表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行く羽目になった死んだフリの天才  作者: ブルータス
成長編
37/68

冒険者ギルド 4

注)主人公視点じゃありません。

ミストと傷のある男は冒険者ギルドの前で対峙していた。


「へっ、今更謝っても骨の一本や二本じゃ許してやらねえからな。……オイ!そこの逃げようとしてる嬢ちゃんもだッ!」


傷のある男がコッソリ逃げようとしていたララを睨みつけながら腰の剣を引き抜く。

絶望するララに周りの声が届く。


「あーあ、逃げるくらいならあんな事言わなければよかったのに」


「バカだな。いくら悔しかったからってあれは言い過ぎだ」


「終わったら医務室に連れってやらないか?」

「……生きてたらな」


「俺にも同じくらいの妹がいるんだ!見てられないぜ!」

「バカ!お前がそれで殺されたらタリアちゃんはどうなる!」

「!?

………クソッ!」


(えぇっ!最後の人頑張ってよッ!というか殺されても仕方ないとか一体僕は何を言った事にされてんのッ!?)


絶望を深めるララを置いて話は進む。


「なんだ。謝ったら許してくれるなら誠心誠意『分不相応なプライドを刺激してすいませんね……ブフッ』って謝ろうと思ってのになぁ。悲しいよ、和解のチャンスすら与えてくれないなんて。でも大丈夫。俺…ゲフンッ、僕は優しいから君たちが身ぐるみを全部差し出したら無条件で許してあげるよ」


「今日冒険者に成り立てのガキが舐めた口聞いてんじゃねえッッ!!!」


傷のある男がそう吠えながら剣で斬りかかる。

が、


ピタッ


ミストが手を不自然に握って男の剣の前に出すと、男の剣が急に空中で停止する。


「なっ!?なんだ?」


「ハハハ、見た目通りバカみたいですね。僕みたいな冒険者成り立てのガキがあなたみたいなベテラン(笑)相手に強気なんだから"普通は"優秀な魔具(魔道具、魔導具などの魔力を使う道具)でも持ってるに決まってるでしょう。ちなみにこれは認識阻害(にんしきそがい)の能力を持った魔剣『裸王(ラオウ)』です」


ミストは敢えて相手が勘違いするように自慢げにそう説明する。


(裸王!裸王って絶対「裸の王様」のヤツだよね!あれ?元ネタ通りならそう思い込ますだけで本当は…えっ!?そういう事なの!?スゴッ!スゴすぎるでしょう、ご主人様!)


ララは異世界の知識から勘違いしなかったが、周りで見ている者達はその説明から"ミストは優秀な魔具を持っている"と思った。

だが、彼らは同時に別のことも思っていた。


「へっ、認識なんかできなくなろうが所詮ただの剣だろうが!その程度で優秀なんて言ってんじゃねえ!」


ダンッ


傷のある男、ウォルス(鑑定結果)が全身に魔力を流して【身体強化】を発動し、先ほどよりも速い速度で斬りかかる。

その時ミストは言った。


「ですよねー」


ドスッ

ドスッ


「な、に……!?」


次の瞬間、どこからかナイフが二本現れてウォルスの肩と足に深く突き刺さる。


「いやー、紛らわしい言い方してすいません。もちろん、剣以外の認識を阻害する事も出来ますよ、優秀なので」


やったのはミスト。


ーーいつ投げたのか。

ーーもしかしたらこれも魔具の能力なのか。


ミストの思惑通りウォルス以外の観客も魔剣の能力に驚き、さらに謎を深める。

しかし、ある事に気付いた全員が"自分なら勝てる"と思っていた。

そんな中、再びウォルスが口を開く。


「ぐっ、ハァハァ、今のナイフは、お前が投げたのか?」


「えっ?違いますけど」


ミストが返答した直後、ウォルスはニヤリと笑った。


ダンッッ


次の瞬間、ウォルスは足に【身体強化】を集中させてミストに飛びかかった。

そう。"自分なら勝てる"と思っていた者たちは全員、ミスト本人は弱いと確信していた。

故に、反応できない速度で飛びついてしまえば、ミストは自分ごと攻撃する事が出来ず、降参するしかない。

ウォルスもその考えに行き着いたからミストに飛びかかったのだ。


ミスト本人が反応できれば破綻する考えだが。


「破道の九十…ゴニョゴニョ、黒棺(くろひつぎ)


シュコンッ


ミストが途中で口を濁しながらそう言った直後、地面から黒い何かが飛び出し、ウォルスの周囲を覆った。


「なんだ!?何をしたッ!?」


バリバリバリッッ


黒い何かはウォルスの問いを無視して、中で放電するような音を発する。


「グァァアアアアアッッ!!!グッ、ァァアアアアッ、ァァァアアアアアアアアアッッッ!!!!」


ウォルスはまるで棺のようなそれの中で絶叫を上げ続ける。

観客達はミストの強さが魔具だけではない事を直に見せられ、自分の実力が無い風に誤認させた手際に感心と同時に恐怖しながら、ケンカを売るような真似はしないようにしよう、と決心した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