなら、大丈夫だ。
「ヴァルも飲んで」
ヴァルブルガの分も用意してくれていたので、イシュカに飲ませてもらう。林檎ジュースを倍に薄めた物だが、下手に塩分を入れた水より、ルッツが喜んで飲む物の方が良い。塩分は他のもので摂れば。
「ルッツ、胡瓜の浅漬けも少し食べられる?」
「あいー」
孝宏に差し出されるままに、薄く切られた胡瓜の浅漬けをルッツがポリポリと齧る音がバスルームに響く。孝宏が塩と刻んだ昆布で漬けた物だ。これで塩分も摂れる。
三十分程掛けて冷やした魔力を循環させ、漸くルッツの体調が落ち着いた。泣き止んだし、乾いていた鼻が少し湿ってきた。
「身体を乾かして、氷枕をして寝かせて。上掛けはシーツだけで良いかな」
体毛があるので、夏の気候で風邪は引かない。今は身体を冷やす方が大切だ。
「解った」
バスタブの水を抜いて、ヴァルブルガはルッツと、自分の身体を風の精霊に頼んで乾かした。
ルッツに水を掛けていた水の精霊には、エンデュミオンが赤いジャムが挟まったステンドグラスクッキーを渡す。
「夜中に起こしてごめん」
「子供が体調崩すのは大抵夜中だもん。ルッツ、呼吸落ち着いたね」
テオの腕の中でルッツは寝息を立て始めていた。普段ならとっくに寝ている時間だから、身体が楽になって眠くなったのだろう。
孝宏がルッツの肉球に触れ、体温が下がっているのを確かめる。
「ヴァイツェアでも砂漠蚕のフード付きマント着せてたんだけどなあ。今年のヴァイツェアはいつもより暑くて」
しかも、配達先が森林族の森ではなく、平原族の街だったらしい。
「一晩泊まって配達しても良かったんだけど、どうしてもルッツが帰りたがったんだよ」
「何故?」
「明日、窓拭き屋が来るだろ?」
「あー」
その場にいたルッツ以外の全員が納得した。
ルッツは窓拭きを見るのが好きなのだ。
「先月出掛けていて居なかったもんね」
黒森之国では窓硝子はぴかぴかに拭くのが慣例で、窓硝子の外側は専門に拭く職人もいる。イシュカも窓拭き職人に定期的に依頼しており、その職人の手捌きをルッツはいたく気に入って、毎月楽しみにしている。
「明日はうちの前にも仕事が入っているって言っていたから、ルッツはゆっくり寝かせておいても良いぞ」
「一週間位はお仕事お休みして欲しいの。再発すると悪化するから」
「解った。問題は窓拭きを見て大人しくしているかだけどね」
正確にはルッツとヨナタンとシュネーバルが、だが。はしゃぐなと言って聞いてくれるかは甚だ疑問で、全員が顔を見合わせ溜め息を吐いたのだった。
リグハーヴスには右区と左区に一軒ずつ窓拭きギルドがある。窓拭き屋は個人営業が多いので、その取りまとめだ。
窓拭きを頼む場合、依頼はギルド宛に出し、指名する窓拭き屋がなければ、手が空いている者が派遣される。
アポロニアは右区の窓拭きギルドに所属している。窓拭きに必要なのは、風と水の精霊との友好度の高さだ。宙に浮け、水が出せなくては高い場所の窓は拭けない。
老師匠に数年師事した後、アポロニアは彼の仕事と顧客を引き継いだ。
教会の孤児院出身の少女だったアポロニアは、冒険者になろうとは思わなかったので、風と水の精霊魔法が使える事で、老師匠に弟子として引き取られて良かったと思っている。
〈Langue de chat〉は新しいルリユールで、丁度ギルドで手が空いていたアポロニアが初めての窓拭き屋だった。それからずっと指名依頼してもらっている。
どうにも時々住人が増えるのだが、人だけではなく妖精まで増える。その妖精達が可愛いので、窓拭きに行くのが楽しみだったりする。
「こんにちは、窓拭きに来ました」
「こんにちは、アポロ。いつも通りに頼むよ。裏庭に行く時はまた声を掛けて。エンデュミオンに入れるようにしてもらうからね」
「はい、親方イシュカ」
イシュカはまだ若い親方だが、アポロニアにもていねいに接してくれる。
ここの敷地はケットシーのエンデュミオンの縄張りになっているらしく、裏庭に入るには彼の許可が要る。
まずは人の出入りがないのを見計らい、一階の店部分の窓を拭いてしまう。
T字のモップに水の精霊魔法で石鹸水を纏わせて窓に塗り付ける。そして直ぐに同じくT字の水切りで石鹸水を集め、ボロ布で拭き取る。慣れるとかなりの早さで窓硝子がぴかぴかになる。
(また来てる)
