Hiiragi , Final Game 5
◆◆◆
「ただいま」
マスターが控え室を飛び出してから暫くすると、マスターがルナを連れて帰ってきた。
ルナはマスターの肩に掴まってちゃんと歩いている。
一人で歩くのは無理っぽいがちゃんと自分の足で歩くことが出来るようだ。
意識も戻ってハッキリしているようだし、心配は無さそうだな。
「皆ゴメン。勝てなかった……」
「何言ってんだよ。Sランクの奴に引き分けたんだ。大金星じゃねぇか」
「……ありがと」
「……やったな」
「うん……キリのお陰」
俺はルナの目標の姉であるマスターに近付く事が出来て良かったな……という意味で“やったな”と言った。
ルナもそれを感じ取ってくれたのか、瞳を潤ませる。
だが、勘違いをしたものが此処に一人。
隣にいたマスターは何を勘違いしたのか、いきなり俺の顔面を片手で掴んで、アイアンクローをしてくる。
「ちょ、痛い!マスター、何すんの!?」
「何ウチの妹と見つめ合っての!何ウチの妹とイチャイチャしようとしてのさ!」
「してない!してない!俺とルナはそんなんじゃないって」
「あぁん、ルナじゃ物足りないって言うつもりか?」
「言わない!ルナは俺には勿体無いくらいの美人な女性だよ!」
「まぁ、それなら許してあげる」
何この人!?こんな姉バカだったっけ?
というか、力強すぎ……。
漸く離された顔面を擦りながらルナの方を見ると、何故か顔を真っ赤にしたルナがいた。
「ルナ、大丈夫か?顔赤いぞ」
「だ、だ、大丈夫よ!つ、疲れただけだから!私寝るね」
そう言うとツカツカとソファーに向かい寝っ転がってしまう。
俺はそれを首をかしげなから見送ることしか出来なかった。
すると、いきなり後ろからケツキックされて倒される。
「ちょっ、何するんです……か……」
「………………」
蹴りを入れた張本人を確認すると、絶対零度の視線で此方を無言で見下ろすマスターがいた。
「あの、沈黙は恐いんですけど……」
「……………………」
「ちょっと、誰か助けて!」
助けを呼ぶが、起きているのは相変わらずミレーナさんとフレイアさんだけ。
その頼みの綱の二人も助けてくれそうな様子はない。
ミレーナさんは口元を押さえて思いっきり笑ってるし、フレイアさんも腕を組んで目を瞑って見て見ぬふりをしている。
口元が笑ってるけどね。
「マスター、落ち着いて!俺が何をしたっていうのさ!」
「…………有罪」
「いやぁぁぁぁ!!」
何で俺は試合前にこんなに疲れなきゃいけないんだ?
マスターにお仕置きされた俺は床に倒れていた。
お仕置きの内容は秘密だよ。
「もうっ……ルナもお姉ちゃんより先に進むなんて許さないんだからっ」
腕を組ながら頬を膨らませながらプンプンと怒るマスター。
でも、それって……。
「お姉様……まさか二十四になってまだ……しょ」
「わぁー!違うの、いい男がいなかっただけ!それに、それを言ったら此処の人達皆そうだよ!」
ソファーに寝ていたはずのルナが発した言葉を遮っているが、ほぼ自爆してないか?
というか、それよりとんでもない爆弾を落としていったぞ。
此処というのはウチの妹達を抜かしてかな。
まぁ、多分ウチの妹達を含めても変わらないと思うが……。
「セレーネ?ちょっと、いいかしら?」
「おぃ、セレーネ。覚悟はいいな?」
「ひぃ」
『それでは第四試合の三対三を始めます!“戦乙女の茶会”レベッカ・ドール選手、クレア・クリアノート選手、サクラ・ヒイラギ選手!“黒龍の息吹”エドガー・クラウゼン選手、ルシアン・ガードナー選手、ジャン・オックス選手!』
「桜とドSコンビか」
俺は部屋の隅でお仕置きが実行されているのを無視して、呼ばれた三人を起こす。
三人は割りと寝起きが良く、すんなり起きて準備を始める。
この三人メンバー、何も起こらなければいいけど……。
純粋なドS二人に無自覚ドSの小悪魔桜ちゃんだからなぁ。
「お兄ちゃん、行ってきます」
「行ってきますね~」
「行ってきます」
「頑張って下さい」
準備ができた三人を俺一人で見送る。
マスターのお仕置きはまだ継続中。
なんかウチは相変わらず緊張感が無いなぁ。
◇◇◆
ふあぁ、眠いです。
昨日の魔力消費が回復してないのか、身体がまだ怠いです。
魔力が当たり前の生活にもう慣れてしまったのでしょうか?
「サクラさん、大丈夫ですか?」
「はい……と言いたいところですが、今日はあまり役に立てないかもです」
「あら、大変」
「でも、何時も通りに動けないかもしれませんが前衛は任せて下さい」
「……それは気にしない方がいいかもしれませんね」
「ん?」
それは一体どういうことですかね。
「私達のギルドは皆さん、仲が良い割りに連携とか出来ませんからね」
「そうだね~」
「それは……」
確かにウチのギルドの皆さんは自由というか個性が強いと言うか……悪く言ってしまえば自分勝手そうですからね。
ウチの兄妹を含めて……。
でも、それってチーム戦としてはダメなんじゃ……。
「今日もまた個人でやりますか?」
「そうだね~」
「相手が連携で来たら?」
「うーん、行き当たりばったりですかね」
それで大丈夫なんでしょうか。
ステージに上がると既に相手の選手が待っていました。
相手の選手はガチガチの鎧を着込み、大きな盾を装備している男性と、軽装で剣を二本持った二刀流の男性。
最後にローブを着て何処からどう見ても魔法使い風のおじいさん。
明らかにウチのチームよりバランスも連携も良さそうなチームですね。
「これは……勝てるんでしょうか?」
「それでは、第四試合開始!」
試合開始の合図と共に鎧の人が前に出てくる。
これは想定内です。
桜は素早く鎧の人をすり抜ける。
鎧の人は重たい鎧の所為でついてこれないみたいです。
先におじいさんを倒そうと思ったが、二刀流の人が割り込んでくる。
桜も二本の小太刀で応戦するが、打ち合っている内に魔法使いのおじいさんに狙い撃ちされてしまいます。
レベッカさんとクレアさんも鎧の人の防御力に阻まれて思うように攻められないみたいですね。
やはり連携が上手ですね。
桜も思うように攻められません。
「……どうしますか、レベッカさん?」
「鎧の人、硬すぎ~」
質問とは違う答えが帰ってきました。
つまりはどうしようもないということでしょうか。
「クレアさんはどうですか?」
「私もダメてすね。手も足も出ません」
「じゃあ私達も連携を取りますか?」
「連携って……どうするのですか?」
「そうですねぇ…………桜が鎧の人の体勢を崩すので何とかして下さい」
「桜さん……それって連携ですか?」
桜も良い案が浮かばなかったんです!
「取り敢えずやりますよ!」




