Hiiragi , Final Game 6
◆◆◆
「負けてしまいました」
控え室に帰ってくるなりクレアさんが言う。
帰ってくると言っても、まだドアを開けただけで中には入ってきていない。
勿論、その後ろにはレベッカさんも桜もいる。
「仕方ないですよ。相手の連携が凄かったですから」
逆に言えばウチの連携は酷かった。
桜が鎧の人の懐に入り込み体勢を崩したのは良かったが、その後誰も鎧の人に追撃せず、レベッカさんは二刀流の人を、クレアさんが魔法使いを狙いにいった。
一人ずつ確実に仕留めていけば良いものを、バラバラに攻撃して簡単に対処されていた。
その後は鎧の人が体勢を立て直し、結局元通り。
あっという間に負かされてしまった。
ウチの人は本当に自由すぎる。
「取り敢えず中に入って休んだらどうです?」
クレアさん達を中に入れ休ませる。
『さぁ、第四試合を終えて一対二、一分で“黒龍の息吹”がリードです。“戦乙女の茶会”はもう後がないぞ。次の試合で負けてしまえば敗北決定だ!』
『そうですね。此処が運命の分かれ道ですね』
『では、第五試合“戦乙女の茶会”フレイア・スカーレット選手、ツバキ・ヒイラギ選手!“黒龍の息吹”アラン・スミス選手、ルーツィア・ロータス選手!』
「む?私の出番か。ミレーナ、後は頼んだ」
「任されたわ」
「もう終わりにしてー!」
名前を呼ばれ準備を始めるフレイアさんとお仕置きを任されたミレーナさん。
まだ続いてたんですね。
「って、椿を起こさなきゃ!」
俺は慌てて椿に駆け寄り、未だに爆睡してる椿の肩を揺すりながら起こす。
「おいっ、起きろ椿!試合だぞ!」
「……ん~、兄しゃんおはようごじぇいます」
「はいはい、試合だぞ」
「しあい~?夜の仕合ですか~?」
「何言ってんだ、アホ。早く準備しろ」
「じゅん、び」
「ん?……ちょ、ちょっ、何脱ぎ始めてんだよ!」
「だって準備しろって……」
あーもうっ!早く起こしておくべきだった。
椿の寝起きの悪さを知ってるのは俺達だけじゃないか。
桜もいなかったから実質俺だけだったな。
本当に椿の寝起きの悪さは質が悪い。
「ほら、ちゃんと服を着て!刀持って!近くまで連れてってやるから」
「ん~」
「大丈夫なのかツバキは?」
「ただ寝惚けてるだけです。後少しすれば完全に目が覚めると思います」
少しと言っても十五分くらい掛かるかもしれないけどね。
「おいおい、それは目が覚めるまで私一人で闘えってことか?しかもツバキを守りながら……」
「……無理ですか?」
「いや、面白い。私はこれでも騎士だからな。人を守りながら闘うものさ」
おぉ、フレイアさんめっちゃ格好いい!
その後俺はステージ前まで椿を連れていき、なんとかステージに上げることには成功した。
しかし、完全に補助されているのを相手選手も見ていたので、椿が真っ先に狙われる可能性が高くなった。
後は頼みます、フレイアさん!
「それでは第五試合、開始!」
◆◇◇
「ん~……はっ」
此処は……ステージ上?
何でこんな所にいるのかしら?
「目が覚めたか、ツバキ」
「え?あ、はい」
私がキョロキョロと状況確認をしているのに気付いたのか、ボロボロになったフレイアさんが声を掛けてきた。
「目が覚めたなら手伝ってくれ。Sランク二人相手は流石にキツい」
「え?」
フレイアさんの正面には試合相手らしき二人の男女が立っていた。
向こうも多少のダメージは負っているようだが、フレイアさん程じゃない。
フレイアさんはこの二人を相手に私を守りながら闘っていたの?
