闇蝕の終わり
遅れてすいません。
とりあえず三日に一話で頑張ります。
「ほぉ、〈重王の手甲〉ねぇ……」
そう言ってミストは真っ黒な手甲を指でクルクル回す。
その手甲からはほんのり……否、途轍もなく汗の匂い、そして僅かに血の匂いが染み付いていた。
何を隠そう。
この手甲はミストが予め例の丘に監視役として残しておいたスペーススライムによって持ち帰られた物だ。
ミストは既にスペーススライムの報告で「エイトゥルーの負傷」そして「真の暴走」を知っていた。
本来、真はエイトゥルーを負傷させたら回収する予定だった。
しかし、真は指示で「闇蝕」を発動する前に二重の【反転】を使用。それによる暴走で【電脳支配】の支配から逃れ、困ったことにアルーバル軍にその矛先を向けているらしい。
さすがにアルーバルに住んでいる以上は壊滅的な被害を受けてファステバルに滅ぼされるのは困る。
「というわけで、蒔いた種を刈り取るぞ……クロロホルム!」
「誰だよ。
というか蒔いた覚え無いんだけど…」
「覚えていなくてもやったんだから仕方あるまい。
ほら、これやるから行くぞ、クロノスタシス」
「だから誰だよ」
ヒョイッと手甲を投げ渡し、促すミスト。
渡された瞬間、途轍もない汗臭さが玄野の鼻の中で暴れ回る。
「くっさオエエェエエエエッッ?!!
……これアトラスのかッ!?まさか貰う魔具ってこれで確定なのかッッ?!」
「そうだ。使ってるところを見たから使いやすいだろう?」
「それ関係なくないッ!?」
よぉおく見ると悪意にまみれた笑顔でミストは玄野に笑いかける。
それに気づいた玄野は思わず泣き言を口にする。
「ほんの一時間前に戻りたい……」
玄野の言葉はミストの悪意にまみれた笑みを深くするだけだった。
-------------------------
そして俺と玄野は例の丘に到着した。
「我々の目的を確認しよう」
「我々とか…一緒にすんな」
玄野が口答えしてくる。
やれやれ、立場というものを分かっていないようだ。
「あ、それ以下だったね。無駄に上等に扱って悪かったな。これからはもっと低劣に扱うから溜飲を下げてくれないか?」
「うわ、ウッゼェ。
……はいはい、私が悪うございましたー」
「やれやれ、心がこもってないなぁ。
まったく、最近の高校生は謝罪もロクにできんのかね?」
「……話進まねえから止めてくれない?」
「おいおいwww自分から話遮ったくせにそんな事言っちゃうのwww頭沸いちゃってるのwww結局何がしたかったのお前www」
ピキッ
玄野が額に青筋を浮かべて〈重王の手甲〉を握りしめる。
まぁ、こんなものでいいか。
満足した俺は話を戻してあげる事にした。
「俺の目的はあのk…」
ズッガァァアアアアアアンッッ
黒い霧とミストが続けようとした瞬間、それは落ちて…否、落とされた。
今までに見た事のない、黒と白の混ざり合ったマーブル状の斬撃。
その斬撃が全てを夜の闇に変える「闇蝕」を切り裂く。
「あれは……」
玄野が呆然と呟く。
自らの死因とも言えるそれを見て。




