ノリで設立 『気侭な厄災』
白と黒のマーブル状の斬撃が夜の闇を切り裂く。
「あれは……」
玄野が呆然と呟く。
「え、知ってんの?
あんな属性は見た事も聞いた事も無いけど」
「"混沌"。邪神って呼ばれてる奴らの使う属性で、世界を破壊できるらしい。……前世で俺を殺した奴もこれの使い手だった………」
玄野が苦々しげにそう言う。
邪神、か。第一次世界大戦の引き金らしい奴も邪神だったよな。そいつもこれ使ったのかね?
気になるけど本体はもう見えないな。タイミングが悪かったぽい。
よし、気を取り直して、次行ってみよう!
「今度は何やる気だ………」
「膿掃除、かな?」
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アルーバル王国の王太子、バスカル・フォン・アルーバルは焦っていた。何しろ予定外のことが多すぎる。隕石の幻覚に異世界人最強の失踪、あらゆる物を取り込む黒い霧、それを切り裂いた白黒の巨大な斬撃。被害も馬鹿にできない上に兵士たちの動揺は最早これ以上ない位に酷く、部下はしきりに目で"撤退"を訴えてくる。
(貴様らは失う物がないからそんな事が思えるんだ!
婚約破棄しておいて負けでもしたら廃嫡確定なんだぞッッ!!!)
「リオルグ!魔人兵をファステバル陣営に向かわせろ!」
「……はい」
バスカル王太子は部下の非難の目など気にせず、ファステバル侵略の為の切り札を切った。
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赤、青、黄、紫……多種多様な色の属性を纏った人型の存在がファステバル陣営に近づいていく。
それを横目で見るローブを身にまとった銀色の骸骨と黒の全身鎧。
「顔バレがヤバいのは分かるが……何だその、リッチみたいなの」
全身鎧が骸骨に聞く。
「根性は無いけど皮肉あり!ノーライフキング亜種、シルバー・スカルデス3世だ。銀さんと呼べ」
「お、おう。いかにも14歳位の時に作ったっぽい設定だな」
全身鎧は玄野、骸骨の正体は【実幻】で「ノーライフキング亜種」に変身したミストだった。
「それじゃ、行くぞ!」
「了解!」
ズドンッ
王太子のいる本陣の中に降り立つ二人。
「な、何だ貴様らッ!?」
王太子が驚きの声をあげ、その護衛が身構える。
「何事ですか!」
続いて黒髪黒目の少年少女も乱入してくる。
「勇者か?」
「真ん中の男だけな」
「お前達、何者だ!」
真ん中の少年、玄野曰く勇者が怒鳴るように聞いてくる。
「俺たちは『気侭な厄災』、そこの王太子を殺しに来た」
「何だとッ!?」
「『気侭な厄災』………!?」
王太子と勇者がオーバーな反応をする。
『気侭な厄災って何だ?初めて聞いたわ』
『俺も初めて言ったわ。というかその場のノリで言っちゃった』