「フレイアさん、すみませんでした」
「謝罪は後だ」
「そうですね。後は私がやります」
「無茶だ!」
「大丈夫です。フレイアさんは休んでて下さい」
「……イケるのか?」
私は頷く。
「分かった。危なくなったら加勢するからな」
「はい!」
私は返事と共に駆け出す。
相手の魔力は二人共少ない。
剣を持った男が土属性で槍を持った女が水属性。
この人達は純粋な魔法無しでの戦闘で此処まで登り詰めたのだろう。
なら、私も魔法無しでいく!
「おぅおぅ、漸く嬢ちゃんも参戦か?」
「参戦?そうね、どちらかと言うと選手交替かしら!」
私は左手に持つ刀を抜きながら男に斬りつけようとする。
それを狙ったように左にいた女が槍を突き出してくるが、予想通りよ。
余程相方を信じているのか男は突っ立ったままだ。
私は左手に持つ鞘で槍の軌道をずらし、一回転して狙いを女に変更する……いや、最初から狙いは女だったと言った方が正しいかしら。
男を狙っていたと思われていた刀は男の前を通過し、そのまま一回転して女の脇腹を斬る。
脇腹を斬られた女は少し呻きながら後退し脇腹を押さえる。
そんな絶好の隙を逃すはずもなく、女に向かって突きを放つ。
「させるかぁ!」
男が私の突きを叩き落とそうと剣を振り下ろしてくる。
勿論、予想通り。
女を狙っていた突きをそのまま男の方へ薙ぐ。
男は突然のことに反応できずに胴を斬り裂かれる。
「うぐっ」
「ほら、また引っ掛かった」
斬ったのは薄皮一枚といったところかしら。
男はそのまま後退してお腹を押さえる。
今度は追撃する前に横から槍が突き出される。
それを紙一重でかわし、突き出された槍の柄を鞘を腰に差した左手で掴んで引き寄せる。
「“柊流攻式雨ノ型 雨突”」
「させねぇって言ってんだろうが!」
私の致命傷にならない位置を狙った高速の突きを、男が横から剣で突いて反らす。
脇腹を貫く予定だった突きは脇腹をかする程度で終わった。
「ひゅう、やるわね」
刀の刀身の幅は狭いのに当てられたんだ。しかもあのスピードで……。
凄いと言っていいでしょう。
「じゃあこれはどうかしら?“柊流攻式雨ノ型 五月雨”」
剣の乱舞。
刀を使い舞のような周囲への攻撃。
無駄な動きが多いように見えるが、常に周りの状況を確認しながら最適な位置に斬りかかっている。
男も女もなんとか捌いているが、だんだん傷が増えてきている。
「これで終わりにしましょ!」
私は男に向かって勢いよく右手を振り下ろす。
しかし、その攻撃は男によって防がれてしまう。
「待ってたぜ、お前が大きく振るのを……今だ!ルーツィア」
「駄目!罠よ、アラン!」
「そう、罠よ。“柊流攻式雨ノ型 逆雨”」
私は左手で逆手に握った刀を下から上に斬り上げる。
私の右手には鞘を持っていて、この男はただの鞘を受けていたのだ。
「アラン!?」
「他人の心配してる場合じゃないでしょ?“柊流攻式雨ノ型 斬雨”」
私は心配そうに叫ぶ女を逆手に握ったまま、身体を捻って横一文字の形で斬り割く。
男と女はほぼ同時に倒れ、動かなくなる。
これが本当にSランクなの?
手応えが無さすぎるわ。
「まったく、リア充がこんなところに来てんじゃないわよ!」
「試合終了!勝者“戦乙女の茶会”!」
ワァァァァ!!
『“戦乙女の茶会”の勝利です!ということは、いよいよ次が最終決戦です!』
『しかし“黒龍の息吹”は彼ですよ。王国一の実力者。“戦乙女の茶会”の最後の人は強いとはいえ新人の彼が勝てる相手とは思えません』
「よくやったなツバキ」
「いえ、フレイアさんが削ってくれてたお陰ですよ」
「そうだといいがな……」
次が最終決戦。
兄さんが負けるはずありません。
新連載の“人生色々、日常崩壊した女子寮管理人”を掲載しました。
タイトルからは分かりにくいと思いますが、一応ファンタジーものです。
お暇があれば是非読んでみて下さい。
http://ncode.syosetu.com/n2674co/




