西の憑き神 2
空から降ってきたのは、手甲を付けているヒゲを生やした筋骨隆々の大男と眼を閉じている中性的な美少年(?)と微妙に痩せている狂科学者っぽい男の三人だった。
彼らの出現により俺と玄野スの戦いは完全に中断される。
「俺はメシア聖国第三位枢機司教 エイトゥルー・アス」
「同じくメシア聖国第六位枢機司祭 シャーカス」
「……第十二位…エンジ・フェルミール………」
大男が見た目通りの声で言い、美少年、痩せ男と続く。
痩せ男の喋り方も見た目通りすぎて笑えるな。
……にしてもメシア聖国か。
「俺たちはお前達と同じく憑き神だ。
ここへ来たのはお前達を我が国の…いや、メシア聖国第一位教皇 エスティノ・メシア様の配下の枢機卿として迎える為だ」
!?
メシア聖国って憑き神がトップかよ!
というか上層部全員憑き神なんじゃないの?
信心が有るかも不明なのに枢機卿とか……宗教軽視されすぎだろ!
「俺は断る」
玄野が間髪入れずに言った。
大男…エイトゥルーが機嫌良さそうに玄野を見る。
「ほぉ、その神装…クロノスか。
なるほど、お前なら人の下に付くなんて文字通り"死んでも御免"だろうな。
……そっちのガキはどうする?」
そう言って俺を見るエイトゥルー。
(いや、まず俺憑き神じゃないし)
「俺も断る。
そいつが断って俺が受けたら俺がそいつに負けたみたいだし。
……そもそも俺も人の下に付くなんて死んでも御免だからな」
「ガッハッハ、そうかそうか」
「ハァ。
エイトゥルー殿、もっとマジメに説得して欲しいのですが……」
ますます機嫌が良くなるエイトゥルー。
それを見て頭を抱えるシャーカスとやら。
ボアッ
場の空気が一変し、殺気的な物に満たされる。
やったのは先ほどまで笑っていたエイトゥルー。
「では拳で説得せねばな!
シャーカス、エンジ!そっちのガキは任せるぞ!
怪力之神、完全顕現!」
ボシュゥゥウウ
『ガァァアアアッ』
エイトゥルーから半透明の白のオーラが吹き出し、背後で虎の形となって吠える。
「……笑い声でそうじゃないかと思ったが、アトラスか。まさかお前が神の禁忌を犯すとはな」
「フンッ、俺もお前が神の禁忌を犯すとは思わなかったよ!重飛拳!」
グオンッ
エイトゥルーが玄野に黒い拳型の打撃を飛ばす。
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シャーカスが遠い目をしながら呟く。
「次からは絶対にエイトゥルー殿と同じ任務になりたくないな……」
「……なら…ここで死ねばいい………」
エンジがそう言った直後、
ヒュンッ
「名案だな。死ねよ!」
ミストがシャーカスの背後に転移して斬りかかる。
が、
パシーンッ
シャーカスの背後に光る巨大な手が出現し、ミストの剣を掴む。
「エンジ殿!」
エンジがシャーカスの声に頷き、
「……千手観音……完全顕現……」
パァァッ
エンジから光が吹き出し、背後から千本の光の腕が現れる。
コォッ
「…千手玉……」
全ての腕がエンジの前方に向けられ、そこに作り出された光弾がミストに放たれる。




