冒険者ギルド 2
「いらっしゃいませ。ご用件は何ですか?」
ミストが受け付けの前まで来ると、そこにいた金髪ショートカットの耳の長い受付嬢(エルフ?)が声をかけてきた。
その受付嬢は二つある受け付けの顔面偏差値の高い方だった。
(声かけてきたのがこっちでよかったー。もしあっちだったら初日から愛想無さすぎて印象が悪くなるところだった。………まぁ、別に印象とかどうでもいいんだが)
「あ、冒険者登録をしに来ました」
とりあえず敬語で用件を伝える。
すると酒を飲んでいた冒険者から唐突に声が飛んでくる。
「ぎゃはははは!ガキのくせに冒険者になるつもりか。お前じゃあスライムに勝てるかもわからんぞ!お家帰ってママのおっぱいでも…「バキッ」ギャフッ」
ミストを貶していたヒゲ面の酒飲み冒険者が、何の前触れもなく横の大男に殴り飛ばされる。
「何やってんだ、マッシュ!」
「い、いや、体が勝手に。あっ、また!」
ヒゲ面の酒飲み冒険者を殴った大男、マッシュが近くにいる酒飲み冒険者たちに襲いかかる。
ズドンッ
「ガフゥゥッ」
「マッシュ!テメェ何やってんのかわかってんのかッ!」
「や、やめてくれ!体が勝手に動くんだ!」
「お前ら、マッシュを止めろ!」
他の冒険者たちもマッシュとやらを止めに行く。
その光景に、不覚にも俺はジーンときて鼻をすすってしまった。
(ツッコミ不要)
「ズスゥゥ、とてもいい人達ですね。きっとあれは僕の緊張をほぐすためにしてくれてるんですよね」
「えっ!あ、ええ、そうなんですよ。い、いい人達でしょう。緊張はほぐれましたか?」
「はい!」
「それでは、登録料の銀貨一枚を払って名前と出身地を教えてください」
「はい。出身地はガザフ村で、名前はカンザキ・大佐です……じゃなくて、であります!カンザキが苗字で大佐が名前、であります!気軽に大佐殿と呼んでください!」
銀貨を二枚渡してから前々から考えていた設定を話すと、ララの顔が盛大に引きつっているのが見えた。
次にミストはララの肩に手を置き、
「こちらはララ・少尉です。名前の順番は普通で、出身地はこの街です」
「えっ!?」
「千手モード」の時に使っていた"眷属と主の念話パス"的な物で「何で意味のない嘘をつくんですかッ!?」とか聞こえたが、笑って無視しながら【全幻覚】でララのこぼした声をかき消した。
「タイサ・カンザキくんとララ・ショウイさんね。私はエリザよ。言っとくけど偽名を使ったら詰め所につき出すからね。ギルドカード作るよ、指を出して」
『ええっ!?どうするんですか』
『問題ない』
『いや、ご主人様は対策してあっても私はどうすればいいんですかッ!?』
ミストは普通に、ララは抵抗したが羽交い締めにされて、指紋認証の機械みたいな魔道具に指を入れた。
ボワッ
ガチャッ
魔道具が光って、上に差し込んであった金属板が外れる音がした。
エリザはギルドカードの名前の欄だけを見て、
「うん、両方とも偽名ではないみたいだね。それにしても、『大佐』と『少尉』って漢字なのね。ご両親は天皇国出身なの?」
「そんな感じです」
『えっ!なんで!?どうやっ…すいません』
ララを視線で黙らしてギルドカードを見る。
(あーあ、【究極偽装】でステータス変えた意味なかったな)
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*大佐・カンザキ*
ランク F
種族 人間
レベル10
魔力 702/702
スキル
剣術(熟練度 137)
雷魔法(熟練度 102)
魔力循環(熟練度 82)
【魔力回復】
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称号あり加護なしで偽装したのに称号が無い。
どうやら称号は表示されないらしい。
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*ララ・少尉*
ランク F
種族 狐獣人
レベル8
魔力 1030/1030
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何故、マッシュがいきなり言い訳しながら暴れ始めたのかに興味を持ってもらえると嬉しいです。




