バレとった件
チュンチュン
ガ〜ゴ〜
ガ〜ゴ〜
雀っぽい生物、パロウスの鳴き声で目がさめる。
横の部屋からは早起きしなくなった兄上のいびきが聞こえる。
最近兄上は自分の見た目が優れていない事を知り、好きな女の子に好かれることを諦め、5歳児のくせに「断ったら親が◯◯になるぞ!」と脅してその子にキスやボディータッチを迫っているらしい。
『こんなのが次期領主とか領民が可哀想すぎる』 とか思わないでもないが、俺が人の下につく事に耐えられるわけが無い!と断言できる。
なので当主になった場合、独立してアルーバル王国に隣国を巻き込んでの独立戦争を仕掛けて負けそうになる度に遠国を巻き込み、王城を「鉄騎兵団」全機で襲撃して王族を皆殺しにしてから"アレ"を使ってアルーバル王国のお偉いさんを傀儡にして業務を滞らせまくり、最後はその操ってるヤツを俺自ら討ち取り、弱体化した国々を吸収して大国の王になる予定である。
ただ、まだ世界最強クラスの奴らが相手では絶対負けるので、この計画を実行に移すのは、長ければ二十数年後の事だろう。
まぁ、領民を同情はしても彼らの為に何かするとか想像すらできないからこんな事考えるだけ無駄なんだけども。
俺はダイニングに向かう。
すると、そこにはたまたま、本当にたまたま、1万分の1くらいの確率で父上がいらっしゃった。
父上は近づいてくる俺を睨みつけ、
「お前、一体何をやっているんだ?」
意味不明な事をおっしゃった。
「は?」
「お前が領民と全く交流を持っていないのは知っている。お前は普段何をやっているのだ?」
なるほど。
バレたか。
普通バレるまで二年もかからないが、この父上だからなぁ〜。
よく見ると微妙に不安?怖れ?を孕んだ目になっていた。
たぶん何をやってるのかわからないのが不気味で怖いんだろうな。
まぁ、適当に子供っぽく答えとこう。
「あ、わかってしまいましたか。母上には内緒ですよ。実はですね、僕は魔の森に行って魔物を倒しているのです!」
「魔物?………そうか、それで遊んでいないのに服がボロボロな時があったのか。…………なるほど」
フッ、倒してる魔物がS級とは思うまい。
そして一度も魔の森に行くのを目撃されてない事を怪しめないとはとんだポンコツオークだ。
………上手く誤魔化せたよな?。
「?……話はそれだけですか?」
「そうだ。ミリアには内緒にしといてやる。……それにしても魔物か。その歳で魔物を倒せるとは私も鼻が高いぞ。将来、我が伯爵領を守る騎士団の団長になれるよう努力するといい」
「はい!」
するかバーカ。
どうやら都合よく解釈したようだ。
よーし、これからは魔の森に行くのを目撃されても大丈夫だな。
この父上に遭遇したのに気分が良いのは初めてだな!
その後、俺はいつものようにパンを水で押し込んで魔の森に向かった。




