地球の憑き神
「君がさっきのをやったのかな?」
チャキッ
ミストの首に刃が食い込む。
一方、ミストは自分の首に剣を突きつけられている状況で、「半神」に進化しても終わらないレベルアップ報告に辟易していた。
……《け《け《け《け《k《経験値が一定に達しました。ミストガンはレベル18からレベル19になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
長っ!
やっと終わった。
さっきからこれの所為でシリアスな空気が台無しだったんだけど……!
さて、この状況。
実はこいつの実力次第ではかなりヤバい。
……とりあえず余裕ぶって話そう。
「さっきの?さっき何かありましたっけ?」
「……自分がやったのを否定するならまだしも、その惚け方は……!?」
青年は下にあった死屍累々の死屍の山を通り越して黒焦げの大地だった場所がいつの間にか焦げ跡すら無くなっているのを見て驚愕に目を見開く。
その隙を突いて青年の背後に転移したミストは底意地悪そうに口元を歪める。
「真っ先に疑われるのはあそこにいない君だろうねー。
怪奇現象が起きた直後に姿が見えないなんて君がやったとしか思えないし。
ねぇ、玄野君」
「……鑑定か」
背後に転移した事で青年を視界に入れたミストは、どう見ても日本人の黒髪黒眼なのが気になって青年を【鑑定】していた。
下の戦場では両軍共に退却しており、アルーバル陣営が玄野駿が消えている事に気づくのにそう時間はかからないだろう。
彼の強力な【偽装】を看破したミストはさらに続ける。
「ーーいや……"憑き神"のクロノス、なのかな?」
「ッッ!?何故それを……ッ!」
そう、玄野の偽装なしのステータスには70億を超える魔力とアンドロメダと同等以上の熟練度のスキル、原神能力【時之神】、種族に仙人(神魂)、そして隠し称号に[憑き神]があったのだ。
【偽装】を看破してしまえば前世の名前までバレバレである。
「地球にも転生できるんだな。
まぁ、たしかに召喚したての異世界人が近衛騎士団長を圧倒なんてそれくらいしかあり得ないよな。
アクシズから逃げれたのは時間停止とか未来予知とかかな?」
ミストがそう言った直後、
「ーー俺の周囲の時間を加速させたんだよ。簡単に言えば"早送り"だ」
玄野がミストの背後に現われてそう言った。
なんかもう諦めて口封じする気満々なようだ。
そのスピードは光速より上。
玄野はそのまま剣でミストに斬りかか…らずに一歩退がる。
シャラララッ
その直後に玄野がいた場所を【擬似 天鎖】の鎖が通過する。
「ついでにこれが【時の魔眼】だ。数秒先の光景を見れるから未来予知と言えなくもないな」
玄野の左目が金色になっていた。
ミストの頬を汗が伝う。
「この、厨二チートが」
キング・クリムゾンに予見眼かよ。
きっとあっちの世界で「ジョジョの◯妙な冒険」や「ブラックキャ◯ト」を読んでいたたまれない気分になったんだろうな、へっ!
後ろだ合戦を制したのは、
残念、主人公じゃなかった。




