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デスげーむのモテあそびかた  作者: ヒキコモリタイナー
デスげーむでのモテ方
9/9

NPCごっこデス

 ある日、君には未来がわかる不思議な力が備わったとしよう。

ソレを君は一体どう使う?



ある者は預言者として人々の注目を集め、人の上に立つ悦楽に心を躍らせるだろう。


またある者は密かに未来を言い当て、己が良くする範囲内で最大限の幸福を実現するだろう。



でも、私はソレを知って尚、何もしないことを選択した。

だからこれから過ごす101週目の世界も、きっと私の記憶の通りにしか動かない世界になるだろう。









 NPCの朝は私からすれば、いつも決まったも同然なものだった。

ブラックキャロルチャペル正面からメインストリートにかけてまっすぐ進み、突き当りを

西方向へ3件隣へ進んだところにのエルダさんのお宅がある。


彼らの今日の予定は朝7時12分に家族全員で朝食を取り

7時36分に父がギルドへ向けて出勤し

8時02分に自分の受け持ちの窓口に向かい、それまでの当番と交代する。


8時03分には早くも本日最初のご依頼人とのやり取りを行うし

9時48分、彼は隙間時間をつかってトイレに向かって出すものを出すのだろう。


彼にとっては運よく降ってわいた行幸をこれ幸いにトイレに向かったのかもしれないが

私の手に掛かれば、別に何時だって彼をトイレに行かせずに破たんするまで追い詰められれたのだ。

だが、私はソレを良しとはしなかった。




 今日も変わらない世界が続いている。

例えば自分の思うような世界の動きしかしないようになったとして、君はそれで満足できるだろうか?

最初は誰だって満足だろう?

挫折もない、我慢もない、不便を感じることもない。

ソレを回避する術は、最初から君自身が知っているんだから。


だけど、そのうちいつかきっと飽きてしまうだろう。

それも当然だろう?

人は変化の無い人生に耐えられるようにできていない。


シーケンス制御のファクトリーオートメーションみたく、いつだって決まった通りに動くことに不満を感じないならば、きっとこの世界に人生を楽に生きる為の道具は誕生しなかっただろう。


自らが行ったことに対する結果すら認知できない、自分がいることに対する変化を感じることが出来なくなったとき、

自分の存在価値を見出せない世界にやがて絶望し、

そして自ら変化を求めてまた停滞を望み・・・。


そうやって物事はつり合いを保っている。




じゃあ例えばだ、

それすらも破たんしてしまったら、人は一体どうなるんだ?



例えばそう。

君はあえて失敗を重ねても直ぐにまたやり直せる状況で再出発ができたとしよう。

可愛いあの子とトゥルーエンドしても犯り直してまた攻略可能

愛しいこの子とバッドエンドしても殺り治してまた攻略可能

そんな状況で君が犯したと思っている過ちは果たして間違えだと言い切れるのか・・・



― おめでとう!

君は神にでも成れるが目的は得られない人生を手に入れることができたのだ。

なんでも出来る

いつでもデキる

だからヤる意味がないッ

その状況で一体何が君にとっての均衡足り得るのか?





 ここは私にとっては死ねないデス、このゲーム

それでも彼らにとっては命がけデス、このゲーム


彼らは毎日が死への恐怖へと向き合わねばならない、未知の世界でも

私にとっては全てが既知の退屈な世界。


人を助ける意味は存在しないのだ。

どうせ次の周回ですっきりさっぱり蘇る

見殺しにした怨嗟も、助けてもらった感謝と引き換えに。


やがて私は思うのだ。

「自分が介在しなければ、世界はとても愚図で愚鈍で、単純で面白みがなく

取るに足らない矮小な場所だったんだな」と。

同時に感じるのだ

「ああ、自分がいない世界はこんなにも単純で分かりやすく明快に、平然と回ってくれるんだな。

寧ろお前の居場所など最初からなかったんだな」と。


だからそんな相反する二つの感情が胸に座っている間は、どうしようもなく安心感を、満足感を感じずにはいられないのだ。


私が今感じられる幸せなんてものは大体そんなものである。

だけどどうしてもこの窮屈感にも閉塞感にも虚脱感にも寂寞にも遣る瀬無さにも消失間にも似た言いようがない不安に君が達することが有ったときどうしたらいいか?

君は知っているだろうか?

もし君が知らないなら参考までに覚えておくといい。

機械の様に決まった動きしか知らない世界で暮らすには、結局のところ自分が合わせてあげて

機械の様に暮らしてあげればたいていうまく行くのだ。


 そんなわけで、記念すべき101週目の私のあり方について決定する。

ズバリ、こんな時はあれがいいと思う。

ロールプレイングゲームのNPCにありがちなセリフ第一位


― チャチャン


「ようこそ、ここはブラックキャロrgッ?!…」


し、した噛んだ。orz



では、気を取り直してもう一度


「ようこそ、ここはブラックキャロルの街です」


さて、しばらくは名もなき街の住人として変わらない世界で、変わらないセリフを吐いて生活するとしよう。

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