店の窓の内側に、青黒くてオレンジ色の錆のあるケットシーと、小麦色のコボルト、真っ白い小さなコボルトがへばりついていた。
そんなにくっついたら、窓に肉球の跡がついてしまうだろうに、左右に動くモップと水切りの動きを目と顔を動かして追っているのが可愛い。
先月は青黒い毛のケットシーのルッツは居なかった。多分、軽量配達屋のテオと出掛けていたのだろう。
アポロニアが移動すると追い掛けてくるが、窓台があるのは一部なので、テオが妖精三人を抱えてやっていた。
一階は店舗の他、路地に面しているのは、ヴァルブルガの診療所と倉庫代わりに使っている部屋なので、ルッツ達は追い掛けてこない。
二階は彼らの住居空間になっているので、アポロニアが宙に浮いたまま移動する度に、ルッツ達も部屋を移ってきた。楽しそうに身体を左右に動かしているが、何となく背後にいるテオがはらはらしている気がする。
窓拭き屋は他人の家の中を覗いてしまうが、当然守秘義務がある。孝宏の書斎を見て心を踊らせたとしても、秘密なのである。
「表側終わりました」
「エンデュミオンに裏庭開けてもらうよ」
「はい。裏に回りますね」
窓拭き道具を持って、ぐるりと路地を回って〈Langue de chat〉の裏手に回る。
「アポロニア、入ってきていいぞ」
錬鉄の柵の内側で鯖虎柄のエンデュミオンが前肢を振っていた。黄緑色の瞳がきらきらしている。
「有難う 、エンディ。今日は天気が良いね」
「窓拭きが終わったら、冷たいものを飲んで行け。温室に用意するから」
「うん」
エンデュミオンが下から見ているのを感じつつ、アポロニアは窓を拭いていく。一階の中庭側には台所やイシュカの工房がある。二階は一階と同じ位置に台所と、やはり住人の私室が並んでいる。
二階では再びルッツ達がアポロニアを追い掛けてきた。
(あれ?)
ルッツの回りに、さっきは居なかった風の精霊と氷の精霊が居た。
この二精霊だと、周りの温度を下げたりするのだと思うが、そんなに暑いだろうか。
首を傾げつつ、アポロニアはエンデュミオンの元に戻った。
「終わりました。温室の硝子は良いの?」
「これは一寸特殊でな」
とことこと歩くエンデュミオンについて、温室に入る。暑いのかと思いきや、春のような爽やかな室温だった。
入ってすぐの場所はハーブガーデンがあり、テーブルと椅子が置かれていた。季節外れのハーブが生えている気がするが、エンデュミオンの温室なので気にしたらいけないと、アポロニアでも思った。
「よいせ」
椅子の上に立ったエンデュミオンが、テーブルの上にティーセットと菓子の乗った皿を取り出した。〈時空鞄〉から出したのは解るが、近くで見るのは始めてでアポロニアは目を丸くしてしまった。
硝子のグラスにティーポットの紅茶を注ぎ、エンデュミオンが氷の精霊を喚ぶ。
カラン、とグラスの中に紅茶で出来た氷が数個浮いた。
「ミントティーだ。霊峰蜂蜜を少し溶かしてある」
「えぇ!? 霊峰!?」
「コボルトの知り合いが居るとたまに手に入る」
霊峰蜂蜜は王族や貴族などが常用する高価で滋養のある蜂蜜だ。平民だと、薬として扱われている。
「今日の恵みに。月の女神シルヴァーナに感謝を」
アポロニアは冷たい紅茶を一口飲んだ。すうっとしたミントの香りと冷たさが喉の奥に流れていく。舌にほんの少しだけ蜂蜜の甘さが残る。
「美味しい」
「クッキーも食べると良い。汗をかいただろうから、しょっぱいクッキーもあるぞ」
「しょっぱいの?」
エンデュミオンが濡らした手拭いを差し出してくれたので、手を拭う。
「チーズのクッキーだ」
これ、と前肢で示してくれたオレンジ色の強いクッキーを取る。きちんと形が調ったクッキーは、意外と柔らかくてホロリと口の中で崩れた。チーズ風味がして、しょっぱいクッキーも違和感がない。
「これも美味しい」
「沢山食べろ」
エンデュミオンにしてみれば、アポロニアはまだ子供なのかもしれない。徒弟には成人前にもなれるし、アポロニアはカチヤと変わらない歳だ。最初に〈Langue de chat〉の仕事をした時は、まだ師匠に付いていた。
「さっきルッツの回りに風と氷の精霊が居たね」
「ルッツは昨日熱中症になってな。まだ熱があるから、本当なら安静にしていないとならないんだが、アポロニアが来るのを楽しみにしていたんだ。案の定夢中になっていたから、ヴァルブルガが精霊を喚んだのだ。ルッツは今頃テオとヴァルブルガにベッドに入れられているだろうな」
どうりでテオがはらはらしていた訳だ。
「ルッツ、大丈夫なの?」
「氷枕をして数日寝ていれば元気になる」
「良かった」
お茶を飲んだ後、アポロニアは温室の奥の、何だか外から見た時より少し広く見える広場も見せて貰った。
何故か木立で囲まれていたり、泉が湧いていたりしたが、深く追及しないでおく。エンデュミオンが作ったのだから、不思議な温室なのだろう。
エンデュミオンは残ったお菓子をお土産に包んでくれた。
「暑いからな、アポロニアも気を付けろ。具合が悪くなったら、すぐにグレーテルかヴァルブルガを呼んで貰うんだぞ。ドロテーアとブリギッテでも良い。あそこにはラルスが居るからな」
「うん、有難う」
エンデュミオンとは裏庭で別れ、アポロニアは表の店に回って、イシュカに終了証明書にサインを貰った。
「また来月も頼むよ。いつも小さい子達が邪魔しているかもしれないけど」
「いえ、全然! 可愛いです!」
和みこそすれ、邪魔にはならないので、アポロニアは慌てて否定する。そして、今はベッドの中であろうルッツに言付けを頼む。
「あの、ルッツにお大事にって伝えてください」
「有難う、伝えておくよ。今度はテオとルッツが休みの日に頼むよ」
「え?」
「窓拭きの日と仕事がぶつかって、ルッツが無理したらしくて。ケットシーは暑さに弱いんだ」
「あー、毛深いから」
「毛深いからね」
アポロニアの言葉に、真面目にイシュカが答えた。
「それからこれはヴァルブルガから、手に塗るクリームだよ」
イシュカが小瓶に入った淡い黄色のクリームを、アポロニアに渡してくれる。
「良いんですか?」
「うん。孝宏と作った奴だから、自宅用なんだ」
つまり代金は要らない、と言っているのだ。
窓拭きは手が荒れる職業だ。きちんとしたクリームは薬扱いになってしまうため、中々手を出せない。
薬扱いではないのに良く効くクリームを、孝宏とヴァルブルガが作り、冬に知人に配ると噂で聞いた事があったが、今は夏だし、アポロニアは自分が貰えるとは思ってもみなかった。
「とても嬉しいです」
「来月はルッツも元気になっているから、一緒にお茶を飲めるよ」
「はいっ。ご依頼お待ちしてますっ」
勢い良く頭を下げ、アポロニアは〈Langue de chat〉を出た。
イシュカはアポロニアを一人の職人として扱ってくれる。成人したばかりの女職人だからと値切ったりもしない。最初の仕事の時、暫く振りに拭くからと、ただでさえ値段が高めだったのに「とても綺麗な仕事だった」とギルドに言って上乗せして払ってくれた。
ギルドでも〈Langue de chat〉の窓拭きをしていると言うと一目置かれる。
ケットシーに認められている職人と言う事らしく、その伝手で〈薬草と飴玉〉の仕事も回して貰えた。あそこのケットシーはエンデュミオンと兄弟のような関係だからと。
「ケットシーは主に害あるものを寄せ付けないんだ」と窓拭き屋ギルド長が言っていた。二度目に呼ぶ事をケットシーが許したのだから認められたのだと。
実はアポロニアが師匠である先代から引き継いだお得意様には、偶然にもリグハーヴスの主持ち妖精の住処が全て含まれていた。
アポロニアの師匠も妖精に認められた職人だったのだ。
石畳をスキップすると、道具箱がガチャガチャ鳴った。
顔馴染みの住人に挨拶しながら、窓拭き屋ギルドへと向かう。
窓拭き屋ギルドは小さなギルドで、普段は受付に受付嬢として老女が座っているだけだ。現ギルド長の母親だが、昔は現役の窓拭き屋だったそうだ。
窓拭きの終了証明書を渡す時に、お土産に貰ったクッキーを分けよう。きっと喜んで貰える。
どうしてか、他の窓拭き屋達は受付嬢の老女を怖がっているのだが、彼女はアポロニアには最初から優しい。
アポロニアに〈Langue de chat〉の仕事を斡旋したのも彼女だった。あれから毎月──真冬は除いて──アポロニアはあの店の窓を拭いている。内側からケットシーとコボルトに見られながら。
「あの肉球の跡がついた窓硝子、誰が拭くのかな」
あのままでも可愛いけれど、きっと後で誰かがそっと拭いているのだろう。
ルッツ達の小さな肉球の跡がついた窓硝子を思い出し、アポロニアはふふっと笑った。
肉球の跡が付いた窓ガラスは、後で孝宏がそっと拭いています。




