vs切り札バレ済み神 3
ギシギシッ
物が軋む音がミストの鼓膜を震わす。
「くっ、身体を、動かせない……!!」
石の上に座っているミストの視線の先には、上半身を大木に呑み込まれ、下半身は木の蔓で雁字搦めにされたアンドロメダが足掻いている姿。
シュゥゥウ……
ミストが石の上に座っていた理由である腹部の傷の再生が終わる。
傷のあった場所を見てからミストはおもむろに立ち上がってアンドロメダのいる場所まで歩いていく。
アンドロメダが自分の方に歩いてくるミストを睨みつける。
「私をどうするつもりですか」
威嚇しながら尋ねる彼女にミストは余裕を崩さずに対応する。
「そうだなぁ。やるとしたら洗脳か経験値用魔m…じゃなくて神、簡単に言えば幻覚で殺し続けるのどっちかだな」
「……神に洗脳など効くと思ってるのですか?」
「ああ、状態異常云々ってヤツ?一回では無理かもしれないけどせっかく拘束してあるんだから精々じわじわやらせてもらうよ。楽しみだなぁ、その日が」
確かに一度の状態異常であれば難なく防げるが、無限に状態異常を受け続けるのであれば心が折れてしまってその状態異常を受け入れてしまう事もあり得る。
アンドロメダは目の前の少年が自分が屈することを確信していると悟った。
「……仕方がありません。
これだけは使いたくなかったのですが………」
その不穏な言葉にミストの頭の中にある考えが浮かぶ。
(このセリフは……!
大海之怪鯨を使う気だ!)
「させるか!」
ヒュッ
咄嗟に左手の破壊の魔剣で斬りかかるが、
「遅いです。
天鎖の星姫、大海之怪鯨、完全顕現!」
ゴォオオオッ
突如、アンドロメダの周囲から大量の水が溢れ出し、ミストを押しのけ、アンドロメダを捕らえていた大木や蔓が弾け飛ぶ。
シュゴォオオオ
ジャラララララララッッ
大量の水はアンドロメダを中心に尾やヒレに鎖を巻きつかせた巨大な鯨になる。
巨大な鯨が魔の森の中にいる様は、まるで鯨が森の中を泳いでいる風に見える。
それを見てミストはため息を吐く。
「ハァ、しまったな。破壊の魔剣でスキルを一通り破壊しておけばよかった」
「……完全制御」
シュルルルル
突然、鯨が小さくなり始める。
やがて、両脇に水のヒレ、後ろに水の尾のある、全身に鎖を巻きつけたアンドロメダが姿を現わす。
ミストはその小さな体が放つ、とてつもない威圧感に思わず息を飲む。
ミストが転移する前に戦っていた場所をチラッと見ると、
(うわっ、復讐成り上がり主人公いなくなってる。囮にしようと思ったのに……)
ミストと本気の神の戦いが始まった。




